Rachmaninov: Moments Musicaux Op.16, P-Sonata#2 Etc.@Evgenia Rubinova |
http://tower.jp/item/3081731/
Evgenia Rubinova plays Rachmaninov
Rachmaninov:
Moments Musicaux, Op.16
Piano Sonata No.2 in B flat minor, Op.36
Kreisler:
Liebesfreud arr. by Rachmaninov
Liebesleid arr. by Rachmaninov
Evgenia Rubinova (Pf)
ラフマニノフ:
1. 楽興の時 Op.16
2. ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 Op.36
クライスラー:
3. 愛の悲しみ
4. 愛の喜び
エフゲニア・ルビノヴァ(Pf)
ルビノヴァは1977年、ウクライナのタシケント(現:ウズベキスタン共和国)出身のピアニストで、音楽一家に生まれ育った彼女は幼少の頃からその非凡な才覚を現わしていた。コンサートデビューは12歳の頃という。国内賞をいくつも獲得した後、モスクワに移ってピアノの名門グネーシン音楽大学を卒業。1999年からフランクフルトに居を移してドイツ国籍を取得、西欧側で活動を開始している。彼女をスターダムに押し上げたのはなんといっても2003年のリーズ国際で銀賞を獲得したことで、それ以来、欧米で活発な活動を続けているし、来日公演も果たしているようだ。残念ながら聴いてはいないが。
このアルバムの録音は2004年と意外に古く、リマスタされたのが2011年というから随分と間があいている(2004年というとリーズ国際で銀賞に輝いた翌年)。録音年代は今から10年ほど昔なのであるが古臭さは微塵も感じられない。ひとことで言うと、非常に濃厚かつ稠密なラフマニノフなのだ。これほどに重厚感のあるラフマニノフは久しぶりだ。
楽興の時はいくつか手元にあるが、重厚さと暗さという点においては随一で、しかも描き込みが非常に深く、襞の一本一本にまで細心の注意を払った丹念にしてスケールの大きな構図である。重厚で暗いけれども鈍重ではなく、寧ろ超絶技巧がそこかしこに垣間見られてただならぬ楽興の時となっているのだ。もうちょっと鷹揚な構えでも良い気もするが、これが彼女の個性なのだと思われる。
Pソナタは重厚というよりも硬質で隙の無いハイスピードな演奏設計であり、とても高速な指回りと強靭な腕力がこの演奏の特徴となっている。勿論、翳りの部分においては楽興の時の緩徐部と同様の丹念でどっぷりと深い描き込みが展開され、これは瞑想的ともいうべき情感移入が白眉。ラフマニノフのPソナタは表層的・テクニカルな技巧だけでは巧く弾きこなせないが、ルビノヴァのエモーション・コントロールは素晴らしく、思わず聴き入ってしまう魔力を持ったピアニズムなのだ。勿論、超絶技巧が随所で炸裂し、高度なヴィルトゥオージティに満ちた愉悦が同時に味わえることも付記しておく。
最後にフィラーとして入っているクライスラー(ラフマニノフ編)の2題は、ラフマニノフのような陰のある演奏とは正反対で、陽性かつ軽量の肩の力を抜いた解釈となっていて非常に楽しめるものとなっている。ここでも彼女の超絶技巧が大いに炸裂し、ダイナミックで煌びやか、明媚な和声展開に息を飲むのだ。クライスラーは大人しくて割と平坦・平凡におっとりとした展開を楽しむための小品である、という常識からはかなりかけ離れた、つまり事大がかったオーバーアクション気味の演奏を良しとするか否かで好みの分かれるところではあるが。
ルビノヴァは今年で36歳というからコンサート・ピアニストとしてはまさにこれからが第2の成長期ということになる。いずれにせよピアノ演奏においては非凡な才覚を持っており、今後それをどう生かし、どう伸ばし、どういった活動を展開してくるかが楽しみである。
(録音評)
Avi Music 8553249、通常録音。録音は2004年、ドッビアーコ(イタリア)、リマスタは2011年とある。音質は重量感と切れのあるLPCMの典型で、演奏内容と同期するような仄暗さが基底をなす分厚いピラミッド・バランスを形成している。今風の超高解像度三次元PCM録音ではないが、これはこれで地味ながら良い音質の録音であり、聴き疲れもせず長時間バックに流しておくには適する音質である。
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