新天地@中華街 |
市場通りの外れ、というか関帝廟通りを元町側へ渡って数軒先にある梅欄本店に行ったら、普段は空いているのに何故か並んでいた。ならばということで向いの雲龍を覗くもテーブル席は二つとも満杯。カウンタは2席空いていたが、家内はテーブルにゆっくり腰かけて食べたいという。
では、ということで、元町側へ暫く行ったところの角にある萬来亭に向かうも、こちらも雨のなか傘を差して行列している。さて困った・・。そういえば梅欄側へ数軒戻ったところに新天地なる店があって、ここはいつからあるか定かではないが入ったことがないのは確か。メニューボードを見たら鉄板焼きそばが表示されていた。
店は空いていて先客は1組4名だけ。ちょうど会計して帰るところだった。店内のテーブル席は広々していて快適。まずは生ビールを頼む。メニューによれば上海料理の店らしく、ラインナップは単品、セットともに豊富だ。家内はその中から最も量が少なそうな2コインのランチセットAを頼む。私は目当てだった鉄板焼きそば、それとビールの当てに台湾腸詰を頼んだ
ビールはすかさずサーブされ、ちょっとあって台湾腸詰も運ばれた。奥の厨房ではさっそく調理にとりかかっている風でカンカンと中華鍋を振る音が鳴り響いている。家内のセットからかかっているようで、春巻が到着。揚げ立てで非常に熱そうだ。割と小振りだが身がみっしりと詰まっており、フカヒレや筍その他の野菜類が餡に絡まってとても美味しいとのこと。
次に海老チリが到着。小型の皿だが海老は大きくぷりぷりしたものが4つ入っている。味付けはそれほど甘くはなく塩っぱくもなく中庸、ぴりっと辛目、葱の風味が香ばしくこれまた満足の味。客が我々以外にいなくて暇なのか、出来上がり次第いちいち一皿ずつ運んでくる。女将さんの片言の説明によれば、厨房は非常に広くて料理人も大勢待機しているとのことだ。
腸詰は何故か台湾風のもので甘目。だが、脂と塩分が適度に乗っていてビールのつまみには好適。また八角が強めに香り食欲も増進される。薄く削ぎ切りにしてある辛目の長葱を乗せて頂くと肉の甘みと脂分がある程度中和されてとても美味しい。ビールも進むが、これは温かい白飯とともに頂いてもかなり行けそうな味だ。
ランチセットAの続きは高菜炒飯と水餃子。炒飯はパラパラで良い仕上がり。但し米の種類としては国産銘柄米のグレードではない。高菜の独特の香りと塩分が卵の柔らかな風味とコントラストを成していて秀逸なアレンジだ。高菜は日本(九州地方)の特産かと思われがちだが、実のところユーラシアの内陸部からシルクロードを経て中国から伝来したとされている。
そういった理由からか中華街では高菜を使った料理にはたまに遭遇する。大概は四川や湖南あたりの料理屋で見るものだが、上海でもよく使われるのであろうか。あるいは上海地方に固有に定着した漬物だったということなのかもしれないが、その辺は定かではない。いずれであったにせよここの高菜炒飯はかなり旨い。
水餃子は写真では具が少なく見えるかもしれないが実際にはむっちりとした中型の餃子が4つ浮かんでいてボリューミーである。肉々しくて量感が凄いのだが、スープは意外なことに清湯でこれが堪らなく旨い。蓮華で何回か掬って頂いたが、これは実に純朴にして旨みがじわっと沁み出た美味しい鶏ガラらしいのだ。
鶏の風味というのは濃く出すと臭みに繋がるが、逆に薄いと茫洋として何の味をメインにしているかがわからなくなる。そんな難しい条件下で透き通ったままでここまでの旨みを出すのは難しいと思われる。勿論、業務用のスープを使えばこういった味のスープは作れるが、この風味まで真似するのは難しい。これは鶏の肋骨と足(紅葉)などを真面目に煮出したもの。
さて、私がメインでオーダーした焼きそばが登場。大型の鉄板に乗った具沢山の焼きそばというか野菜炒め風の料理がサーブされた。高温に熱せられた鉄板の底ではブジブジと音を立てて汁が沸騰し、同時に出る多量の煙が立ち上って異様な雰囲気がフロアを覆う。中華鍋で仕上げた焼きそばをちんちんになった鉄板に移したのであろう。
サーブされた時には底面からぐつぐつと煮えたぎる出汁汁が溢れてこぼれる寸前で、熱い粘性質のスープがテーブルのそこかしこに激しく飛散するのである。私のズボンにまで汁が飛び散って大変なことに。まぁ油が多いわけでもないから洗濯すれば汚れは落ちると思われるのであるが。
鉄板が小康状態になるまで待つのが一番という判断で暫く放置。そのうち鉄板の温度も下がってきて手前に引き寄せることに成功。そしてようやく小皿にとって頂くことに。これは実に旨い焼きそばだ。麺自体は極細と言ってよいが硬めの茹であがりで表面は短時間だけ高温で焼き固めたふうでかりかり。そこに前述の豊富な具が餡に絡めてかけてあるのだ。
これは実に巧妙な味付けだ。化調はごく少ないか或いは皆無、実に優しい味付けで塩分も殆ど気にならない。だが、滋味成分が強いのでつるつる、どんどん入って行く。恐らくは海老や烏賊といった海産物に加えて豚肉やその他の山の幸(茸、ピーマン、韮、白菜など)が合算されて非常に強い旨みが出ているということだろう。
超高級な風情はないし味だって普通といえば普通なのだが、なんとも安心できてほっこりとした料理たちなのだ。中華街の外れ、というか寧ろ元町からの方が近いロケーションにあるこの店は普段使いするにはうってつけだ。しかもこの内容でこの値段とは相当にリーズナブルで嬉しい限り。
帰り際、地元の華僑系が3~4人ぞろぞろ入ってきた。常連らしく慣れた様子で店の人たちと現地語で会話している。女将さんによると台湾の一流のお茶屋さんの社長さんだという。あー、天仁茗茶(てんれんめいちゃ)ならいつも買っている、と言うと、一同、そこそこ!!と驚いたように合唱する。帰り際この社長さんから、いつも利用してくれて有難う!と丁重に挨拶された。
新天地
神奈川県横浜市中区山下町126-3
電話: 045-662-2284
営業: 11:30~22:30
定休: 無休
最寄: みなとみらい線 元町・中華街5分
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