Schubert: Complete Works for Vn & Pf@Julia Fischer, Martin Helmchen |
http://tower.jp/item/3681659/
Schubert: Complete Works for Violin and Piano
Schubert:
CD1:
Sonata for violin & piano in D major, D384 (Op.posth.137 No.1)
Sonata for violin & piano in A minor, D385 (Op.posth.137 No.2)
Sonatina in G minor, D408 (Op.posth.137 No.3)
Rondo brillant in B minor, D895 (Op.70)
CD2:
Grand Duo for Violin and Piano in A Major, D574
Fantasie in C major for violin and piano, D934
Fantasie in F minor for piano duet, D940
Julia Fischer (Vn, Pf=D940) & Martin Helmchen (Pf)
シューベルト:
Disc 1
(1)ヴァイオリン・ソナタ第1番 ニ長調 D.384 Op.137-1
(2)ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ短調 D.385 Op.137-2
(3)ヴァイオリン・ソナタ第3番 ト短調 D.408 Op.137-3
(4)ヴァイオリンとピアノのための『華麗なるロンド』ロ短調 D.895 Op.70
Disc 2
(5)ヴァイオリンとピアノのためのソナタ イ長調 D.574 Op.162
(6)ヴァイオリンとピアノのための幻想曲 ハ長調 D.934 Op.159
(7)ピアノ連弾のための幻想曲 ヘ短調 D.940 Op.103
ユリア・フィッシャー[(1)-(6)ヴァイオリン、(7)ピアノ]
マーティン・ヘルムヘン(ピアノ)
CIをした新ジャケット・デザインであり新譜ではあるが、これらの音源は過去に一度出ていて、Vol.1が2009年、Vol.2が2010年のリリースだった。たまたま両方とも持っていなかったので聴いてみるにはいい機会だった。これらの初版はPentaToneのようなマイナーとしてはそこそこのセールスを挙げたらしい。
実はシューベルトのこの手の作品はずっと苦手としていたため、2010年ごろは敢えて敬遠したのだろうと思う。その後、イブラギモヴァの全集を聴いてこれらのシューベルト作品については改心した。そして今回、DECCAに移ってからはあまり聴くことのなかったユリアの演奏を久し振りに聴いてみた。
結論から言うと、もの凄く良い演奏であり、ユリアは非常に巧いソリストであることも再認識できた。勿論、ムローヴァやファウスト辺りとは語法が異なっているので一列に並べることはできないまでも、それでも巨匠レベルにまで到達せんとする完成度である。
どの曲も素晴らしいのであるが、まず最初の頂点はD.384。闊達だが破綻も跳ねもなく周到で完璧なトレース。どちらかというと穏和でウォームな感触を基調としながら肌理細やかな解釈で、丹念な描き込みを見せる。もう一つの頂点はD.574。明るく溌剌とした若々しい展開で、多元的な弾き方から放たれるパッセージは眩しいくらい。だが、嫌味にならない微細なヴィブラートを精密にコントロールしていて、全体にふくよかさを演出している。微細に聴けば聴くほど驚くほどに計算されたアナリーゼが施されているのが分かる。それと、もう一個敢えて挙げるなら、K.331に似た幻想曲 ハ長調 D.934も出色の出来。
イブラギモヴァの演奏も骨太でかなり良かったのであるが、マイクロスコピックな筆致という点においてはユリアのこれとは比べるべくもない。そしてもう一つ挙げておかねばならないのがヘルムヘンの絶妙ピアノパートである。二人のアンサンブルはまさに全くずれのない時間的シンクロナイズを達成しているのだ。不思議なことにユリアとヘルムヘンのこの演奏からは歌声が呼吸を伴ってしっかりと聴こえてくるのである。楽器をやっていると先生からは「もっと歌うように弾け」と頻繁に言われるが、まさにそれそのものである。いってみれば歌唱のアーティキュレーションをVn & Pfで実現しているのだ。チュマチェンコ門下のなかでもシュタインバッハーと並び朗々と歌うVnソリストといってよい。
最終トラックに入っているD.940ではユリアが高域のピアノ譜を弾いている。普通に、いや相当に巧い演奏である。彼女はVnを始める前にはPfを習っており、そちらの腕前も相当なもの。グリーグのPコンとサン=サーンスのVnコン#3を一晩のプログラムでいっぺんに弾いてしまうという離れ業が語り草。
(録音評)
PentaTone PTC5186519、SACDハイブリッド。録音は前述の通り古く2009年1月3-5日、7月3-5日/オランダ、ファルテルモントとある。制作担当はいつものポリヒムニア・インターB.V.だ。ユリアは2008年にユニバーサルに移籍しているが、どうやらこの録音はペンタトーンの版権となるようだ。初版の音は聴いたことがないので何とも言えないが、この盤に限って言えば音質は優秀だ。楽器の音は正確、かつ、音像描写が今までのPentaToneの中ではずば抜けて尖鋭で楽器がピンポイント定位するのだ。PfはスタインウェイのD-274だが小さく中央奥側に定位し、ユリアのVnがこれまた小さく中央前側に定位する。アンビエント成分についてはちょっと過多という気もしないでもないが、質的にはそんなに悪くはなくてまま自然な展開。ユリアの盤としては演奏/録音共に優れていて、保存版あるいはシューベルトのVn&Pfアンサンブル集のリファレンスとなりうるクォリティである。
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