B.Mantovani: Voices@Accentus |
http://tower.jp/item/3924760/
Bruno Mantovani: Voices
Cinq poèmes de János Pilinszky
Vier geistliche Gedichte
Monde évanoui (Fragments pour Babylone)
Cantate No.4 'Komm, Jesu, Komm'
Sonia Wieder-Atherton (Vc) & Pascal Contet (accordion)
Accentus, Pieter-Jelle de Boer(Cond), Laurence Equilbey(Cond, Cantate)
ブルーノ・マントヴァーニ:
ピリンスキー・ヤーノシュの5つの詩
4つの宗教的な詩
消え去った世界(バビロンへのフラグメンツ)
カンタータ第4番「来たれ、イエスよ、来たれ」
アクセントゥス
ピーター=イェル・ド・ボエル(指揮(1)-(3))
ロランス・エキルベイ(指揮(4))
ソニア・ヴィーダー=アサートン(チェロ(4))
パスカル・コンテ(アコーディオン(4))
このアルバムはなかなかに凄い曲風で理解するのは難しいかもしれない。最終トラックを除いてはアカペラの前衛作品となっている。ほぼ無調性、無拍子でダイナミックレンジが広い音楽だ。そして提示される和声は殆ど崩れているが通奏ソプラノがほぼ常時鳴り続けているのは一つの特徴かもしれない。
作品としては現代音楽と分類されるだろうが、いわゆる新ウィーン楽派とも違うし類似する作品はあまり見当たらない。敢えて言うとアイヴズとかクルターグか。和声の造作が最も似ているはヴォルフガング・リームだろうか。
一曲目、ピリンスキー・ヤーノシュの5つの詩については割と静謐なイントロから始まるが、途中、リズムも和声も声質も崩れた詩吟のようなパートを挟んでエコー過多で突き進んでいく。なお、ここでいうエコー成分は、録音場所の残響成分を言っているわけではなく、アクセントゥスが発声する物理的なコーラスの各パートが僅かな時間差を伴って歌われていることを意味する。
二曲目、いきなりソリストの激しい叫び、つまりシャウトから始まる。その後そのシャウトは合唱隊全体に伝播してVnでいうとコルレーニョのような細波(さざなみ)へと増幅される。ドイツ・リート的な綺麗な通奏パートと不安を煽る細波のパートが交錯し、どういったことかトランスする心境へ導かれる。中間部は語りの部分で、あるテキストが繰り返し各パートに受け継がれつつ歌い続けられる。後半はまた静けさを取り戻し、特定のリズムを刻みつつフェードアウトする。これは詩人であるアイヒェンドルフの詩に曲を付けたものとのこと。
三曲目、瞑想的な入り。この人のパターンはどうやら有調性のゆっくりした不協和音で掴みを形成し、その後に激しく語ったり叫びを交えてみたりというものである。ここでも明確な語りをドイツ・リート的に歌う人とそうではなくて語り言葉=喉を閉めた普通の会話の声=とを併用してドロドロとした心象風景を描いているんだろうと思う。
四曲目、カンタータと銘打ち、バッハからインスパイアされた曲のようだが、それは殆ど感じられない。初っ端から殆ど無調性かつ無拍子で断片的に炸裂する合唱部が激しいメンタリティを原色の鮮やかさをもって描き出してくる。このトラックに関してはカペラではなく、VcとAcc(アコーディオン)が加わる。とても重厚で暗く、そしてデモーニッシュかつ一部は晴れやかな曲であり、長調や短調、ゆっくりや速足という既存作品を推し量るKPI=Key Performance Indicator=では括れない前衛作品。ほぼ無調性ながら、途中ではエスニックな和声を想起させられる箇所もある。しかし、あながちこれで終わりではなく、日本的な旋律と東南アジア系の融合を予感させるパートも断片的に去来するこれらの背景には何があるのかが興味惹かれるところ。この作家、ただ者ではない。
(録音評)
naïve V5420 通常CD。録音は2014年11月、2015年2月、場所はOpéra de Rouen Normandie, Rouen(France)とある。機材はKalison、Pyramix、DAD AX24、マイクがNeumann M149、DPA4003,4052、schoepsとある。音質はとにかく素晴らしく、実像系で滲みがないのは従来のnaiveのコーラス系には見られない形質。人の声がそこかしこから予告なく襲ってくるので最初は怖いくらいに感じた。音楽的に楽しめるか否かは分からないが、オーディオ的な愉しみとしては最高レベルと言っておこう。
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