MusicArena Awards 2014 |
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MusicArena Awards 選考基準
・2014年度前後にリリースされたCD/SACD(国内盤・輸入盤)
・演奏面/音質面ともに優れたもの
・前衛的な取り組みであると認められるもの
・以上を考慮して以下の各賞を選考する
MusicArena Grand Prix - 最優秀作品を1点選出
MusicArena Semi-Grand Prix - 優秀作品を1~2点選出
MusicArena Performance of the year - 演奏に特に秀でた作品を数点選出
MusicArena Sound of the year - 録音品質に特に秀でた作品を数点選出
MusicArena Special Encouraging Prize - 将来を嘱望する奏者の作品を数点選出
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※以下、ジャケット写真をクリックすると詳細解説が開きます
MusicArena Grand Prix 2014
Chopin: Preludes Op.28@Ingrid Fliter
ショパン:
24の前奏曲Op.28 他
イングリット・フリッター(ピアノ)
レーベル:Linn Records
ノンレガートで貫かれているけれども嫋(たお)やかさと粘りを失わない、そして襞が深いメロウな解釈。色彩感とバリエーションに富んだプレリュードの各曲をここまで物語風に歌いこんだ本格的な大人のショパンは昨今では非常に稀有だ。SACDハイブリッドに収められたピアノの音質も非常に優秀だ。
MusicArena Semi-Grand Prix 2014
Silvestrov: Pf Works@Minako Tsukatani
涙のバガテル~天使のピアノ
~シルヴェストロフ ピアノ作品集
“天使(メッセンジャー)”、3つの小品 他
塚谷水無子(ピアノ)
レーベル:Pooh's Hoop
シルヴェストロフというウクライナの現代作家の作品をオルガニスト=塚谷水無子が世に問う力作。シルヴェストロフの作風は、完全なレガートによる疎の美学とでもいうべき孤高のプレゼンスを有している。時空を超越したどっぷりとした音世界が眼前に現出する。オンマイクによるピアノ録音はとてもチャレンジングだ。
MusicArena Semi-Grand Prix 2014
Saint-Saens: Vc-Con#1 Etc.@Natalie Clein, A Manze/BBC Scottish SO.
サン=サーンス:
チェロ協奏曲第1番イ短調 Op.33 他
ナタリー・クライン(チェロ)
アンドルー・マンゼ、BBCスコティッシュ響
レーベル:Hyperion
ナタリーの弾くチェロは、ふわりと軽いフェザータッチが特徴で、軽量かつ極細の絹糸を束ねて音を編み上げる技法。つまりドライポイント・リトグラフのように極細線の集合体で精緻に描画するのだ。こういった超絶技巧で鳴らされるチェロ協奏曲1番は精巧でありながらどこか優しい響きだ。
MusicArena Performance of the year 2014
Beethoven: P-Sonata Op.27-2 Etc@Sachiko Furuhata-Kersting
ベートーヴェン:
ピアノソナタ第14番嬰ハ短調Op.27-2月光 他
サチコ・フルハタ=ケルスティング(ピアノ)
レーベル:OEHMS
アグレッシブかつハイスピードな解釈で弾かれるこの月光ソナタに込められた熱いエモーションは素晴らしいのひとこと。続くハ短調変奏曲も出色の出来栄えで、微細にして静謐なタッチだが大胆なデュナーミク、そして急峻なアチェレランドとその緩解と目まぐるしいが一切の破綻がない精緻な技巧は盤石だ。後半のシューマンはフローラルで快活な出来栄えでこれまた良い。
MusicArena Performance of the year 2014
Schumann: Kinderszenen Etc@Lise de la Salle
シューマン:
子供の情景 op.15
アベッグ変奏曲 op.1 他
リーズ・ドゥ・ラ・サール(ピアノ)
レーベル:naïve
リーズは着実に進化・変化していることを示す一枚。従来からのハイスピード技巧を温存しつつ打鍵力を更に強化して左右のパワーバランスが収斂してきた。子供の情景は骨格が太く、ある意味男性的な解釈の演奏であり、繊細さを失うことはないにせよ、ダイナミックな側面にフットライトを当てた動的な演奏設計としている。換言すると、ハイパワーな打鍵を得て力強いトルクで牽引される演奏だが、シルキー&スムーズに加速するという、相反する要素を満たしているのだ。
MusicArena Sound of the year 2014
Saint-Saens: Sym#3 C min.Op.78@Maki Yamamoto, Norichika Iimori/Tokyo SO.
サン=サーンス:
交響曲第3番ハ短調Op.78オルガン付き
山本真希(オルガン)
飯森範親(指揮)、東京交響楽団
レーベル:りゅーとぴあ
国内録音のこのオーソドックスで落ち着いた理性的な演奏は良い出来栄え。飯森範親の穏和で堅実なリードが光る。山本真希のオルガンは技巧的には盤石で、アインザッツの正確無比さ、リリースの消え入りかたの美しさは特筆もの。日本人鍵盤楽器奏者の基礎水準の高さを思い知る。DSD録音によるSACDシングルレイヤーの音質は従来の国内レーベルの常識を覆す、まさにエポックメーキングなもので、国内録音の水準もここまで来たかと感慨に耽る。
MusicArena Sound of the year 2014
Sacrifices: Carissimi: Historia di Jepthe Etc.@David Bates/La Nuova Musica
ブロッサール: 昇階唱のための交響曲
シャルパンティエ: 聖ペテロの否認 他
デヴィッド・ベイツ、ラ・ヌオヴァ・ムジカ
レーベル:Harmonia Mundi USA
ラ・ヌオヴァ・ムジカはイギリスで設立され、ロンドンヘンデル国際フェスティバル、スピタルフィールズ国際フェスティバル、およびオールドバラ国際フェスティバルの常連であり、昨今では国際的にその存在が認められるに至った。どのパートの歌手も声量がたっぷりあるだけでなく低歪で透明度が高いのはワールドクラスで通用している証。音質は極上で、人の気配が異様なまでに捉えられた超優秀録音盤だ。
MusicArena Special Encouraging Prize 2014
Debussy: Preludes@Hiroko Sasaki
ドビュッシー:
前奏曲 全集
佐々木宏子(Pf) プレイエル1873
レーベル:Piano Classics
佐々木宏子の作品の捉え方と構図には上質で洒落たフレーバーが漂っている。この雰囲気はネーティブのパリジャンの語法に似た遊びのプレゼンスがそこかしこに感じられる。明暗も硬軟も出し入れが自在であり、ダイナミックレンジも極めて広い解釈なのである。これまた凄いピアニストがいたものである。使用楽器は日本風の装飾を施したチェンバロケースに収められたプレイエル。軽やかで典雅、夢のような音を出す特別なヴィンテージ・ピアノによるドビュッシーは、あまりにハイセンスに嵌まりすぎていてぐうの音も出ない。
MusicArena Special Encouraging Prize 2014
Alexandrov: Preludes Etc.@Feriel Kaddour
アナトリー・アレクサンドロフ:
映像 Op.21
ポエム Op.9
6つの前奏曲 Op.1 他
フェリエル・カドゥール(ピアノ)
レーベル:AR Ré-Sé
ロシア(ソ連)の作曲家アナトリー・アレクサンドロフのピアノ小品集。あまり有名ではないが独特の世界観の音楽だ。カドゥールのピアニズムは瑞々しくて色彩感に溢れ、そしてアンニュイな側面の抉り出しに抜群の深さを持っている。とにかく起伏に富んだダイナミックかつ繊細、鋭敏な演奏スタイルは一聴に値する。
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最終選考まで残った秀作たち:
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