2015年 10月 24日
Mahler: Sym#9@Ivan Fischer/Budapest Festival O. |
夏ちょっと前のチャンネル・クラシックスからのリリースで、イヴァン・フィッシャー率いるブダペスト祝祭管のマラ9。

http://tower.jp/item/3869791/
Mahler: Symphony No.9 in D major
1. Andante comodo
2. Im Tempo eines gemachlichen Landlers
3. Rondo - Burleske
4. Adagio
Ivan Fischer 、 Budapest Festival Orchestra
マーラー: 交響曲第9番ニ長調
イヴァン・フィッシャー(指揮)
ブダペスト祝祭管弦楽団
イヴァン・フィッシャーはブダペスト出身でハンガリー国籍を持つ指揮者で、割と日本でも有名だと思う。調べてみたがCDを聴くのは初めて。余り先入観を持ってもいけないので虚心坦懐に聴いてみた。なお、マラ9の楽曲の成り立ちや構造の特徴などに関してはブーレーズのマラ9/CSOにあるのでそちらを参照頂くとして、ここでは詳細は述べない。
まず、1楽章は静謐で穏健な構想。冒頭は分析的で精緻な演奏で始まる。ゆったりとした弦の歌わせ方と、あまり巧くはないラッパ隊を駆使しての濃やかな前半、中盤からはドラマティックで重厚な弦の塗り重ねを強調しているのが特徴か。これはこれで牧歌的で悪くはないが、テンポが遅めのせいかエナジー感は概して低い。盛り上がりに欠けるかというとそんなに低調ではないものの、やはり慎重さが勝っているようだ。
二楽章は冒頭のファゴットはじめ木管のブリリアンスが光るが、ブラスはやっぱり巧くはない。しかし、構想としては1楽章を承継していてパストラルの雰囲気が良く出ていて、悪く言うと田舎風だがこれはこれでありの展開。MTTのような深い彫り込みの技法を弄しているわけではない代わり素朴なアンサンブルが展開される。もうちょっと緩急を付けてヴィヴィッドな感じを出せればよいか、と思ってしまう。
三楽章のブルレスケは元々がチャレンジングな曲で、気紛れに速く、また遅くとテンポが激しく変動しながら進む曲で、ここは指揮者の統率力と抑制力が試される場面。フィッシャーのバトンは悪くはないがちょっと淡白で急ぎ気味であり、オケがちゃんと付いて来れていない感じ。特にブラスの小節の入りのインパクトがちょっとだけ拍遅れとなったりと、指揮台と雛壇のコミュニケーションがうまくとれていないきらいがある。後半のリフレイン+再現部の木管の響きの豊かさは非常に良い出来で弦との闊達なやり取りが良い。この楽章最後尾のトウッティはちょっと粗めではあるが、小節頭があっていて良い出来と思う。
四楽章は他のどんな交響曲とも似ていないアダージオで、冒頭楽章に回帰するようなごく静謐な入り。情感豊かに歌われる太い弦による第一主題の切ないパートが最初の聴かせどころ。この楽団は金管隊は行けていないが弦は巧い。主題提示の中間部で鳴るTp(トランペット)はゆったりとじょうずに音を響かせており、ここの技巧に関しては例外的に憂慮はない。フィッシャーのリードはこの楽章に至って更にスローなテンポを要求しており、空間に放たれる切ない旋律と純朴な和声部との幽玄な溶け合いを際立たせる意図だ。そして、作家自身の精神的昇華、即ち死に向かう境地が淡々と紡がれる。
全体としてみるとマラ9の新機軸とは言えない内容。だが、あくまでもシンプルであり、エキセントリックなギミックに偏ることのないニュートラルな出来栄えと言えよう。最初から最後まで情感を露出したようなテンペラメンタルな演奏ではないので、例えばショルティCSOやバーンスタインNYPなどの過去の金字塔的名演に比べれば淡白さは否めない。だが、こういった静かで理知的なマラ9も多様化の現代にあってはありだろう。
(録音評)
Channel Classics CCSSA36115、SACDハイブリッド。音質も録り方も最高峰に分類して良い素晴らしい出来栄えだ。チャンネル・クラシックスの特徴であるちょっと細身で通る高域、どこまでも澄明で三次元展開する音場空間は健在で、この楽団の端正で美しい弦、微細な木管隊の妙味を十二分に捉えている。これぞSACD、まさに、DSD録音の威力をまざまざと見せつけられたという一枚だった。
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http://tower.jp/item/3869791/
Mahler: Symphony No.9 in D major
1. Andante comodo
2. Im Tempo eines gemachlichen Landlers
3. Rondo - Burleske
4. Adagio
Ivan Fischer 、 Budapest Festival Orchestra
マーラー: 交響曲第9番ニ長調
イヴァン・フィッシャー(指揮)
ブダペスト祝祭管弦楽団
イヴァン・フィッシャーはブダペスト出身でハンガリー国籍を持つ指揮者で、割と日本でも有名だと思う。調べてみたがCDを聴くのは初めて。余り先入観を持ってもいけないので虚心坦懐に聴いてみた。なお、マラ9の楽曲の成り立ちや構造の特徴などに関してはブーレーズのマラ9/CSOにあるのでそちらを参照頂くとして、ここでは詳細は述べない。
まず、1楽章は静謐で穏健な構想。冒頭は分析的で精緻な演奏で始まる。ゆったりとした弦の歌わせ方と、あまり巧くはないラッパ隊を駆使しての濃やかな前半、中盤からはドラマティックで重厚な弦の塗り重ねを強調しているのが特徴か。これはこれで牧歌的で悪くはないが、テンポが遅めのせいかエナジー感は概して低い。盛り上がりに欠けるかというとそんなに低調ではないものの、やはり慎重さが勝っているようだ。
二楽章は冒頭のファゴットはじめ木管のブリリアンスが光るが、ブラスはやっぱり巧くはない。しかし、構想としては1楽章を承継していてパストラルの雰囲気が良く出ていて、悪く言うと田舎風だがこれはこれでありの展開。MTTのような深い彫り込みの技法を弄しているわけではない代わり素朴なアンサンブルが展開される。もうちょっと緩急を付けてヴィヴィッドな感じを出せればよいか、と思ってしまう。
三楽章のブルレスケは元々がチャレンジングな曲で、気紛れに速く、また遅くとテンポが激しく変動しながら進む曲で、ここは指揮者の統率力と抑制力が試される場面。フィッシャーのバトンは悪くはないがちょっと淡白で急ぎ気味であり、オケがちゃんと付いて来れていない感じ。特にブラスの小節の入りのインパクトがちょっとだけ拍遅れとなったりと、指揮台と雛壇のコミュニケーションがうまくとれていないきらいがある。後半のリフレイン+再現部の木管の響きの豊かさは非常に良い出来で弦との闊達なやり取りが良い。この楽章最後尾のトウッティはちょっと粗めではあるが、小節頭があっていて良い出来と思う。
四楽章は他のどんな交響曲とも似ていないアダージオで、冒頭楽章に回帰するようなごく静謐な入り。情感豊かに歌われる太い弦による第一主題の切ないパートが最初の聴かせどころ。この楽団は金管隊は行けていないが弦は巧い。主題提示の中間部で鳴るTp(トランペット)はゆったりとじょうずに音を響かせており、ここの技巧に関しては例外的に憂慮はない。フィッシャーのリードはこの楽章に至って更にスローなテンポを要求しており、空間に放たれる切ない旋律と純朴な和声部との幽玄な溶け合いを際立たせる意図だ。そして、作家自身の精神的昇華、即ち死に向かう境地が淡々と紡がれる。
全体としてみるとマラ9の新機軸とは言えない内容。だが、あくまでもシンプルであり、エキセントリックなギミックに偏ることのないニュートラルな出来栄えと言えよう。最初から最後まで情感を露出したようなテンペラメンタルな演奏ではないので、例えばショルティCSOやバーンスタインNYPなどの過去の金字塔的名演に比べれば淡白さは否めない。だが、こういった静かで理知的なマラ9も多様化の現代にあってはありだろう。
(録音評)
Channel Classics CCSSA36115、SACDハイブリッド。音質も録り方も最高峰に分類して良い素晴らしい出来栄えだ。チャンネル・クラシックスの特徴であるちょっと細身で通る高域、どこまでも澄明で三次元展開する音場空間は健在で、この楽団の端正で美しい弦、微細な木管隊の妙味を十二分に捉えている。これぞSACD、まさに、DSD録音の威力をまざまざと見せつけられたという一枚だった。

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by primex64
| 2015-10-24 11:47
| Symphony
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