2015年 04月 20日
Chopin: Vc-Sonata Op.65 Etc@Johannes Moser |
久し振りのヘンスラーで、ヨハネス・モーザーが弾くショパンのVnソナタとピアノトリオ。
http://tower.jp/item/3682082/
Chopin with Johannes Moser
Chopin:
Cello Sonata in G minor, Op.65
Piano Trio in G minor Op.8
Kolja Blacher (Vn)
Johannes Moser (Vc), Ewa Kupiec (Pf)
ショパン:
チェロ・ソナタ ト短調 Op.65
ピアノ三重奏曲 ト短調 Op.8
ヨハネス・モーザー(チェロ)
エヴァ・クピーク(ピアノ)
コリア・ブラッハー(ヴァイオリン)
ヨハネス・モーザーとは3~4年前からfacebookの友達関係なので名前は知っていて、恐らく職業チェリストだろうことはわかっていた。詳細は忘れたが、私が音楽趣味を持ったユーザということで先方から申請があったもので、MusicArenaで彼の作品を取り上げていたわけではなかったので奇異に感じた記憶がある。友達といっても会話を交わすなど親しい間柄ではないが。
ところが、いつだかNHKのEテレを入れたら彼が出ていてびっくりした。堂々たる弾きっぷりでなかなかいい演奏をするではないか。遅ればせながら調べてみたら玄人好みのCDリリースも多数あって、相当な実力者かつ欧州の若手では期待されるホープだそうだ。では、ということで、これまたレアなショパンのVcソナタ・アルバムを買ってみた。
モーザーのVcは音が深くてとても渋い。楽器がグァダニーニということでそう感じるのかもしれないが、実際の弾き方とメンタリティも渋いものがあるのは事実。技巧的には一流のスピードと切れがあり、そして情感表現の幅も広い。ごりっとしたVc特有の鳴らし方にもかなり精通している。弦と弓のタッチは軽量であり、質感的な面で似たソリストでいえば若手ではマクシミリアン・ホルヌング、ゴーティエ・カプソンあたり、中堅だと先に取り上げたナタリー・クラインかガスティネルあたりが挙げられよう。
ショパンはピアノの詩人といわれるくらいピアノに特化した作家なのだが、彼自身はチェロという楽器が好きだったらしくてこの不世出のソナタを書いた。詳しくはガイヤール/スターン(プレイエル)の録音に書いてあるので参照のこと。
ショパンのVcソナタは襞の深いメランコリックな曲想であって、明暗が交互にたなびくなかなかにエモーショナルな作品。前出のガイヤール/スターンの演奏は明の部分が飛び切りフローラルであり、暗の部分は必要以上に深刻化しないという好バランスな情感表現であった。モーザーの解釈はこれとは対極にあって、明の部分は粛々とドライに割り切って進み、暗の部分は作風通り、いや、更に深く沈降するような、いわば寂寥感極まるような切々としたものとなっている。どちらの演奏が良いのかはもちろん好みになるのであるが、律義さと厳格な音楽対峙といった面ではモーザーの演奏、ロマン派の醍醐味を肩肘の力を抜いて楽しむならガイヤールの演奏とできる。全く違う語法ではあるがどちらも味のある演奏である。
ピアノ・トリオもまたレアな作品で、演奏機会も録音機会もまずないと思われる。どちらかというとブラームス的な重層感が主体となる構造、音型としてはオーソドックスな若年期の習作のような作品であり、ショパンのピアノ作品全般にみられる強い個性や独創性、過度に迸るロマンチシズムは見られない。ここでのモーザーはVcソナタとはうって変わって胸襟を開いて自由に、そしてポップに弾けるような演奏を展開している。これはコリア・ブラッハーの巧妙な引率があるからかもしれないが、高域弦の使い方が老獪なブラッハーのVnにシンクロするように明媚で微細、そして華やかなフレーバーを湛えているのだった。この作品が入った盤は古い時代のものを2つ持っているが、この曲はこういった作風だったのかと初めて分かった気がした。モーザーは独奏のみならずアンサンブルにおいても抜群の協調性、更にチームのパフォーマンスを倍加させるリーダーシップを持っている。
モーザーは、確かに評判通りのがっしりとしたトーンポリシーを持った若手ソリストであり、今後この世界で巨匠になりうる可能性を持った才能の持ち主かもしれない。根拠はないのだがそういった王道を行くプレゼンスと度胸を備えている気がしてならないのだ。
(録音評)
Haenssler Classic 93321、通常CD。ソナタ:2010年12月20,21日、ピアノ・トリオ:2013年6月21,22日/SWRフンクハウス・スタジオ(シュトゥットガルト)。久し振りのヘンスラーはやはり硬質で澄明なヘンスラーの音調であって安心した。通常のCD-DAでありながらこの高解像度は昔からの形質だが、この盤では更にブラッシュアップされており、なおかつ録音に使われたベニューの残響条件、音色ともにとても良好でナチュラルなのだ。
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♪ よい音楽を聴きましょう ♫
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Chopin with Johannes Moser
Chopin:
Cello Sonata in G minor, Op.65
Piano Trio in G minor Op.8
Kolja Blacher (Vn)
Johannes Moser (Vc), Ewa Kupiec (Pf)
ショパン:
チェロ・ソナタ ト短調 Op.65
ピアノ三重奏曲 ト短調 Op.8
ヨハネス・モーザー(チェロ)
エヴァ・クピーク(ピアノ)
コリア・ブラッハー(ヴァイオリン)
ヨハネス・モーザーとは3~4年前からfacebookの友達関係なので名前は知っていて、恐らく職業チェリストだろうことはわかっていた。詳細は忘れたが、私が音楽趣味を持ったユーザということで先方から申請があったもので、MusicArenaで彼の作品を取り上げていたわけではなかったので奇異に感じた記憶がある。友達といっても会話を交わすなど親しい間柄ではないが。
ところが、いつだかNHKのEテレを入れたら彼が出ていてびっくりした。堂々たる弾きっぷりでなかなかいい演奏をするではないか。遅ればせながら調べてみたら玄人好みのCDリリースも多数あって、相当な実力者かつ欧州の若手では期待されるホープだそうだ。では、ということで、これまたレアなショパンのVcソナタ・アルバムを買ってみた。
モーザーのVcは音が深くてとても渋い。楽器がグァダニーニということでそう感じるのかもしれないが、実際の弾き方とメンタリティも渋いものがあるのは事実。技巧的には一流のスピードと切れがあり、そして情感表現の幅も広い。ごりっとしたVc特有の鳴らし方にもかなり精通している。弦と弓のタッチは軽量であり、質感的な面で似たソリストでいえば若手ではマクシミリアン・ホルヌング、ゴーティエ・カプソンあたり、中堅だと先に取り上げたナタリー・クラインかガスティネルあたりが挙げられよう。
ショパンはピアノの詩人といわれるくらいピアノに特化した作家なのだが、彼自身はチェロという楽器が好きだったらしくてこの不世出のソナタを書いた。詳しくはガイヤール/スターン(プレイエル)の録音に書いてあるので参照のこと。
ショパンのVcソナタは襞の深いメランコリックな曲想であって、明暗が交互にたなびくなかなかにエモーショナルな作品。前出のガイヤール/スターンの演奏は明の部分が飛び切りフローラルであり、暗の部分は必要以上に深刻化しないという好バランスな情感表現であった。モーザーの解釈はこれとは対極にあって、明の部分は粛々とドライに割り切って進み、暗の部分は作風通り、いや、更に深く沈降するような、いわば寂寥感極まるような切々としたものとなっている。どちらの演奏が良いのかはもちろん好みになるのであるが、律義さと厳格な音楽対峙といった面ではモーザーの演奏、ロマン派の醍醐味を肩肘の力を抜いて楽しむならガイヤールの演奏とできる。全く違う語法ではあるがどちらも味のある演奏である。
ピアノ・トリオもまたレアな作品で、演奏機会も録音機会もまずないと思われる。どちらかというとブラームス的な重層感が主体となる構造、音型としてはオーソドックスな若年期の習作のような作品であり、ショパンのピアノ作品全般にみられる強い個性や独創性、過度に迸るロマンチシズムは見られない。ここでのモーザーはVcソナタとはうって変わって胸襟を開いて自由に、そしてポップに弾けるような演奏を展開している。これはコリア・ブラッハーの巧妙な引率があるからかもしれないが、高域弦の使い方が老獪なブラッハーのVnにシンクロするように明媚で微細、そして華やかなフレーバーを湛えているのだった。この作品が入った盤は古い時代のものを2つ持っているが、この曲はこういった作風だったのかと初めて分かった気がした。モーザーは独奏のみならずアンサンブルにおいても抜群の協調性、更にチームのパフォーマンスを倍加させるリーダーシップを持っている。
モーザーは、確かに評判通りのがっしりとしたトーンポリシーを持った若手ソリストであり、今後この世界で巨匠になりうる可能性を持った才能の持ち主かもしれない。根拠はないのだがそういった王道を行くプレゼンスと度胸を備えている気がしてならないのだ。
(録音評)
Haenssler Classic 93321、通常CD。ソナタ:2010年12月20,21日、ピアノ・トリオ:2013年6月21,22日/SWRフンクハウス・スタジオ(シュトゥットガルト)。久し振りのヘンスラーはやはり硬質で澄明なヘンスラーの音調であって安心した。通常のCD-DAでありながらこの高解像度は昔からの形質だが、この盤では更にブラッシュアップされており、なおかつ録音に使われたベニューの残響条件、音色ともにとても良好でナチュラルなのだ。
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by primex64
| 2015-04-20 23:40
| Solo - Vc
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