Ravel: Ma Mere l'Oye, Stravinsky: Rite of Spring@Y.Temirkanov/St.Petersburg PO. |
http://tower.jp/item/3232853/
Ravel: Ma Mère l'Oye , La Valse
Stravinsky: The Rite of Spring
St. Petersburg Philharmonic Orchestra, Yuri Temirkanov
ラヴェル: 組曲 マ・メール・ロワ、管弦楽のための舞踏詩 ラ・ヴァルス
ストラヴィンスキー: バレエ音楽 春の祭典
ユーリ・テミルカーノフ(指揮)
サンクト・ペテルブルク・フィルハーモニー管弦楽団
ハルサイについて、テミルカーノフは以前にロイヤル・フィルを振り、またマ・メール・ロワとラ・ヴァルスについてはデンマーク国立放送響を振って録音しているがかなり前のこととなる。ここへ来て、現在の手兵=サンクト・ペテルブルク・フィルを振った最新盤の音楽構築力は凄まじく、高エナジーと超ディテールを両立させたこの演奏は必聴だ。以前からシグナムが出しているテミルカーノフのシリーズは演奏の素晴らしさ(&録音の良好さ)に着目しており、今回のこれも非常にハイレベルなオケ録音となっていて膝を打つものがある。
まず、フランス印象楽派を代表するラヴェルのマ・メール・ロワだが、この入り方と全体の制御が究極的に霊妙で恐れ入る。お国柄で作る音楽を云々したくはないが、これはいい意味で「肩肘の張った」渾身のラヴェルであってもう言うことはない出色の出来なのだ。マ・メール・ロワはマザー・グース (Mother Goose) という英米でポピュラーな童謡であり、それらは1600年代、ヴィクトリア王朝の大航海時代の英国が発祥とされている。その謡曲の種類は非常に多くて数百種類に及ぶと言われている。
ラベルはその内のどれを規範としたかは分からないのであるが、元々は親密な友人の子供たちが弾くことを想定して書いたピアノ曲がオリジナル(連弾曲)であった。ラヴェルには子供はいなかったが、それでも子供が好きだった彼は友人の子供たちのために平易で弾きやすい曲を提供したかったようで、それは即ちシンプルな旋律とギミックを含まない素朴な和声に表現されているのである。因みに、ピアノ連弾としては、余りシンプルとは言えないまでも大人の論理で優れたパフォーマンスを見せつけたのがこの録音である。
そしてラ・ヴァルス。ヴァルスとは、つまりフランス語であり、私たちが理解しやすい英語の言葉だとワルツ=三拍子の舞曲的な音楽を意味するのだが、ラヴェルはこの曲ともう一つ、Valses nobles et sentimentales=高雅にして感傷的なワルツ=を書いていてこの二つが非常に有名だ。高雅~に関してはラヴェルのPコンの埋め草として入っていたトラックをずっと愛聴している。今回のこれは更にハードでメタリック、それでいてメランコリックな解釈は素晴らしい出来と言っておく。私の大編成オケ版ワルツのスタンダードはこれに代わってしまう可能性はかなり高い。
そしてメインディッシュのハルサイだが、これはもう聴いてもらうしかないだろう。チェコ・フィルが演奏するスメタナ/ドヴォルザーク、パリ管が演奏するドビュッシーやフランク、ウィーン・フィルが演奏するJ・シュトラウス、ちょっと外れるがニューヨーク・フィルが演奏するガーシュウィンというように、民族性や国民性といった、例えば独特のネーティブだけが持ち得るエモーションとプレゼンスが紡ぎ出す孤高のアーティキュレーション、または語法ともいうべき熱気が内包され、これは言葉で表現することが困難な出来栄えなのである。St.ペテルブルクPOはかつてのレニングラード・フィルであり、ショスタコのシンフォニー初作が書かれた頃からの連綿たる歴史も伝統も、そして技巧・技法もちゃんと今でも保持している稀有の楽団であることをこの盤で改めて思い知るのである。間抜けなことに、終曲が終わり盛大なアプローズが鳴って初めてこの盤がライヴ収録であることに気付くのであった。
(録音評)
Signum Classics SIGCD330、通常CD。録音はちょっと前となり、2010年12月、場所はGreat Philharmonic Hall, St Petersburgとある。音質は典型的な三次元音場創生型の21世紀録音であり、非常に細密にして大胆なサウンドステージを作り出すことに成功している。この大規模オーケストレーションを漏らすことなく破綻なく全てを収め切っていて素晴らしい録音と絶賛せざるを得ない完璧な出来栄えだ。特に、ピアニッシモにおけるFlやCl、またObの霊妙なソロパートが鋭いビームとなって向かってくるのは生コンサートホールにおける音伝播のモードと同じであり敬服するしかない非常に優れた録音だ。大規模オケにおける優秀録音はだいたいはOEHMSの専売特許、そしてたまにBISが傑出した盤を出し、エンターテインメント的にはRCOライヴが大体いつも楽しめる品質、というなかにあり、このCD-DAは非常に優れた音質を達成している。こういうのがぱっと出てくるとSACDの必要性に再度疑問を呈さざるを得なくなるのであった。
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