2014年 04月 19日
MusicArena Awards 2013 |
昨年度も何かと忙しく過ごしていて、音楽をゆっくりと鑑賞する時間がなかなか取れなかった。聴いたCDは例年と変わらずそこそこの枚数にのぼるが、水準を下回った盤が多くて評を書いた枚数は比較的少なかった。したがってAwardsに値する作品を選出するには分母が足りない気がするが、それでも例年にもまして優秀演奏/録音盤が選りすぐりだったので、僭越ながらその中から数枚を選ぼうと思う。
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MusicArena Awards 選考基準
・2013年度中に国内リリースされたCD/SACD(国内盤・輸入盤を問わず)
・演奏面/音質面ともに優れたもの
・前衛的な取り組みであると認められるもの
・以上を考慮して以下の各賞を選考する
MusicArena Grand Prix - 最優秀作品を1点選出
MusicArena Semi-Grand Prix - 優秀作品を1~2点選出
MusicArena Performance of the year - 演奏に特に秀でた作品を数点選出
MusicArena Sound of the year - 録音品質に特に秀でた作品を数点選出
MusicArena Special Encouraging Prize - 将来を嘱望する奏者の作品を数点選出
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※以下、ジャケット写真をクリックすると詳細解説が開きます
MusicArena Grand Prix 2013
Debussy: La Mer, Première Suite d'Orchestre@ François-Xavier Roth/Les Siècles
ドビュッシー:
・管弦楽組曲第1番
(祭/バレエ/夢/行列とバッカナール)
・海~ 3つの交響的スケッチ
フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮) レ・シエクル
レーベル:Actes Sud
SWRバーデン=バーデンの主席指揮者に就任したフランソワ=グザヴィエ・ロトが、自ら組織した手兵を率いて録音した渾身の一枚。若きドビュッシーが書いた管弦楽第一組曲の世界初録音という話題性はあるものの、なんといっても交響詩・海の出来栄えが素晴らしく、この曲の演奏としてはまさに21世紀の最初のメルクマーレと言って良いパフォーマンスだ。グザヴィエ・ロトは全体的には派手さのないオーソドックスな指揮法ながら、マクロ的に優れた演奏設計に基づく悠然としたリードが特徴で、かつミクロ的にも掘り下げが鋭くて、今後が嘱望される未来の巨匠候補である。広大に展開する音場を丸ごと収めた録音も素晴らしく、言うことはない。
MusicArena Semi-Grand Prix 2013
Stravinsky: The Rite of Spring@Yannick Nezet-Seguin/Philadelphia O.
ストラヴィンスキー: バレエ 春の祭典
J.S.バッハ(ストコフスキー編曲):
トッカータとフーガ ニ短調 BWV565 他
フィラデルフィア管弦楽団
ヤニック・ネゼ=セガン(指揮)
レーベル:Deutsche Grammophon
復活に向けて再出発した傷心のフィラデルフィア管が迎え入れた救世主はヤニック・ネゼ=セガンだ。ここ数年の忌まわしい暗黒期を打ち破るようなエナジー感に溢れたダイナミックかつ勇壮、そしてハイスピードな春の祭典に仕上がっている。まさに21世紀の新解釈による名演といえるこのCDは画期的。録音技術のうえではもはやリーディング・カンパニーとは言えなくなったDGであるが、こういった高水準録音への取り組みにおいて萌芽が感じられる一枚。
MusicArena Semi-Grand Prix 2013
Fauré: Thème & Variations Op.73 Etc.@Angela Hewitt
フォーレ:
主題と変奏 嬰ハ短調 Op.73
ヴァルス・カプリス第1番イ長調 Op.30
夜想曲第5番変ロ長調 Op.37 他
アンジェラ・ヒューイット(ピアノ/ファツィオーリ)
レーベル:Hyperion
ガブリエル・フォーレが生涯にわたって取り組んできたピアノ作品のエッセンスを巧みに構成した珠玉の一枚。これですべてを物語っているとは言わないけれども、フォーレの神髄はその殆どがここに凝縮して含まれるといってよい。そして、太く雄弁で多彩だけれども霊妙な超絶技巧で弾き切っているヒューイットの孤高のピアニズムが全編で冴えわたる。また、ファツィオリが発する均整の取れた類稀(たぐいまれ)な美音を存分に楽しめる素晴らしい録音となっている。
MusicArena Performance of the year 2013
Liszt: P-Sonata, Schumann: Carnaval Etc@Sophie Pacini
シューマン: 謝肉祭op.9、6つの間奏曲op.4
リスト: ピアノ・ソナタ ロ短調
ソフィー・パチーニ (Pf)
レーベル:Avi Music
あのアルゲリッチも称賛する若手女流の急先鋒の一人がこのソフィー・パチーニだ。シューマン謝肉祭とリストのロ短調ソナタという豪華にして超難曲を並べた堂々たるソロアルバム。内容的には驚天動地の一枚で、クールにしてテンペラメンタル、そして若手の中では随一と言ってよいであろう超絶技巧は並大抵のものではない。そして、この若さにしてこの完成された演奏設計には驚くばかりで、こういった才能溢れる若手の台頭はなんにつけ喜ばしいことだ。
MusicArena Performance of the year 2013
Bloch, Janacek & Shostakovich : Vn Sonatas@Midori Goto, Ozgür Aydin
ブロッホ: ヴァイオリン・ソナタ第2番《神秘の詩》
ヤナーチェク: ヴァイオリン・ソナタ
ショスタコーヴィチ: ヴァイオリン・ソナタ ト長調 Op.134
五嶋みどり(Vn)、オズガー・アイディン(Pf)
レーベル:ONYX
五嶋みどり参加のヒンデミットのアルバム(ondine)がグラミー賞を受賞したが、その受賞盤の約1ヶ月後にリリースされたのがこのアルバム。なお、これは五嶋がソニーからONYXへ移籍した第1弾ということになる記念盤。このCDのテーマは20世紀に書かれた前衛的なソナタで、普段はあまり聴く機会もないものばかり。みどりの演奏は歳月とともに円熟度と深みを増し、内面的成長を遂げていることを如実に示していたのであった。
MusicArena Sound of the year 2013
Lieder: R.Strauss, Faure, Debussy, Poulenc, Wolf & Berg@Christiane Karg, Malcolm Martineau
R.シュトラウス: 目覚めたバラ
フォーレ: 薔薇Op.51-4
ドビュッシー: 忘れられたアリエッタ
プーランク: 偽りの婚約より「花」 他
クリスティアーネ・カルク(Sop)
マルコム・マルティヌー(Pf)
レーベル:Wigmore Hall Live
新鋭クリスティアーネ・カルクのウィグモア・ホールでのリサイタル・ライブ収録盤。選ばれている曲の大半が薔薇などの花、そして夜の情景をモチーフとした曲たちだ。そして作曲家はRシュトラウス、フォーレからヴォルフ、アルバン・ベルクと幅広い。とにかくカルクの歌唱があまりにも巧くて聴き惚れてしまうのだ。ソプラノ独唱とピアノ伴奏という最少構成のライブ収録にして素晴らしい臨場感と完成度を誇るCDであって、CD-DAの新時代を予感させられる傑作録音だ。
MusicArena Sound of the year 2013
Vaughan Williams: On Wenlock Edge Etc@Mark Padmore, Jacqueline Shave/Britten Sinfonia
ヴォーン=ウィリアムズ: ウェンロックの断崖で
ジョナサン・ドーヴ: ジ・エンド
ピーター・ウォーロック: シャクシギ 他
マーク・パドモア(テノール)
ジャクリーヌ・シェーヴ(指揮)
ブリテン・シンフォニアのメンバー
レーベル:Harmonia Mundi USA
マーク・パドモアが歌い上げるイギリスの傑作歌曲集で、扱っているのがヴォーン=ウィリアムズとピーター・ウォーロック、そして現代作家のジョナサン・ドーヴだ。パドモアという天才的テノールに、静謐で精妙なイングリッシュホルン、フルート、そして極めて正確なブリテン・シンフォニアの面々による弦楽アンサンブルが加わったこれらの小品集は、過去のどんな歌曲集にも見られなかった透明な空間感で満たされている。録音技法という点においてもSACD規格をフルに活用した超高音質は必聴ものだ。
MusicArena Special Encouraging Prize 2013
J.S.Bach: Goldberg Variations BWV.988@Minako Tsukatani
J.S.バッハ: ゴルトベルク変奏曲 BWV.988
塚谷水無子
(ポジティフオルガン/草苅徹夫 2004年製作)
レーベル:Pooh's Hoop
最近は現代ピアノで弾かれることの多いゴルトベルクだが、塚谷水無子はなんとオルガンで弾いている。この盤は小型で可搬タイプのポジティフオルガンによるものだが、この前のリリースではオランダの教会の大型オルガン(Christian Müller Organ, 1738)でゴルトベルクを録ったという。演奏はオーソドックスかつ精密、完成度の高い解釈でありながら、鮮鋭でストレートな小型オルガンの長所を生かした実に瑞々しい出来栄え。録音はあの東芝EMIの伝説的エンジニア=行方洋一氏の手になる。
◇◇◇◇◇◇◇◇
最終選考まで残った秀作たち:
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♪ よい音楽を聴きましょう ♫
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MusicArena Awards 選考基準
・2013年度中に国内リリースされたCD/SACD(国内盤・輸入盤を問わず)
・演奏面/音質面ともに優れたもの
・前衛的な取り組みであると認められるもの
・以上を考慮して以下の各賞を選考する
MusicArena Grand Prix - 最優秀作品を1点選出
MusicArena Semi-Grand Prix - 優秀作品を1~2点選出
MusicArena Performance of the year - 演奏に特に秀でた作品を数点選出
MusicArena Sound of the year - 録音品質に特に秀でた作品を数点選出
MusicArena Special Encouraging Prize - 将来を嘱望する奏者の作品を数点選出
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※以下、ジャケット写真をクリックすると詳細解説が開きます
MusicArena Grand Prix 2013
Debussy: La Mer, Première Suite d'Orchestre@ François-Xavier Roth/Les Siècles
ドビュッシー:
・管弦楽組曲第1番
(祭/バレエ/夢/行列とバッカナール)
・海~ 3つの交響的スケッチ
フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮) レ・シエクル
レーベル:Actes Sud
SWRバーデン=バーデンの主席指揮者に就任したフランソワ=グザヴィエ・ロトが、自ら組織した手兵を率いて録音した渾身の一枚。若きドビュッシーが書いた管弦楽第一組曲の世界初録音という話題性はあるものの、なんといっても交響詩・海の出来栄えが素晴らしく、この曲の演奏としてはまさに21世紀の最初のメルクマーレと言って良いパフォーマンスだ。グザヴィエ・ロトは全体的には派手さのないオーソドックスな指揮法ながら、マクロ的に優れた演奏設計に基づく悠然としたリードが特徴で、かつミクロ的にも掘り下げが鋭くて、今後が嘱望される未来の巨匠候補である。広大に展開する音場を丸ごと収めた録音も素晴らしく、言うことはない。
MusicArena Semi-Grand Prix 2013
Stravinsky: The Rite of Spring@Yannick Nezet-Seguin/Philadelphia O.
ストラヴィンスキー: バレエ 春の祭典
J.S.バッハ(ストコフスキー編曲):
トッカータとフーガ ニ短調 BWV565 他
フィラデルフィア管弦楽団
ヤニック・ネゼ=セガン(指揮)
レーベル:Deutsche Grammophon
復活に向けて再出発した傷心のフィラデルフィア管が迎え入れた救世主はヤニック・ネゼ=セガンだ。ここ数年の忌まわしい暗黒期を打ち破るようなエナジー感に溢れたダイナミックかつ勇壮、そしてハイスピードな春の祭典に仕上がっている。まさに21世紀の新解釈による名演といえるこのCDは画期的。録音技術のうえではもはやリーディング・カンパニーとは言えなくなったDGであるが、こういった高水準録音への取り組みにおいて萌芽が感じられる一枚。
MusicArena Semi-Grand Prix 2013
Fauré: Thème & Variations Op.73 Etc.@Angela Hewitt
フォーレ:
主題と変奏 嬰ハ短調 Op.73
ヴァルス・カプリス第1番イ長調 Op.30
夜想曲第5番変ロ長調 Op.37 他
アンジェラ・ヒューイット(ピアノ/ファツィオーリ)
レーベル:Hyperion
ガブリエル・フォーレが生涯にわたって取り組んできたピアノ作品のエッセンスを巧みに構成した珠玉の一枚。これですべてを物語っているとは言わないけれども、フォーレの神髄はその殆どがここに凝縮して含まれるといってよい。そして、太く雄弁で多彩だけれども霊妙な超絶技巧で弾き切っているヒューイットの孤高のピアニズムが全編で冴えわたる。また、ファツィオリが発する均整の取れた類稀(たぐいまれ)な美音を存分に楽しめる素晴らしい録音となっている。
MusicArena Performance of the year 2013
Liszt: P-Sonata, Schumann: Carnaval Etc@Sophie Pacini
シューマン: 謝肉祭op.9、6つの間奏曲op.4
リスト: ピアノ・ソナタ ロ短調
ソフィー・パチーニ (Pf)
レーベル:Avi Music
あのアルゲリッチも称賛する若手女流の急先鋒の一人がこのソフィー・パチーニだ。シューマン謝肉祭とリストのロ短調ソナタという豪華にして超難曲を並べた堂々たるソロアルバム。内容的には驚天動地の一枚で、クールにしてテンペラメンタル、そして若手の中では随一と言ってよいであろう超絶技巧は並大抵のものではない。そして、この若さにしてこの完成された演奏設計には驚くばかりで、こういった才能溢れる若手の台頭はなんにつけ喜ばしいことだ。
MusicArena Performance of the year 2013
Bloch, Janacek & Shostakovich : Vn Sonatas@Midori Goto, Ozgür Aydin
ブロッホ: ヴァイオリン・ソナタ第2番《神秘の詩》
ヤナーチェク: ヴァイオリン・ソナタ
ショスタコーヴィチ: ヴァイオリン・ソナタ ト長調 Op.134
五嶋みどり(Vn)、オズガー・アイディン(Pf)
レーベル:ONYX
五嶋みどり参加のヒンデミットのアルバム(ondine)がグラミー賞を受賞したが、その受賞盤の約1ヶ月後にリリースされたのがこのアルバム。なお、これは五嶋がソニーからONYXへ移籍した第1弾ということになる記念盤。このCDのテーマは20世紀に書かれた前衛的なソナタで、普段はあまり聴く機会もないものばかり。みどりの演奏は歳月とともに円熟度と深みを増し、内面的成長を遂げていることを如実に示していたのであった。
MusicArena Sound of the year 2013
Lieder: R.Strauss, Faure, Debussy, Poulenc, Wolf & Berg@Christiane Karg, Malcolm Martineau
R.シュトラウス: 目覚めたバラ
フォーレ: 薔薇Op.51-4
ドビュッシー: 忘れられたアリエッタ
プーランク: 偽りの婚約より「花」 他
クリスティアーネ・カルク(Sop)
マルコム・マルティヌー(Pf)
レーベル:Wigmore Hall Live
新鋭クリスティアーネ・カルクのウィグモア・ホールでのリサイタル・ライブ収録盤。選ばれている曲の大半が薔薇などの花、そして夜の情景をモチーフとした曲たちだ。そして作曲家はRシュトラウス、フォーレからヴォルフ、アルバン・ベルクと幅広い。とにかくカルクの歌唱があまりにも巧くて聴き惚れてしまうのだ。ソプラノ独唱とピアノ伴奏という最少構成のライブ収録にして素晴らしい臨場感と完成度を誇るCDであって、CD-DAの新時代を予感させられる傑作録音だ。
MusicArena Sound of the year 2013
Vaughan Williams: On Wenlock Edge Etc@Mark Padmore, Jacqueline Shave/Britten Sinfonia
ヴォーン=ウィリアムズ: ウェンロックの断崖で
ジョナサン・ドーヴ: ジ・エンド
ピーター・ウォーロック: シャクシギ 他
マーク・パドモア(テノール)
ジャクリーヌ・シェーヴ(指揮)
ブリテン・シンフォニアのメンバー
レーベル:Harmonia Mundi USA
マーク・パドモアが歌い上げるイギリスの傑作歌曲集で、扱っているのがヴォーン=ウィリアムズとピーター・ウォーロック、そして現代作家のジョナサン・ドーヴだ。パドモアという天才的テノールに、静謐で精妙なイングリッシュホルン、フルート、そして極めて正確なブリテン・シンフォニアの面々による弦楽アンサンブルが加わったこれらの小品集は、過去のどんな歌曲集にも見られなかった透明な空間感で満たされている。録音技法という点においてもSACD規格をフルに活用した超高音質は必聴ものだ。
MusicArena Special Encouraging Prize 2013
J.S.Bach: Goldberg Variations BWV.988@Minako Tsukatani
J.S.バッハ: ゴルトベルク変奏曲 BWV.988
塚谷水無子
(ポジティフオルガン/草苅徹夫 2004年製作)
レーベル:Pooh's Hoop
最近は現代ピアノで弾かれることの多いゴルトベルクだが、塚谷水無子はなんとオルガンで弾いている。この盤は小型で可搬タイプのポジティフオルガンによるものだが、この前のリリースではオランダの教会の大型オルガン(Christian Müller Organ, 1738)でゴルトベルクを録ったという。演奏はオーソドックスかつ精密、完成度の高い解釈でありながら、鮮鋭でストレートな小型オルガンの長所を生かした実に瑞々しい出来栄え。録音はあの東芝EMIの伝説的エンジニア=行方洋一氏の手になる。
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最終選考まで残った秀作たち:
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by primex64
| 2014-04-19 13:24
| Music
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