Brahms: P-Con #1, #2@Hélène Grimaud, Andris Nelsons/BRSO, VPO |
http://tower.jp/item/3279974/
Brahms: Piano Concertos Nos. 1 & 2
CD1: Piano Concerto No.1 in D minor, Op.15
Andris Nelsons, Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
Hélène Grimaud (piano)
CD2: Piano Concerto No.2 in B flat major, Op.83
Andris Nelsons, Wiener Philharmoniker
Hélène Grimaud (piano)
ブラームス:
ピアノ協奏曲 第1番 ニ短調 作品15
ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 作品83
エレーヌ・グリモー(ピアノ)
バイエルン放送交響楽団(CD1)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(CD2)
アンドリス・ネルソンス(指揮)
この二つは大きな構図で書かれた作品で、なおかつ演奏時間が長大なため世の中的にはピアノ伴奏つき交響曲などと揶揄される面がある。ブラームスのPコン1番は若々しいエナジーに満ち溢れている反面、屈曲した翳りや暗めの甘美さも持ち合わせていてブラームスらしく、個人的にはかなり好きな曲である。しかし、2番はコンチェルトにして4楽章形式とやはり長大であって、しかも個人的な嗜好からは少し離れていて、ブラームスらしからぬ作品と思っている。要は晩年のブラームスの執筆速度からいって、一貫した強いテーマ性が最後まで持続しえなかったのではないかと推察しているもの。
1番に関してはネルソンズの明晰でダイナミックな演奏設計が際立っているもののオケのコントロールというか表現手法のポリシーがずれている面があるためか今一つしっくりと来ない。というよりもBRSOの本来の精緻さが見られず、ハイテンポなパートでことごとく空回りしている感じ。おまけにグリモーの調子が良くなさそうで、全般的にテンションが低い。特に1楽章の強奏部では指が上滑りしている感があって落ち着かない。反面2楽章の描き込みは丹念であり、グリモーの美点である深い洞察と情感移入が垣間見られる。最終章は少し挽回するけれどもやはりフォルティッシモが汚くて歪っぽい。グリモーがこういったコンディションのまま製品版をリリースすることはいまだかつてなかったと思う。またネルソンズとBRSOのトーンポリシーの違いが浮き彫りになった点でも残念。BRSOの名誉のために申し添えておくが、このオケは一級の性能を備えたドイツを代表する楽団の一つであり、それはBR klassicのマリス・ヤンソンスのシリーズ等を聴けば明白に分かる。
2番は、作品自体の嗜好という点においては個人的には合わないのであるが、演奏としては1番よりも明らかに完成度が高くてオケに対する統率、トーンポリシーも合っている。だが、グリモーのロー・テンションぶりは1番のそれからはあまり改善しておらず、やはりフォルティッシモが混濁して飽和するのだ。1楽章は全体としては無難。それは割と遅めのテンポを採用したことが奏功していて、盛り上がりに欠けるけれども破綻もないという中庸の選択肢である。グリモーも、1番の時よりかは肩の力が抜けてナチュラルに入っている。この盤の見せ場は2~3楽章の緩徐なパートにある。VPOの発する微細で美術品のような美しい弦の音が嫌というほど堪能できる露出法になっており、グリモーが駆るスタインウェイのピアノのピアニッシモ部との溶け合いが抜群。このパートを聴くとグリモーの本領が辛うじて保たれていることが分かる。最終章はエナジーに満ちるが、やっぱりちょっと破綻気味。
結局、グリモー本来の鮮烈で芯のある、どこまでも透過していく深いフォルティッシモは最後の最後まで聴けず仕舞いで終わってしまう。全体を通じてのテンションが低め。かつ弱音部の美しさは認められるものの一貫した強い主張だとか物語性といったものも感じられず、どうも離散的な組み立てとなっているのが残念。今となっては音楽解釈の古さや音質面で難があるが、グリモーが初めて録った数十年前のメロディア盤の方が素直で良い演奏かもしれない。
(録音評)
DG 4791058、通常CDの2枚組。録音は1番が2012年4月 ミュンヘン、ヘラクレスザールでのライブでアプローズ入り。2番が2012年11月 ウィーン、楽友教会大ホール(ムジークフェラインザール)でのライブでアプローズなし。1枚目と2枚目ではオケが違う以上に録音のクォリティが大きく異なる。トーンマイスターだが、1番がPeter Urban、2番がStephan Flockとある。1枚目の音質はナローレンジかつ音場空間の創成がおかしく、品質的には取るに足らない前近代的なもの。2枚目はエミール・ベルリーナの典型的な音質で、VPOの黄金サウンドと相俟ってブリリアンスが強めに録れているが、空間はちゃんと作られて、深くはないけれども奥行き方向へもサウンドステージが展開している。1枚目は論外だが、2枚目はまあまあ聴ける。但しどちらも低域がローカットフィルターでばっさりカットされていて臨場感は皆無だ。
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