2014年 04月 01日
Vaughan Williams: On Wenlock Edge Etc@Mark Padmore, Jacqueline Shave/Britten Sinfonia |
今日から新しい年度がスタートした。グラミー賞もとうに決まり、2013年度のMusicArena Awardsをそろそろ選定すべき時期となっている。しかし、バックログがまだ少しある。今回はHarmonia Mundi USAの昨秋のリリースから、当代最高のテノールの一人に数えられるマーク・パドモアが歌うイギリスの歌曲集。尚、パドモア自身もイギリス出身だ。

http://tower.jp/item/3297228/
Vaughan Williams: On Wenlock Edge & Ten Blake Songs
Vaughan Williams:
On Wenlock Edge
Ten Blake Songs
Dove:
The End
Warlock:
The Curlew
Mark Padmore (tenor)
Huw Watkins (piano)
Nicholas Daniel (oboe, cor anglais)
Britten Sinfonia (members), Jacqueline Shave
1. ヴォーン=ウィリアムズ(1872-1958): ウェンロックの断崖で(1907)
2. ヴォーン=ウィリアムズ(1872-1958): ブレイクの詩による10の歌(1957)
3. ジョナサン・ドーヴ(b.1959): ジ・エンド
4. ピーター・ウォーロック(1894-1930): シャクシギ
マーク・パドモア(テノール)
ジャクリーヌ・シェーヴ(指揮)
ブリテン・シンフォニアのメンバー
ニコラス・ダニエル(オーボエ(2)/イングリッシュ・ホルン(3,4))、
ヒュー・ワトキンス(ピアノ(1))、エマー・マクドノー(フルート(3,4))
ヴォーン=ウィリアムズはベンジャミン・ブリテンと並び英国の偉大な作曲家の一人とされるが、日本ではそれほど有名ではないと思う。ヴォーン=ウィリアムズの学生時代の友人にホルストがいるが、こちらの方の作品としては惑星が広く日本で愛聴されており有名かもしれない。但し、惑星一曲だけだが。ヴォーン=ウィリアムズはまた若かりし日にはラヴェルやブルッフに師事したこともあったが、その影響がどこまで及んだのかは作品を聴く限り分からない。
ヴォーン=ウィリアムズはシベリウスから範を得て交響曲を多く書いた作家として英国では認知されているが、並行して歌曲への取り組みも行ってきており、スコットランドやイングランドの民謡や宗教音楽・教会音楽の研究に熱心だったとされる。中年期から壮年期にかけては歌曲やそれに類する作品を数多く発表している。
ウェンロックの断崖は、英国の著名詩人=ハウスマンの抒情詩集からテキストが引用された連作歌曲集である。自然や景観といった様々な風景描写をピアノとテノールという最低限度の構成で試みたもので、どこか懐かしさを感じる。そして冷涼とした空気感、寂寥感、陰鬱な気分などといった心象風景の描き込みが丹念である。ブレイクの詩による10の歌は、テノールにオーボエ伴奏という変わった構成の連作歌曲であり、これも英国の詩人=ウィリアム・ブレイクの詩からテキストが引用されている。軽妙洒脱だが深く浸透するオーボエ、そしてパドモアの透明感あふれるテノールが民俗的なメロディーを紡ぎだしている。またピアノ伴奏を務めるヒュー・ワトキンスのキータッチは非常に精緻であり、かつ紡がれる音は空気を直接震わすような透過度だ。
ジョナサン・ドーヴは現代に生きる英国の作家であり、このジ・エンドという作品はマーク・ストランドの詩歌からテキストを引用し、ブリテン・シンフォニアとウィグモア・ホールからの委嘱で制作されたもの。尚、この盤が世界初録音ということとなる。パドモアのバックを支えるのはブリテン・シンフォニアのメンバーから弦楽四部、オーボエ(イングリッシュ・ホルン)、フルートという構成。the endとは人の死を意味しているようで、なんとも厳かで神妙なテキストだし、使われている和声や旋律進行は前衛的でタイト、かつ霊妙なもの。調性は辛うじて保たれているものの、現代音楽的アプローチを応用した味のある作品である。
最後に入っている作品は、ヴォーン=ウィリアムズと同時代を生きたピーター・ウォーロックのものである。但し、ウォーロックは30歳そこそこで夭逝しているので作品の数自体は多くはなく日本国内でもほぼ無名と言ってよいだろう。彼は評論家としても活躍する一方、古楽研究をライフワークとしていたようで、大部分の作品は独唱+ピアノという構成の鄙びた歌曲とのこと。この作品=シャクシギという連作歌曲は、イェイツの詩歌からテキストが採取されたもので、ウォーロックの代表作とされるもの。器楽編成はドーヴのブレイク・ソングと同様にテノールに、イングリッシュ・ホルン+フルート+弦楽四部である。ライナーによると、これらは1915年に書き始められ、初稿の完成の後、6~7年かけて改修が行われ、1922年に現在の5曲構成に収斂したとされている。作風としてはバルトーク、シェーンベルク、パーセルなどからの影響が認められると書いてあるが、その辺については聴いていても良くは判別できない。ヴォーン=ウィリアムズのような古風で懐かしい作風とはちょっと違い、ドライでシンプルながらメンタリティーに訴えるような前衛性も備えた作品である。
パドモアという天才的テノールに、静謐で精妙なイングリッシュホルン、フルート、そして極めて正確な弦楽アンサンブルが加わったこれらの小品集は、従来からの典型的な声楽作品集からは得られることがなかった独特の透明な空間感が醸されているのである。
(録音評)
Harmonia Mundi USA、HMU807566、SACDハイブリッド。録音はちょっと古く、2012年5月、Air Studios, Lyndhurst Hall, Londonとある。録音担当はお馴染のBrad Michel, Chris Barrett、プロデューサーは例によってRobina C.Youngだ。音質はいつものHMUSAの水準にあって、まさに演奏場所の空気をそのまま切り取ってきたような実在感が特徴だ。特に、パドモアの精緻な咽頭部の振動をリアルに拾い出すことに成功しており、人の気配感が凄まじいほどに入っている。こういった超絶的な録音を目の当たりにするとSACDの必要性を実感するのであった。
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♪ よい音楽を聴きましょう ♫

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Vaughan Williams: On Wenlock Edge & Ten Blake Songs
Vaughan Williams:
On Wenlock Edge
Ten Blake Songs
Dove:
The End
Warlock:
The Curlew
Mark Padmore (tenor)
Huw Watkins (piano)
Nicholas Daniel (oboe, cor anglais)
Britten Sinfonia (members), Jacqueline Shave
1. ヴォーン=ウィリアムズ(1872-1958): ウェンロックの断崖で(1907)
2. ヴォーン=ウィリアムズ(1872-1958): ブレイクの詩による10の歌(1957)
3. ジョナサン・ドーヴ(b.1959): ジ・エンド
4. ピーター・ウォーロック(1894-1930): シャクシギ
マーク・パドモア(テノール)
ジャクリーヌ・シェーヴ(指揮)
ブリテン・シンフォニアのメンバー
ニコラス・ダニエル(オーボエ(2)/イングリッシュ・ホルン(3,4))、
ヒュー・ワトキンス(ピアノ(1))、エマー・マクドノー(フルート(3,4))
ヴォーン=ウィリアムズはベンジャミン・ブリテンと並び英国の偉大な作曲家の一人とされるが、日本ではそれほど有名ではないと思う。ヴォーン=ウィリアムズの学生時代の友人にホルストがいるが、こちらの方の作品としては惑星が広く日本で愛聴されており有名かもしれない。但し、惑星一曲だけだが。ヴォーン=ウィリアムズはまた若かりし日にはラヴェルやブルッフに師事したこともあったが、その影響がどこまで及んだのかは作品を聴く限り分からない。
ヴォーン=ウィリアムズはシベリウスから範を得て交響曲を多く書いた作家として英国では認知されているが、並行して歌曲への取り組みも行ってきており、スコットランドやイングランドの民謡や宗教音楽・教会音楽の研究に熱心だったとされる。中年期から壮年期にかけては歌曲やそれに類する作品を数多く発表している。
ウェンロックの断崖は、英国の著名詩人=ハウスマンの抒情詩集からテキストが引用された連作歌曲集である。自然や景観といった様々な風景描写をピアノとテノールという最低限度の構成で試みたもので、どこか懐かしさを感じる。そして冷涼とした空気感、寂寥感、陰鬱な気分などといった心象風景の描き込みが丹念である。ブレイクの詩による10の歌は、テノールにオーボエ伴奏という変わった構成の連作歌曲であり、これも英国の詩人=ウィリアム・ブレイクの詩からテキストが引用されている。軽妙洒脱だが深く浸透するオーボエ、そしてパドモアの透明感あふれるテノールが民俗的なメロディーを紡ぎだしている。またピアノ伴奏を務めるヒュー・ワトキンスのキータッチは非常に精緻であり、かつ紡がれる音は空気を直接震わすような透過度だ。
ジョナサン・ドーヴは現代に生きる英国の作家であり、このジ・エンドという作品はマーク・ストランドの詩歌からテキストを引用し、ブリテン・シンフォニアとウィグモア・ホールからの委嘱で制作されたもの。尚、この盤が世界初録音ということとなる。パドモアのバックを支えるのはブリテン・シンフォニアのメンバーから弦楽四部、オーボエ(イングリッシュ・ホルン)、フルートという構成。the endとは人の死を意味しているようで、なんとも厳かで神妙なテキストだし、使われている和声や旋律進行は前衛的でタイト、かつ霊妙なもの。調性は辛うじて保たれているものの、現代音楽的アプローチを応用した味のある作品である。
最後に入っている作品は、ヴォーン=ウィリアムズと同時代を生きたピーター・ウォーロックのものである。但し、ウォーロックは30歳そこそこで夭逝しているので作品の数自体は多くはなく日本国内でもほぼ無名と言ってよいだろう。彼は評論家としても活躍する一方、古楽研究をライフワークとしていたようで、大部分の作品は独唱+ピアノという構成の鄙びた歌曲とのこと。この作品=シャクシギという連作歌曲は、イェイツの詩歌からテキストが採取されたもので、ウォーロックの代表作とされるもの。器楽編成はドーヴのブレイク・ソングと同様にテノールに、イングリッシュ・ホルン+フルート+弦楽四部である。ライナーによると、これらは1915年に書き始められ、初稿の完成の後、6~7年かけて改修が行われ、1922年に現在の5曲構成に収斂したとされている。作風としてはバルトーク、シェーンベルク、パーセルなどからの影響が認められると書いてあるが、その辺については聴いていても良くは判別できない。ヴォーン=ウィリアムズのような古風で懐かしい作風とはちょっと違い、ドライでシンプルながらメンタリティーに訴えるような前衛性も備えた作品である。
パドモアという天才的テノールに、静謐で精妙なイングリッシュホルン、フルート、そして極めて正確な弦楽アンサンブルが加わったこれらの小品集は、従来からの典型的な声楽作品集からは得られることがなかった独特の透明な空間感が醸されているのである。
(録音評)
Harmonia Mundi USA、HMU807566、SACDハイブリッド。録音はちょっと古く、2012年5月、Air Studios, Lyndhurst Hall, Londonとある。録音担当はお馴染のBrad Michel, Chris Barrett、プロデューサーは例によってRobina C.Youngだ。音質はいつものHMUSAの水準にあって、まさに演奏場所の空気をそのまま切り取ってきたような実在感が特徴だ。特に、パドモアの精緻な咽頭部の振動をリアルに拾い出すことに成功しており、人の気配感が凄まじいほどに入っている。こういった超絶的な録音を目の当たりにするとSACDの必要性を実感するのであった。
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by primex64
| 2014-04-01 23:57
| Vocal
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