J.S.Bach: Double & Triple Concertos@Rachel Podger/Brecon Baroque |
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J.S.Bach: Double & Triple Concertos
Concerto for Two Violins in D minor, BWV1043
Bojan Čičić (violin II)
Concerto for Flute, Violin & Harpsichord in A minor, BWV1044
Katy Bircher (flute)
Concerto for Oboe, Violin and Strings BWV1060R
Alexandra Bellamy (oboe)
Concerto for 3 violins, strings & continuo in D major (reconstruction), BWV 1064R
Johannes Pramsohler, Bojan Čičić (violins II & III)
Rachel Podger (Vn/Dir)
Brecon Baroque
J.S.バッハ:
2つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調 BWV.1043
チェンバロ、フルートとヴァイオリンのための協奏曲イ短調 BWV.1044
オーボエとヴァイオリンのための協奏曲ハ短調 BWV.1060R
3つのヴァイオリンのための協奏曲ニ長調 BWV.1064R
レイチェル・ポッジャー(ヴァイオリン&ディレクター)
ブレコン・バロック
ケイティー・バーチャー(Fl)、アレグザンドラ・ベラミー(Ob)、ボヤン・チチッチ(Vn)、
ヨハネス・プラムゾーラー(Vn)、ザビーネ・ストファー(Vn)、アンナ・ノヴァク=ポクシヴィンスカ(Vn)、
ジェーン・ロジャーズ(Va)、ヤン・スペンサー(Violone)、マルチン・スフィオントケヴィッチ(Cem)
前リリースに引き続き、バッハのVnコンのうち複数挺のVnあるいはオーボエやフルートといった木管のための協奏曲を集めた曲集。バッハが書いたVnコンとしては、オリジナルはBWV1041~1043の三つとされているところで、このうちBWV1041と1042は前作に入っていた。そしてこのアルバムの冒頭が残りの一つ、BWV1043となっている。これは2挺のVnのための協奏曲であり、正統的な対位法に基づいたバッハならではの味わいのある名曲。特に3拍子の3楽章はアレグロ指定だが音数が多くて聴感上のテンポはヴィヴァーチェに近いものがある。ここでの2挺のVnはどちらがポッジャーなのかは判然としないほど主従旋律の交代が激しく、しかもアンサンブル内のVnとの溶け込みも周到であって良い出来栄え。
BWV1044はVn+Ob+Cemが独奏で掛け合いを展開する緊迫感に満ちた名作で、番号的にはヴァイオリン協奏曲第4番とされることもある。しかし、多作で作り変えも頻繁に行ったバッハのことゆえ、他例に漏れずこれも編曲版である。1楽章と3楽章は鍵盤用プレリュードとフーガBWV894、2楽章も同じく鍵盤用トリオ・ソナタBWV527から主旋律がとられている。これを通奏低音にCemを充て、2声のカノンをVnとObにそれぞれアサインした構成をとる。
BWV1060Rは、2台のチェンバロ用として譜面が残されているBWV1060から復元されたVnとObのための協奏曲となっており、前のBWV1044と類似で2声のカノンをそれぞれVnとObにアサインしている。バッハの晩年の協奏曲作品はこのパターンがとても多く、結局、これらのVn中心のコンチェルトはほぼすべてをチェンバロ用にも書き写していたことが幸いし、現代でも復元版のVnコンを聴くことができるというわけだ。3楽章アレグロはダブルCem版では求道的でトランスするくらい反復性の強い名曲なのだがこれをこのOb+Vnで聴いてもやはり求道的であり、寧ろ微細で超高速パッセージを操るポッジャーのこの演奏のほうが反復性が強いかもしれない。ここがこのアルバムの峠の一つ。
BWV1064Rは、3台のチェンバロ用として親しまれている曲の復元版で、愛らしくノーブルな1楽章第1主題、並びに3楽章がとても印象的な名作。だが、BWV1065と同様、バッハのオリジナル旋律ではないとの見方が有力だ。だが、この短くも綺麗な主テーマをこういった具合に巧みに協奏曲に仕立てるところがバッハの真骨頂。伸びやかで屈託が全くないポッジャー/ヨハネス・プラムゾーラー/ボヤン・チチッチの3挺のVnの溶け合いは素晴らしいの一言だ。(なお、Vivaldi: L'estro Armonico(ヴィヴァルディ:調和の幻想)Op.3-10から旋律を拝借した4台のCemのためのコンチェルトBWV1065は収録されていない。というか、4台のチェンバロ用以外の編曲で、例えば4挺のVn用に逆編曲されたものが存在するのかどうかも知らないのだが・・)
全てのトラックの演奏は極めて高度な技法に立脚し、かつレイショナルな解釈であって文句のつけようがないくらい良い出来栄え。ダブル&トリプルのコンチェルト・シリーズの一つの頂点として持っていて価値ある一枚だ。
(録音評)
Channel Classics、CCS SA 34113、SACDハイブリッド。録音は2012年10月、場所は第1集と同じくロンドンのセント・ジョン・エヴァンジェリスト教会とある。これまた素晴らしい音質の録音であり、今回は更に深く展開する音場、ソリストの立ち位置までもが見え透くような立体的な距離感と臨場感が堪らない現代的な三次元録音と言える。機材だが、マイクDPA-4006+Schoeps、DSD ADCはGrimm Audio、レコーダーPyramixとある。DPA-4006は元々は計測用マイクロフォンで有名なB&Kの製品系列を引き継いだ現代クラシック録音では定番中の定番マイクだが、このアルバムでは、ネーティブDSD録音とも相俟ってその実力がまざまざと見せつけられるのだ。バロック室内楽録音としては現時点で世界ナンバーワンと言っても過言ではないアルバムとなっている。
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