2015年 05月 22日
Franck: Sonata for Vn & Pf Etc@Lisa Jacobs, Ksenia Kouzmenko |
隠れた高音質レーベルであるチャレンジ・クラシックスの昨年のリリースで、リサ・ジェイコブスという新進女流が弾くフランクのVnソナタ他。なお、これ以外にフランクはもう一枚バックログがある。

http://tower.jp/item/3353752/
Poeme: Franck/Ysaye: Duos for Violin and Piano
Eugène Ysaÿe:
Poème Elégiaque in D minor, Op.12
Extase Op.21
César Franck:
Violin Sonata in A major
Lisa Jacobs (Vn)
Ksenia Kouzmenko (Pf)
イザイ: 悲劇的な詩 ニ短調Op.12、恍惚(エクスタシー)Op.21
フランク: ヴァイオリンとピアノのためのソナタ イ長調
リサ・ジェイコブス(Vn)
クセニア・コウズメンコ(Pf)
リサ·ジェイコブスはオランダ生まれの新進気鋭Vnソリスト。6歳でヴァイオリンを始め、ユトレヒト音楽院のヤングタレント・クラスに入学、その後アムステルダム音楽院で Ilya Grubertに師事。 デビューはわずか17歳のころ、リッカルド·シャイー指揮ロイヤル·コンセルトヘボウ管弦楽団の定演だったという。リトアニアで開かれた2005年の第2回国際ヤッシャ·ハイフェッツ・ヴァイオリンコンクールで優勝。同時にオーディエンス賞を受賞し、それ以外にもオランダ国内および国際の両方の大会で何度か優勝している。
ピアノのクセニア・コウズメンコは、ベラルーシのミンスク出身のPfソリストであり指導者。ミンスク国立音楽院で学び首席卒業後に国立音楽院(ソ連時代のモスクワ?)に進み、ピアノ独奏、教職、室内楽を学んだ。1995年にオランダに渡りハーグ王立音楽院で研鑽を続け、教職に就き現在に至るようだ。
このアルバムは奏者の二人が活躍するベルギー/オランダ繋がりの作品集で、この地、すなわちネーデルラント連合王国の出身で活躍したイザイとフランクの関係性に着目して編まれたものと推測される。
Poème ElégiaqueとExtaseはベルギーの大作家イザイの名作。そして、Poème Elégiaqueの中間部分は、哀弔の鐘が打ち鳴らされる中、葬列が通過する所を描写したもので、Pfの低域弦の強打による鐘の音、Vnの執拗なダブルストップによるさざ啼きで葬送の重たい歩みが再現されている。これは実際にイザイ自身の葬儀においても演奏された曲だ。
エクスタシーについては出自・由来は良くはわからないが、イザイらしくて前衛的な作品。どことなくフォーレの醸すような浮遊感が随所にあって不可思議系かつ気持ちの良い現代音楽風作品である。恍惚とした情感が表出されているかは別として。これらのイザイ作品に対するジェイコブスの演奏設計は太い骨格と直進性の強い頑丈な構造を持っていて聴かされるものがあるし技巧的にも瞠るものがある。何度も何度も聴きかえしてしまった。若いのにこういった解釈の難しい作品を独創的かつ強い意志をもって弾いているのには快哉を送りたい。
このアルバムの中核であるフランクのソナタだが、これは余りにも有名なので説明は割愛するが、一点だけ。この曲はフランクの友人であったイザイの結婚を祝福して書かれた曲で、実際に彼の結婚披露パーティーで演奏されている。ということで、冠婚葬祭を共通キーワードとしてPoème Elégiaqueと対をなして並べたということだろう。
ジェイコブスの演奏は素直であり、ほぼ直進に近い襞の浅いヴィブラートで淡々と弾かれる。情感の表出は前半のイザイとはまるで違っていて少ない。そして聴感上もかなり平坦であって深みという点においては不満が残る。3楽章レチタティーヴォではどろっとした紅蓮のエモーションが、青空のような澄み渡った空気感と葛藤する場面が去来するのだが、ここでの彫り込みも浅めで盛り上がりとしては欠ける。
最終章にも強いアーティキュレーションが発揮される場面は殆どなくてなんとなく平穏無事に終わってしまうのだ。前半のイザイとは全く異なる曲想なので敢えてこうしているとしか思われない。想像を巡らせるに、必要以上の策を弄せず、若竹のような真っ直ぐで純粋な情感表出を用いて若き日のイザイ夫妻を祝福するシーンを再現したかった、というだけのことなのかもしれない。
(録音評)
Challenge Classics CC72624、通常CD。録音は少々古くて2013年7月、Westvest、Schiedam, The Netherlandsとある。音質は他のチャレンジ・クラシックスよりかは穏健に振った調音としていて派手さを抑制し刺激や輪郭強調を取り去ったもの。おかげで歪感が非常に低く、S/Nも極限状態だ。おそらく作風、曲風に照らせば過度な高解像度に振るのは適切ではないとの判断だったのではなかろうか。唸ってしまうような大人の音作りだ。
以下は余談:
上のジャケット写真にあるVnを弾くジェイコブスの姿だが、エクスタシーに浸る、眉を剃った女性パンク・ロッカーのような風貌に写っている。
しかし、これはプロの写真家の手によるポートレート写真としては余りにナンセンスな構図と撮り方であって、ちょっと可哀想で残念。実際には右の写真に写っているように若くキュートで美しい女性だ。
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♪ よい音楽を聴きましょう ♫

http://tower.jp/item/3353752/
Poeme: Franck/Ysaye: Duos for Violin and Piano
Eugène Ysaÿe:
Poème Elégiaque in D minor, Op.12
Extase Op.21
César Franck:
Violin Sonata in A major
Lisa Jacobs (Vn)
Ksenia Kouzmenko (Pf)
イザイ: 悲劇的な詩 ニ短調Op.12、恍惚(エクスタシー)Op.21
フランク: ヴァイオリンとピアノのためのソナタ イ長調
リサ・ジェイコブス(Vn)
クセニア・コウズメンコ(Pf)
リサ·ジェイコブスはオランダ生まれの新進気鋭Vnソリスト。6歳でヴァイオリンを始め、ユトレヒト音楽院のヤングタレント・クラスに入学、その後アムステルダム音楽院で Ilya Grubertに師事。 デビューはわずか17歳のころ、リッカルド·シャイー指揮ロイヤル·コンセルトヘボウ管弦楽団の定演だったという。リトアニアで開かれた2005年の第2回国際ヤッシャ·ハイフェッツ・ヴァイオリンコンクールで優勝。同時にオーディエンス賞を受賞し、それ以外にもオランダ国内および国際の両方の大会で何度か優勝している。
ピアノのクセニア・コウズメンコは、ベラルーシのミンスク出身のPfソリストであり指導者。ミンスク国立音楽院で学び首席卒業後に国立音楽院(ソ連時代のモスクワ?)に進み、ピアノ独奏、教職、室内楽を学んだ。1995年にオランダに渡りハーグ王立音楽院で研鑽を続け、教職に就き現在に至るようだ。
このアルバムは奏者の二人が活躍するベルギー/オランダ繋がりの作品集で、この地、すなわちネーデルラント連合王国の出身で活躍したイザイとフランクの関係性に着目して編まれたものと推測される。
Poème ElégiaqueとExtaseはベルギーの大作家イザイの名作。そして、Poème Elégiaqueの中間部分は、哀弔の鐘が打ち鳴らされる中、葬列が通過する所を描写したもので、Pfの低域弦の強打による鐘の音、Vnの執拗なダブルストップによるさざ啼きで葬送の重たい歩みが再現されている。これは実際にイザイ自身の葬儀においても演奏された曲だ。
エクスタシーについては出自・由来は良くはわからないが、イザイらしくて前衛的な作品。どことなくフォーレの醸すような浮遊感が随所にあって不可思議系かつ気持ちの良い現代音楽風作品である。恍惚とした情感が表出されているかは別として。これらのイザイ作品に対するジェイコブスの演奏設計は太い骨格と直進性の強い頑丈な構造を持っていて聴かされるものがあるし技巧的にも瞠るものがある。何度も何度も聴きかえしてしまった。若いのにこういった解釈の難しい作品を独創的かつ強い意志をもって弾いているのには快哉を送りたい。
このアルバムの中核であるフランクのソナタだが、これは余りにも有名なので説明は割愛するが、一点だけ。この曲はフランクの友人であったイザイの結婚を祝福して書かれた曲で、実際に彼の結婚披露パーティーで演奏されている。ということで、冠婚葬祭を共通キーワードとしてPoème Elégiaqueと対をなして並べたということだろう。
ジェイコブスの演奏は素直であり、ほぼ直進に近い襞の浅いヴィブラートで淡々と弾かれる。情感の表出は前半のイザイとはまるで違っていて少ない。そして聴感上もかなり平坦であって深みという点においては不満が残る。3楽章レチタティーヴォではどろっとした紅蓮のエモーションが、青空のような澄み渡った空気感と葛藤する場面が去来するのだが、ここでの彫り込みも浅めで盛り上がりとしては欠ける。
最終章にも強いアーティキュレーションが発揮される場面は殆どなくてなんとなく平穏無事に終わってしまうのだ。前半のイザイとは全く異なる曲想なので敢えてこうしているとしか思われない。想像を巡らせるに、必要以上の策を弄せず、若竹のような真っ直ぐで純粋な情感表出を用いて若き日のイザイ夫妻を祝福するシーンを再現したかった、というだけのことなのかもしれない。
(録音評)
Challenge Classics CC72624、通常CD。録音は少々古くて2013年7月、Westvest、Schiedam, The Netherlandsとある。音質は他のチャレンジ・クラシックスよりかは穏健に振った調音としていて派手さを抑制し刺激や輪郭強調を取り去ったもの。おかげで歪感が非常に低く、S/Nも極限状態だ。おそらく作風、曲風に照らせば過度な高解像度に振るのは適切ではないとの判断だったのではなかろうか。唸ってしまうような大人の音作りだ。

上のジャケット写真にあるVnを弾くジェイコブスの姿だが、エクスタシーに浸る、眉を剃った女性パンク・ロッカーのような風貌に写っている。
しかし、これはプロの写真家の手によるポートレート写真としては余りにナンセンスな構図と撮り方であって、ちょっと可哀想で残念。実際には右の写真に写っているように若くキュートで美しい女性だ。

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by primex64
| 2015-05-22 00:16
| Solo - Vn
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