Philip Glass: The Hours,Metamorphosis,Mad Rush@Valentina Lisitsa |
http://tower.jp/item/3814924/
Valentina Lisitsa plays Philip Glass
Glass, P:
CD1:
Opening from 'Glassworks'
Truman Sleeps(short version), from 'The Truman Show'
The Poet Acts from The Hours, arr. Michael Riesman
Morning Passages from The Hours, arr. Michael Riesman
How Now
Something She Has To Do from The Hours, arr. Michael Riesman
I'm Going to Make a Cake from The Hours, arr. Michael Riesman
Lighting of the Torch from the Olympian
Mad Rush
CD2:
Dead Things from The Hours, arr. Michael Riesman
Tearing Herself Away from The Hours, arr. Michael Riesman
Wichita Vortex Sutra
Escape! from The Hours, arr. Michael Riesman
Choosing Life from The Hours, arr. Michael Riesman
The Hours from The Hours, arr. Michael Riesman
Metamorphosis I-V
Closing from Mishima, arr. Michael Riesman
Valentina Lisitsa (Pf)
ヴァレンティナ・リシッツァ プレイズ・フィリップ・グラス
[CD1]
1)グラスワークス:オープニング
2)トゥルーマン・ショー - トゥルーマン・スリープス(ショート・ヴァージョン)
3)めぐりあう時間たち - ポエット・アクツ(M.リーズマンによるピアノ編)
4)めぐりあう時間たち - モーニング・パッセージ(M.リーズマンによるピアノ編)
5)ハウ・ナウ
6)めぐりあう時間たち - 彼女がしなければならない何か(M.リーズマンによるピアノ編)
7)めぐりあう時間たち - ケーキを作りましょう(M.リーズマンによるピアノ編)
8)ザ・オリンピアン:ライティング・オブ・ザ・トーチ
9)マッド・ラッシュ
[CD2]
1)めぐりあう時間たち - デッド・シングス(M.リーズマンによるピアノ編)
2)めぐりあう時間たち - ティアリング・ハーセルフ・アウェイ(M.リーズマンによるピアノ編)
3)ウィチカ・スートラ・ヴォルテックス
4)めぐりあう時間たち - 逃避(M.リーズマンによるピアノ編)
5)めぐりあう時間たち - 人生の選択(M.リーズマンによるピアノ編)
6)めぐりあう時間たち - めぐりあう時間たち(M.リーズマンによるピアノ編)
7)メタモルフォーシス1
8)メタモルフォーシス2
9)メタモルフォーシス3
10)メタモルフォーシス4
11)メタモルフォーシス5
12)ミシマ:クロージング
ヴァレンティナ・リシッツァ(ピアノ)
フィリップ・グラス=Philip Glass は、アメリカの作曲家でミニマル音楽の大家とされ、現在はイギリスのマイケル・ナイマンとともにこの分野では第一人者とされる。彼自身、ミニマルの人と言われるのを嫌っているそうだが、世間的には不動の地位を築いた人物と目されているようだ。私自身この分野は明るくなくて、リシッツァのこの2枚組アルバムは覚悟してチャレンジした。
不協和音、もしくは無調性・無拍子の現代作品とミニマルとどちらが良いかと問われると困るほどこの分野は自分的には評価に窮する。このアルバムを聴き始めて、チャレンジして良かったと思う反面、これはちょっと、と思うところが交錯した。しかし、新しい発見もあって、結果的には聴いてよかった。
映画の背景音楽に使われることが多いというグラスの作品は、ミニマルと言われるだけあって単調な旋律と和声の繰り返しがずっと続くのであるが、実はミニマルと気づくのはHow Nowくらいで、それ以外の曲は面白いくらいに違う顔を見せる曲たち。要は、聴く側が旋律の営々としたリピートを快しとするか不快とするかだ。気が付かなければ通常クラシックのリフレインやリピートとあまり変わらない所感を持つのではないか。
要は、数秒から10数秒程度の短いピリオドで同一旋律同一和声が繰り返されるとミニマル、例えばこのグラスの場合には20~40秒程度で同一パッセージが繰り返されるとそうではないという認知機構があるのかもしれない。中には1分を超えて繰り返されるものもあって、これくらいになるとJ-POP、いわゆる歌謡曲が1分で1コーラス、3コーラスで3分の所要時間というのに符合し、こういったデュレーションになるとミニマルとは称されないと思う。
どれもが綺麗な旋律であって、ピアノ独奏で弾かれると不協和音が少ないのに気が付くであろう。正和音の連続の中に忽然とセブンス・コードが現れるというのがグラスの特徴かもしれない。あるいは、無限動作の繰り返しの途中に急にパウゼが入って6度あるいは8度の突飛な音程が提示されて暫しのフェルマータ、そして何事もなかったようにミニマル様式での同等音階の提示が営々と続くといった構造だ。
曲目はたっぷりと入っており、しかも多くは映画の背景音楽だったりするのだが、これはこれで映像なしで聴いても美しくて余韻の強い、しかもシンプリフィケーションの極みのような贅肉を削ぎ落した造作ゆえ、演奏側には高度な感性と技巧が要求されるのかもしれない。つまり、旋律のバリエーションや和声の多様さを備えない音楽のため演奏技巧と表現幅の優劣が演奏の出来不出来の全てを決めるのだろう。
一枚目は明るい旋律提示が主体だが、二枚目はアンニュイ、かつ美しく儚い風情の和声を組み合わせた小品が並び、これはちゃんとした鑑賞対象としての意義が大きく、かつ、環境音楽としてリピートして聴くにしても嵌る確率は高い。
このアルバムは今までのリシッツァの録音としてはちょっと異質で変わってはいるけれども面白い。音楽的には純化された極少の音符エレメントと数個の和声を組み合わせたシンプルな作品群であって、現代の最先端ミニマルとはどういったものかを推し量るには最適な盤。ところでリシッツァがミニマルをやるのは前回のマイケル・ナイマンからだそうだ。残念ながら前作は聴いていないが、この盤はかなり良い出来だと思う。ミニマルには詳しくはないが、前述の通り極少の音要素を用いた限定的な表現幅の特殊な作品をじょうずに描き出していく彼女の感性はとりもなおさず光っていて素晴らしいと思う。
(録音評)
DECCA 4788079、通常CDの2枚組。録音は2014年9月、ノイマルクト、ライトシュターデルとある。音は最新DECCAの典型で、よく吟味されよく調整された優れた品質であり、聴きやすいくせに稠密、そして無駄な音がきちんと整理されていて好感する。やはり、リシッツァには濃密で甘美なベーゼンドルファーが似合っていると思う。
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