北陸新幹線 富山-東京 |
出世魚である鰤のうち、店頭に並ぶ一番小さな魚体を「つばいそ」と呼ぶ。つばいそは大きめの鯵くらいの寸法で、三枚に卸しても身が余り取れないため大体は塩焼きにする。つばいそよりも大きな魚体を「ふくらぎ」と呼ぶ。関東では「いなだ」くらいの大きさであろうか。身は鰤ほど固くはなくておろしやすく、安価な割に上品な甘みがあるので地元の人たちはふくらぎが大好きだ。大概は刺身にして食べるが鰤のように塩焼きにするか大根・生姜と一緒に煮魚にしても美味しい。脂が軽くてニュートラルな味なので毎日食べても飽きない。
通常は西京味噌に漬けて焼いて食べる鰆も今が出回り始めで、富山ではそのまま刺身にして食べる。透明で上品な身には平目などと近い旨みがあり実に美味しい。その他、黒鯛、黒ソイなども安く出回っており、朝獲れをそのまま刺身にして食べる。また、刺身を山葵醤油にたっぷりと浸し、炊き立てご飯の上に載せて頂いても美味だ。
有名な蛍烏賊は今が旬で、生の獲れたてやボイルしたものは勿論、ゲソを外して一杯ずつ丁寧に開いた刺身も店頭に並ぶ。小さな烏賊なのであるが味は普通の烏賊と同じだ。ただ非常に薄くて柔らかいのが特徴。食べ方は様々だが、この時期は鮮度のいいものを刺身でいただくのがおつだ。
「ばい」と呼ばれる巻貝が獲れ始め、ある程度の大きさの貝が出回っている。生で買ってきて身を取り出し刺身にするとおいしい。こりっとした食感はつぶ貝に似ているがもう少し粘性が強い気がする。刺身以外だと醤油と味醂、酒で煮付けた煮貝にしても美味で、これは内臓まで全て食べられる。
富山湾の海産品で昨今人気が上がっているのが白海老。体長2センチ弱の小さな透明海老なのであるが、信じられないほどの甘みがあり、掻揚や天麩羅で食べるのが常套。だがこの時期、手暇をかけて剝き身にした刺身が売っていて、地元でもこれは高価な逸品だが一度食べると病みつきになってやめられない。酒がぐいぐいと進んでしまうという厄介者だ。
その他、にぎす(めぎす)という小さな地魚が出回っていた。年間を通じて獲れるようだが、今の時期は小型の魚体が獲れ立ててで店頭に並ぶ。これが100円で3~4尾パックと非常に安価。刺身にするほどの大きさではない。上質で軽めの脂を多く含むので塩焼きにすると非常に美味しい。冬にはこれを干物にして焼いて食べるが、今の季節ならそのまま生の魚に塩をして焼くと身がジューシーで美味しい。これがまた酒が進むという罪作りな魚なのだ。以上、料理の写真がなくて申し訳ないが、地元ならではの魚を堪能した小旅行だった。
旬を楽しんだ富山を後にして、午後のかがやき号で東京へ戻る。
意外と知られていないが富山は鉄道王国であり、地下鉄とモノレール以外の乗り物はなんでも揃っている。そのうちの代表格が県内に3路線も走っている路面電車。
JR富山駅は新幹線の開業後2年でホームが全て高架化される計画で、現在は新幹線と在来並行線の一部が高架で運用中。残る一面も2年後には高架化され、一階部分には南北を貫く広大な空間が出来る。南側から見た現在の富山駅舎はガラス張りで、この2階部分の手前が新幹線、奥側が在来並行線のホームとなる。
先月、新幹線開業に合わせ、JR中央改札の正面に路面電車の停留所が新設され、新幹線を降りると路面電車にそのまま連絡できるようになった。今までは駅からは少し離れた公道上の停留所まで歩いていく必要があったが、写真の駅舎正面玄関の左側の1階部分に移設された格好だ。(LRTの先頭部が少し見える)
高架化されて出来た1階部分の空いた空間に高架ホームと直交する格好で路面電車の停留所が作られ、そこへ市電が横付けされる。現在は南側だけが高架化されているので北側は行き止まりの壁で、市電はスイッチバックで発着しているが、数年後には壁の向こう側の在来線も2階に上がり、路面電車のレールは北側へ貫通する。
そうなると、現在は南側の繁華街で展開している富山地方鉄道の市内電車線(市電)と、北側で営業しているポートラム(富山ライトレール社のLRT)とが直結され、相互乗り入れすることとなる。北陸新幹線との接続によって市の北にも南にも路面電車で行けるようになって利便性が飛躍的に向上する。
帰路には日本海を眺めようとのことで、かがやき528号の東京方面に向かって左側のA席を予約していた。待つこと暫し、かがやき523号が定刻で入線してきた。2号車には金沢観光を終えた若い女性グループが10名程度乗っているだけで、あとはガラ空き。因みに下りの金沢行き新幹線はどの列車も富山までは満席のようだった。
かがやき528号は音もなく富山駅を出発。実家の脇をすり抜けて富山機関区を過ぎた辺りから最大加速に入る。
軽やかなモーター音は一気にトップノートに到達、ぐんぐん速度を上げながら富山平野を東進していく。
この日も薄曇りで立山連峰の姿ははっきりとはしない。列車が最高速度に達するとカメラのシャッター速度を上げても写りは悪い。
写真には列車の窓から遠くに朝日岳が捉えられているけれどもどうもはっきりとしないし小刻みにぶれているので画像は悪い。
黒部宇奈月温泉駅を通過するとトンネル地帯へと差し掛かる。
明るくなって視界が開けると日本海が目に飛び込むが、座席の目の高さからだと海とわかるよう明確に撮影することは難しく、期待したような画像は撮れなかった。
この写真には河川が日本海に注ぐところが写っているが、これは糸魚川駅通過の数秒前に姫川の鉄橋を渡っている時に撮影したもの。ちゃんとした一眼レフではないので高画質での連射は難しい。糸魚川駅構内を殆ど減速せずに通過後、すぐに日本海に別れを告げてトンネルへ突入。上越妙高までは闇の中を走る。
定刻で長野駅に到着。乗務員がJR東の社員に交代、更に東京を目指す。長野駅には8両編成E2系あさまが待機していた。長野五輪の時に新造配備されたE2系は耐用年数を超えておりE7系での置き換えが進むが、最後に増備された編成については東京・長野を結ぶあさま用、また一部の上越新幹線とき用として最後のご奉公といったところだ。
因みに、グランクラスがなかったり編成が短かったりと車種の統一が図られないという理由により、E2系が長野以西へ進入し営業運転することは今後ともないそうだ。昨年、E2系が長野から白山総合車両所まで試験運転したという報道はあったが、それは非常事態を想定した試験なのであり、営業運転への布石ではない。
長野を出てトンネルをいくつかくぐり、軽井沢を通過、またトンネル区間を通り関東平野に下って高崎を通過と、かがやき号は南に向かってひた走る。高崎から東京に至るまでの関東平野はとても広い。だが、そんな距離をものともせず、かがやき号はひたすら快走する。
そして大宮駅に停車。窓の外を見ると大宮で下車する客も少なくないようで、ここから在来線、または東北新幹線で仙台方面を目指す人も多いのかもしれない。北陸新幹線の開業によって、東北の人が金沢などの北陸へ足を延ばす機会が確実に増えたような気もする。
東京駅到着はぴったり定刻。今回、往復で運行状況をつぶさに見ていたが、定刻から10秒以上遅延、また早着することはなく、途中通過駅においても予測した通過時刻から外れたことは一度もなかった。運転間隔が東海道山陽などに比べて長くて余裕があり過ぎるくらいあるので寧ろ遅延するほうが難しいのかもしれないが。いや、設備、ダイヤの優秀性、そして運転手たちの熟練した技能を褒め称えるべきか。
いずれにせよ、北陸新幹線は最初から高い完成度を示す、ラグジュアリーな高速鉄道なのであった。
(了)
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