2014年 07月 30日
Saint-Saens: Sym#3 C min.Op.78@Maki Yamamoto, Norichika Iimori/Tokyo SO. |
「りゅーとぴあ」という新潟市民芸術文化会館のコンサートホールの愛称をそのまま使った自主レーベルからの新譜で、サン=サーンスのオルガン付き、SACDシングルレイヤー(単層)。なお、これはハイブリッド盤ではないのでCDレイヤーは含まれず、従ってSACD再生機能のない普通のCDプレーヤーでは再生はできないので要注意。

http://tower.jp/item/3521235
Saint-Saëns: Symphony No.3 C minor Op.78 "Organ"
Maki Yamamoto(Org)
Norichika Iimori(Cond), Tokyo Symphony Orchestra,
サン=サーンス:交響曲第3番 ハ短調 Op.78「オルガン付き」
山本真希(オルガン)
飯森範親(指揮)、東京交響楽団(コンサートマスター:水谷晃)
この大規模な曲については国内演奏、及び国内録音の機会はかなり少ないと思われる。そんな中にあってオーディオマニア向けとも思われるこの盤がリリースされた。しかも、在京オケが新潟の地方ホールへと出張しての録音と、かなりマニアックな試みで、優れたホール音響と大規模オルガンをプロモートしようとするりゅーとぴあ側の熱意がひしひしと感じられる企画。
サン=サーンスのオルガンと言えば、古典的な名演はいくつもある。ステレオフォニック方式の録音技術が発達してからの定番と言えば、スゴン、アンセルメ/スイスロマンドや、マリー・クレール=アラン、マルテノン/フランス国立放送管が挙げられる。そして、演奏、録音ともに優れた現代的録音では、ラトリー、エッシェンバッハ/フィラデルフィアの録音が非常にクールであり、今なお圧倒的な存在感がある。
さて、この国内録音であるが、オーソドックスで落ち着いた、そして模範的ともいえる理性的な解釈と演奏である。美しい弦楽隊とバランスの良い音圧で花を添える金管隊をリードする飯森のタクトは思った以上に急いではいない。いくつものピークを高いテンションを維持したまま作り出して行くが、情感に任せた爆発的な発露に至る個所はないのは彼がサヴァリッシュの秘蔵っ子と呼ばれる所以だろう。
りゅーとぴあ専属という山本真希のオルガンはとても巧い。アインザッツの正確無比さ、リリースの消え入りかたの美しさは特筆ものであり、日本人鍵盤楽器奏者の基礎水準の高さを思い知る。
この作品においてはオルガンはもう一つの主役であって、伴奏の域を超えたフル・ポーションの楽譜はそんなに簡単ではないし、また足鍵盤を含む全身を用いての操鍵は体力的にも大変だと思う。体躯が小さそうな山本にはちょっときついかな、とも思うが、音を聴く限りはものともしていないようだ。
この作品の場合、どうしても終楽章、それもトゥッティ前後の圧倒的音圧にフットライトが当たってしまうのだが、この演奏の場合、緩徐楽章が優秀だ。その滑らかに流れるような、そして気品と香りの高い演奏は東京SOの基本性能の高さを端的に示している。唯一残念なのは、金管隊がところどころ小規模な破綻を示すところ。特にHr、Tpの弱音部コントロールがうまくなくて破裂音を撒き散らすのが無粋と言えば無粋。それを除けば規範的な演奏内容となっており、すべて国産パーソネルで構成された演奏としては出色ではなかろうか。
(録音評)
りゅーとぴあ RYUTSA0001、SACDシングルレイヤー。録音は2013年9月23日、りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館コンサートホールでのライブ収録とある。ライナーによれば、NHKにも採用されているという、5チャンネル録音で世界的に有名なマイク配置方法「下山アレイ」というテクニックが使われているそうだ。録音エンジニアはこれを考案した下山幸一氏自身が担当。ノンリミッターにてDSD 5.6MHzで録音されたとある。
下山アレイとは、マイクを5本だけ使い、同心円状の円周部に5本のマイクを配したものだそうだ。ライナーにはオルガン3本、ピアノ1本、アンビエンスマイク1本とあるが、オルガン用はオケを全体俯瞰できる位置から狙っていると思われ、従って正しく言うとオルガン及びオケ用に3本のマイク、ということだろう。この下山アレイとは、つまりデッカ・ツリーの3本マイクの背後側に、ステージ逆向きに2本だけマイクを追加したものと考えてよさそうだ。
音質だが、確かに立体的な広がりが感じられ、オケもオルガンも前後、また上下の奥行関係が見え透くようなホログラフィックなものだ。欧米の優秀レーベルでは当たり前のこの効果がようやく国内録音にも登場したという感じ。録音レベルはかなり低く、トゥッティに最大音量を揃えているためか、通常部は聴取が難しいほど音が小さい。だが、ひとたびff(フォルティッシモ)に転じれば怒涛のような音の波が襲ってくる。但しその場合においても破綻は一切なくて三次元立体的な音場展開は全く崩れない。
オルガンの録音レベルもかなり低く、相当なオフマイクなので弱音部ではディテールが判然としないところがある。しかし、周波数レンジは非常にブロードと見受けられ、超低域(32フィート長のフルー管)の鳴動が克明に捉えられている。またホール全体のS/Nは非常に良好、つまり静謐で優秀なホールであると考えられる。ライナーにはライブの一発録りとの記述がある。だが、聴衆ノイズが全く聴こえず、これはDSP処理で消し去っているのか、あるいは客を入れないセッション的ライブ収録と考えられる。一発録りとあるけれども、実は1~3楽章と終楽章とではマイク位置が異なっている。つまり、最終楽章はマイク・アレイをステージに少し寄せているため、音像が全体的に大きくなり、またオルガンのディテールが明晰に定位する。
この録音をきちんと再生するには、高音質のSACDプレーヤー、音のディテールや空間情報を正確に伝送できるプリアンプ、瞬発的な過負荷に対しても電流供給能力が落ちないトランジェント特性に優れたパワーアンプ、そして全帯域ピストン・モーション駆動が可能となる高性能4Wayスピーカーシステムが必要である。
なお、通常CD(CD-DA)はRYUT 0001として同一内容にて発売されており、SACDが鳴らない再生システム向けにはこちらを購入のこと。
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♪ よい音楽を聴きましょう ♫

http://tower.jp/item/3521235
Saint-Saëns: Symphony No.3 C minor Op.78 "Organ"
Maki Yamamoto(Org)
Norichika Iimori(Cond), Tokyo Symphony Orchestra,
サン=サーンス:交響曲第3番 ハ短調 Op.78「オルガン付き」
山本真希(オルガン)
飯森範親(指揮)、東京交響楽団(コンサートマスター:水谷晃)
この大規模な曲については国内演奏、及び国内録音の機会はかなり少ないと思われる。そんな中にあってオーディオマニア向けとも思われるこの盤がリリースされた。しかも、在京オケが新潟の地方ホールへと出張しての録音と、かなりマニアックな試みで、優れたホール音響と大規模オルガンをプロモートしようとするりゅーとぴあ側の熱意がひしひしと感じられる企画。
サン=サーンスのオルガンと言えば、古典的な名演はいくつもある。ステレオフォニック方式の録音技術が発達してからの定番と言えば、スゴン、アンセルメ/スイスロマンドや、マリー・クレール=アラン、マルテノン/フランス国立放送管が挙げられる。そして、演奏、録音ともに優れた現代的録音では、ラトリー、エッシェンバッハ/フィラデルフィアの録音が非常にクールであり、今なお圧倒的な存在感がある。
さて、この国内録音であるが、オーソドックスで落ち着いた、そして模範的ともいえる理性的な解釈と演奏である。美しい弦楽隊とバランスの良い音圧で花を添える金管隊をリードする飯森のタクトは思った以上に急いではいない。いくつものピークを高いテンションを維持したまま作り出して行くが、情感に任せた爆発的な発露に至る個所はないのは彼がサヴァリッシュの秘蔵っ子と呼ばれる所以だろう。

この作品においてはオルガンはもう一つの主役であって、伴奏の域を超えたフル・ポーションの楽譜はそんなに簡単ではないし、また足鍵盤を含む全身を用いての操鍵は体力的にも大変だと思う。体躯が小さそうな山本にはちょっときついかな、とも思うが、音を聴く限りはものともしていないようだ。
この作品の場合、どうしても終楽章、それもトゥッティ前後の圧倒的音圧にフットライトが当たってしまうのだが、この演奏の場合、緩徐楽章が優秀だ。その滑らかに流れるような、そして気品と香りの高い演奏は東京SOの基本性能の高さを端的に示している。唯一残念なのは、金管隊がところどころ小規模な破綻を示すところ。特にHr、Tpの弱音部コントロールがうまくなくて破裂音を撒き散らすのが無粋と言えば無粋。それを除けば規範的な演奏内容となっており、すべて国産パーソネルで構成された演奏としては出色ではなかろうか。
(録音評)
りゅーとぴあ RYUTSA0001、SACDシングルレイヤー。録音は2013年9月23日、りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館コンサートホールでのライブ収録とある。ライナーによれば、NHKにも採用されているという、5チャンネル録音で世界的に有名なマイク配置方法「下山アレイ」というテクニックが使われているそうだ。録音エンジニアはこれを考案した下山幸一氏自身が担当。ノンリミッターにてDSD 5.6MHzで録音されたとある。
下山アレイとは、マイクを5本だけ使い、同心円状の円周部に5本のマイクを配したものだそうだ。ライナーにはオルガン3本、ピアノ1本、アンビエンスマイク1本とあるが、オルガン用はオケを全体俯瞰できる位置から狙っていると思われ、従って正しく言うとオルガン及びオケ用に3本のマイク、ということだろう。この下山アレイとは、つまりデッカ・ツリーの3本マイクの背後側に、ステージ逆向きに2本だけマイクを追加したものと考えてよさそうだ。
音質だが、確かに立体的な広がりが感じられ、オケもオルガンも前後、また上下の奥行関係が見え透くようなホログラフィックなものだ。欧米の優秀レーベルでは当たり前のこの効果がようやく国内録音にも登場したという感じ。録音レベルはかなり低く、トゥッティに最大音量を揃えているためか、通常部は聴取が難しいほど音が小さい。だが、ひとたびff(フォルティッシモ)に転じれば怒涛のような音の波が襲ってくる。但しその場合においても破綻は一切なくて三次元立体的な音場展開は全く崩れない。
オルガンの録音レベルもかなり低く、相当なオフマイクなので弱音部ではディテールが判然としないところがある。しかし、周波数レンジは非常にブロードと見受けられ、超低域(32フィート長のフルー管)の鳴動が克明に捉えられている。またホール全体のS/Nは非常に良好、つまり静謐で優秀なホールであると考えられる。ライナーにはライブの一発録りとの記述がある。だが、聴衆ノイズが全く聴こえず、これはDSP処理で消し去っているのか、あるいは客を入れないセッション的ライブ収録と考えられる。一発録りとあるけれども、実は1~3楽章と終楽章とではマイク位置が異なっている。つまり、最終楽章はマイク・アレイをステージに少し寄せているため、音像が全体的に大きくなり、またオルガンのディテールが明晰に定位する。
この録音をきちんと再生するには、高音質のSACDプレーヤー、音のディテールや空間情報を正確に伝送できるプリアンプ、瞬発的な過負荷に対しても電流供給能力が落ちないトランジェント特性に優れたパワーアンプ、そして全帯域ピストン・モーション駆動が可能となる高性能4Wayスピーカーシステムが必要である。
なお、通常CD(CD-DA)はRYUT 0001として同一内容にて発売されており、SACDが鳴らない再生システム向けにはこちらを購入のこと。

♪ よい音楽を聴きましょう ♫
by primex64
| 2014-07-30 22:52
| Symphony
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