ATH-DWL3300 |
自宅のCS7.2は普通のリビングルームに設置してあるので、家族がいるときやテレビ音声を聴いているときには好きなCDを聴くことはできず、また普通の住宅街にある居住環境なので夜遅くにガンガン鳴らすわけにもいかない。ということで、CS7.2が使えない時のリスニング方法を模索していた。以前の知見と常識からだとSTAXのイヤースピーカーを導入する以外のソリューションは見当たらず、いきなりそうしてしまおうか、とも思った。だが、昨今ではテクノロジーが進歩していて色んな選択肢があることがわかり、一通り検討してみていたところ。
今回の私のニーズとしては、以下が挙げられる:
(1)夜間やテレビ音声再生時にも周囲を邪魔せず/邪魔されず聴取できること
(2)CDおよびSACDが聴取できること
(3)可能な限り高品位な再生音で聴取できること
(4)リビング内のどこでも聴取できること
上記(1)を満たすには、別室を作れない以上、ヘッドフォン/イヤフォンの類を選ぶしか方法はない。また(4)を満たすためにはワイヤレス送受信機能を備えた製品である必要がある。(3)に関しては主観が多分には入るが、それこそ実聴取して選択するしか方法はない。(2)のCDについては様々な機器があるにはあるが、SACDを聴くには現在使用中のAccuphase DP-85をアナログ接続する以外方法はない。
(4)については、現在ではBluetoothが主流であり、多種多様な関連機器が出回っている。その中でもBluetoothのレシーバ付きイヤフォンというのがラインナップが非常に豊富であり、それはスマホにBluetoothトランスミッタが内蔵されているのが理由だ。だが、今回の私のニーズを満たす製品ではない。一方、Bluetoothの単体のトランスミッタ/レシーバまたはその兼用機というのも売られている。これが使えそうだと思って検討していた。殆ど全てのトランスミッタ製品のアナログ入力はインピーダンスが低く、つまりiPodやiPhoneのイヤフォン出力(=フォーン・ジャック)を前提に設計されていて、ステレオミニ=RCAアダプタで繋いだとしてもラインレベルでは音が小さすぎて実用的でない(一部のオーディオ専業メーカー製ではRCAピンジャックが付いたものも売られていたようだが、ディスコン製品)。また、フォーン出力からの実際の音も良くはなくて、私の要求レベル(3)を満たすことは殆ど無理だった。
ということで、RCAのラインレベル入力を持ち、そこそこの品位でワイヤレス送受信できるヘッドフォン/イヤフォンはないのか、と探したところ、サラウンド・ヘッドフォンという製品カテゴリーがあることが分かった。パナ、ソニー、パイオニアなど大手は大体同じような仕様の製品を発売している。
休みの日に横浜のヨドバシをふらついていたらテクニカのサラウンド製品のブースがあって、たまたま展示・デモしていた製品を試聴してみた。ソースはテレビ画像と共にレディー・ガガのDVDが流れていて、もうそれは聴くに堪えない酷い音だった。しかもドルビー・プロロジックでマルチチャンネル変換されたぐるぐると目が回るようなサラウンドも最悪だった。だが、長年の経験から動物的に音質を脳内変換する癖がついているので、この製品自体の音質や可能性について直感的に嗅ぎ取れるものがあった。つまり、かなりいけるのだ。値段は3万円に届かない程度。だが他の通販サイトとかで飛び切り安い価格で売っていると凄く悔しい。
それで、その場でiPhoneから価格コムに入って実勢販売価格を調べた。そうしたところヨドバシ店頭価格はかなり安い部類で、最安値から500円と違わない。ということで、通り掛かった店員を反射的に捕まえて「これをくれ!」と申し付けてしまった。レジに行ったらポイントが思った以上に溜っていることがわかりそれほどの負担感なしに速攻でお持ち帰りとなった次第。
持ち帰ってから自宅システムにフックアップした。この製品の入力はTOSリンク2系統にRCAのライン1系統、ついでにデジタルのパススルー出力もちゃんとついている。最初はDP-85のTOSリンク(角形の光デジタル出力)に繋ごうかと思ったが、上記(2)にもある通り、SACDもDP-85から聴きたい。だがTOSリンク接続だとCDしか出て来なくて駄目。つまりRCA接続ということになる。
DP-85の余っているアンバラ出力に繋ぐ方法もあったが、Mark LevinsonのプリアンプであるNo.38LにはREC-OUTが二つあるのでそのうちの一つから出すことにした。これだと、アンプのプログラミングでDP-85だけではなくてセル・レグザやFMチューナーなどからも簡単に出せるので便利だ。レシーバの内蔵リチウム電池を満充電してから色々と試した。
最初は単なる2chのイヤフォンとして使ってみる。もう全然いい音で、ワイヤードのヘッドフォンと何ら変わりないくらい高品位だ。ソースの違いも明確に分かるし、勿論、CDレイヤーとSACDレイヤーの差異も克明に描き分ける。初期の期待感としては、ドルビープロロジックもドルビーヘッドフォンも不要で、単に高品位で2ch伝送してくれればよいというものだったので、さしあたっての目標は達成したことになる。
ところが、プロロジックとドルビーヘッドフォンというのがこれがなかなか優れもので、頭内定位する不自然な圧迫感を緩和してくれて具合が良いのだ。さすがに発音源が二つしかないステレオ・ヘッドフォンなので、ホール残響が派手に回って頭の外に離脱するとかの本格的サラウンド効果は無理なものの、ごくごく自然に展開するホールトーンの処理はよく考えられていると感心する。
ドルビーヘッドフォンというデコード技術は、要は40年程前に生録と共に流行ったバイノーラルのデジタル演算バージョンであり、音の伝播関数を使ってダミーヘッドと室内アコースティックの様子をシミュレートするというもの。バイノーラルと同様に頭の外に定位させるには少々訓練が必要なのかもしれない。実際、スピーカーで聴取しているときとの距離感比較を繰り返していると徐々にではあるけれども前方定位している楽器が見えるようになって来る。
で、CS7.2とどちらが再生品位が上か、であるが、それはやはり、コヒーレント・ソース・スピーカーによる音場創生には一歩かなわない。だが、一般的な人が聴く限りにおいてはかなり肉薄しているか、あるいは同等と聴こえるに違いない。
ということで、快適なヘッドフォン環境を手っ取り早く手に入れることができたし、当面のあいだは色々と楽しめそうである。
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