2014年 03月 02日
Fauré: Thème & Variations Op.73 Etc.@Angela Hewitt |
ハイペリオンの昨年の新譜で、ヒューイットが弾くフランス作品シリーズの第4弾ということになる。

http://tower.jp/item/3277037/
Faure: Piano Music
Theme & Variations, Op.73
Valse-caprice, Op.30
Valse-caprice, Op.38
Nocturne No.5 in B flat major, Op.37
Nocturne No.6 in D flat major, Op.63
Nocturne No.13 in B minor, Op.119
Ballade in F sharp major for solo piano or piano & orchestra, Op.19
Angela Hewitt (piano)
フォーレ: ピアノ作品集
フォーレ:
主題と変奏 嬰ハ短調 Op.73
ヴァルス・カプリス第1番イ長調 Op.30
ヴァルス・カプリス第2番変ニ長調 Op.38
夜想曲第5番変ロ長調 Op.37
夜想曲第6番変ニ長調 Op.63
夜想曲第13番ロ短調 Op.119
バラード嬰ヘ長調 Op.19
アンジェラ・ヒューイット(ピアノ/ファツィオーリ)
今回の盤は、フォーレのピアノ作品を前期~後期から万遍なく拾い上げて取り扱ったアルバムであり、草創期の瑞々しさだけでなく、特に、そこはかとない翳りと音色の深みがアドオンされた中後期の珠玉のピアノ独奏曲たちが出色の出来だ。
冒頭の主題と変奏だが、良い意味で期待を裏切るヒューイットならではの演奏設計となっている。とにかく図太く力強く、そして暗澹たるマーチ風の旋律と対旋律に、更に輪をかけて絶望の淵に叩き落されるかの如き怒涛の左手和声・伴奏が迫り来る。低歪のファツィオリの低音弦が悲鳴を上げるほど凄みのある激烈なタッチに驚いてしまう。フォーレの主題と変奏は、シンプルな主テーマが洒落た変奏を伴いつつ、ある時は激情的に強く、ある時は霞が立ち上るように弱くと変幻しつつ進行する名作なのであるが、ヒューイットは主として情感面の激しさをハイライトして組み立てている。
次のヴァルス・カプリス1~2番はフォーレとしては珍しくオーソドックスなサロン風ワルツを習作的にトレースした正統派作品であり、冒険要素は殆どない。因みに後続の3~4番は前衛的構造を伴うチャレンジングな作品で、ヒューイットには後続作品の方が向いていると思うのであるが、ここでは何故かおとなしい1~2番を充てている。ヒューイットの演奏だが、冒頭の主題と変奏よりかは激しさ・粗さは目立たなくなっていて、普通に近いと言えば近い。しかし、全体にエナジーが強烈に漲っていて描き方は極めて明媚。つまり、この曲たちの一つの特徴である微妙なグラデーションは殆ど垣間見られず、とにかくひたすら明るく、手術台の無影灯に照らされた情景のように翳りが全くないと言える。微妙でなよとした部分をばっさりと切り捨てた、これまたヒューイットらしい割り切り方ともいえる。
これ以降、ヒューイットの男性的で大胆なキャラクタは出現せず、ある意味、まっとうなフォーレ解釈へと転ずる。この5番と6番の中期作品(といっても5から6へは10年以上かかっている)の瑞々しくも微妙で絶妙な中間色の塗りこめ方はどうだろう。前半の竹を割ったような解釈とはまるで別人の演奏のようであり、ヒューイットが備えている耽美主義的な演奏設計、解釈法が明確に露呈しているのだ。そして、名曲中の名曲とされる13番ノクターンだが、強打におけるパワーの美学に対し、弱音部に対する並外れた超絶的コントロール能力を見せつけられ、ヒューイットのヴィルトゥオーゾとしての才覚をあらためて思い知るのだった。
バラードOp.19は元々はここに収録されているピアノ独奏版が最初に書かれた。その後、これを試弾したリストが、演奏が至難であるわりには音響効果が今一つということから、管弦楽とピアノのための編曲を勧め、それに従って書かれたと言われている。また、この作品はフォーレが初期の頃に師事していたサン=サーンスに献呈されたとされている(詳細は不明)。単純であるけれども、その分、とても明媚でハイコントラストな初期の頃のフォーレの特徴を代表する大規模な曲だ。ヒューイットの弾き方としてはヴァルス・カプリスに近いものがある。良い演奏だ。
全体を通じて、フォーレの生涯とその作曲時期に応じた作風・特徴とピアニズムの関係性がじょうずに聞き分けられるように計算された選曲となっており、なかなかにハイセンス、かつ、ヒューイットの超人的なテクニックが存分に楽しめるように仕組まれているアルバムだ。
(録音評)
Hyperion: CDA67875、録音は2012年8月11日-14日、ベルリン・イエス・キリスト教会(ベルリン)とある。ファツィオリの円やかで精緻、歪感のない美しい響き、そして実体感をもった低域弦の強烈な咆哮がオンマイク気味に正確に捉えられている一方、全方位的に放散されていく豊かな残響が礼拝堂へ溶け込んでいく様も克明。これ以上望むべくもない完璧なピアノ録音となっている。ヒューイットが全身を使って鍵盤に向っている気配感や、ペダリング、ダンパーの動きに伴う僅かなアクション・ノイズも含まれており、これらも相俟って臨場感も良好だ。選曲、演奏、音質とどの要素においても傑出したハイレベルな出来栄えであり、ピアノファンのみならずオーディオファンにもお勧めの一枚。
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♪ よい音楽を聴きましょう ♫

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Faure: Piano Music
Theme & Variations, Op.73
Valse-caprice, Op.30
Valse-caprice, Op.38
Nocturne No.5 in B flat major, Op.37
Nocturne No.6 in D flat major, Op.63
Nocturne No.13 in B minor, Op.119
Ballade in F sharp major for solo piano or piano & orchestra, Op.19
Angela Hewitt (piano)
フォーレ: ピアノ作品集
フォーレ:
主題と変奏 嬰ハ短調 Op.73
ヴァルス・カプリス第1番イ長調 Op.30
ヴァルス・カプリス第2番変ニ長調 Op.38
夜想曲第5番変ロ長調 Op.37
夜想曲第6番変ニ長調 Op.63
夜想曲第13番ロ短調 Op.119
バラード嬰ヘ長調 Op.19
アンジェラ・ヒューイット(ピアノ/ファツィオーリ)
今回の盤は、フォーレのピアノ作品を前期~後期から万遍なく拾い上げて取り扱ったアルバムであり、草創期の瑞々しさだけでなく、特に、そこはかとない翳りと音色の深みがアドオンされた中後期の珠玉のピアノ独奏曲たちが出色の出来だ。
冒頭の主題と変奏だが、良い意味で期待を裏切るヒューイットならではの演奏設計となっている。とにかく図太く力強く、そして暗澹たるマーチ風の旋律と対旋律に、更に輪をかけて絶望の淵に叩き落されるかの如き怒涛の左手和声・伴奏が迫り来る。低歪のファツィオリの低音弦が悲鳴を上げるほど凄みのある激烈なタッチに驚いてしまう。フォーレの主題と変奏は、シンプルな主テーマが洒落た変奏を伴いつつ、ある時は激情的に強く、ある時は霞が立ち上るように弱くと変幻しつつ進行する名作なのであるが、ヒューイットは主として情感面の激しさをハイライトして組み立てている。
次のヴァルス・カプリス1~2番はフォーレとしては珍しくオーソドックスなサロン風ワルツを習作的にトレースした正統派作品であり、冒険要素は殆どない。因みに後続の3~4番は前衛的構造を伴うチャレンジングな作品で、ヒューイットには後続作品の方が向いていると思うのであるが、ここでは何故かおとなしい1~2番を充てている。ヒューイットの演奏だが、冒頭の主題と変奏よりかは激しさ・粗さは目立たなくなっていて、普通に近いと言えば近い。しかし、全体にエナジーが強烈に漲っていて描き方は極めて明媚。つまり、この曲たちの一つの特徴である微妙なグラデーションは殆ど垣間見られず、とにかくひたすら明るく、手術台の無影灯に照らされた情景のように翳りが全くないと言える。微妙でなよとした部分をばっさりと切り捨てた、これまたヒューイットらしい割り切り方ともいえる。
これ以降、ヒューイットの男性的で大胆なキャラクタは出現せず、ある意味、まっとうなフォーレ解釈へと転ずる。この5番と6番の中期作品(といっても5から6へは10年以上かかっている)の瑞々しくも微妙で絶妙な中間色の塗りこめ方はどうだろう。前半の竹を割ったような解釈とはまるで別人の演奏のようであり、ヒューイットが備えている耽美主義的な演奏設計、解釈法が明確に露呈しているのだ。そして、名曲中の名曲とされる13番ノクターンだが、強打におけるパワーの美学に対し、弱音部に対する並外れた超絶的コントロール能力を見せつけられ、ヒューイットのヴィルトゥオーゾとしての才覚をあらためて思い知るのだった。
バラードOp.19は元々はここに収録されているピアノ独奏版が最初に書かれた。その後、これを試弾したリストが、演奏が至難であるわりには音響効果が今一つということから、管弦楽とピアノのための編曲を勧め、それに従って書かれたと言われている。また、この作品はフォーレが初期の頃に師事していたサン=サーンスに献呈されたとされている(詳細は不明)。単純であるけれども、その分、とても明媚でハイコントラストな初期の頃のフォーレの特徴を代表する大規模な曲だ。ヒューイットの弾き方としてはヴァルス・カプリスに近いものがある。良い演奏だ。
全体を通じて、フォーレの生涯とその作曲時期に応じた作風・特徴とピアニズムの関係性がじょうずに聞き分けられるように計算された選曲となっており、なかなかにハイセンス、かつ、ヒューイットの超人的なテクニックが存分に楽しめるように仕組まれているアルバムだ。
(録音評)
Hyperion: CDA67875、録音は2012年8月11日-14日、ベルリン・イエス・キリスト教会(ベルリン)とある。ファツィオリの円やかで精緻、歪感のない美しい響き、そして実体感をもった低域弦の強烈な咆哮がオンマイク気味に正確に捉えられている一方、全方位的に放散されていく豊かな残響が礼拝堂へ溶け込んでいく様も克明。これ以上望むべくもない完璧なピアノ録音となっている。ヒューイットが全身を使って鍵盤に向っている気配感や、ペダリング、ダンパーの動きに伴う僅かなアクション・ノイズも含まれており、これらも相俟って臨場感も良好だ。選曲、演奏、音質とどの要素においても傑出したハイレベルな出来栄えであり、ピアノファンのみならずオーディオファンにもお勧めの一枚。
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by primex64
| 2014-03-02 18:57
| Solo - Pf
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