Fauré: Requiem Etc@Nigel Short/LSO Chamber Ensemble |
http://tower.jp/item/3162961/
J.S.Bach: Partita for solo violin No.2 in D minor, BWV1004
Chorale - Ach Herr, las dein lieb Engelein
Partita - Allemande
Partita - Courante
Chorale - Christ lag in Todesbanden
Partita - Sarabande
Chorale - Den Tod niemand zwingen kunnt
Partita - Gigue
Chorale - Wenn ich einmal soll scheiden
Partita - Ciaconna (ed. Prof. Helga Thoene)
Gabriel Fauré
Requiem, Op.48 (1893 version, ed. John Rutter)
Gordan Nikolitch(Vn), Grace Davidson(Sop), William Gaunt(Bar)
James Sherlock(Org)
Tenebrae
London Symphony Orchestra Chamber Ensemble
Nigel Short(Cond)
・J.S.バッハ: 無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番ニ短調BWV1004、ルターのコラール集
ああ 主よ、あなたの愛しい天使に命じて(ヨハネ受難曲BWV245)
パルティータ第2番:アルマンド
パルティータ第2番:クーラント
キリストは死の縄目につながれたり(BWV4)
パルティータ第2番:サラバンド
死に打ち勝てる者は絶えてなかりき(BWV4)
パルティータ第2番:ジーグ
いつの日かわれ去り逝くとき(マタイ受難曲BWV244)
シャコンヌ[ヘルガ・テーネのレアリゼーションによる、ヴァイオリンと4声のコーラスのための]
・フォーレ: レクィエム
ゴルダン・ニコリッチ(ヴァイオリン)
グレース・デイヴィッドソン(ソプラノ)
ウィリアム・ゴーント(バリトン)
テネブレ合唱団
ナイジェル・ショート(指揮)ロンドン交響楽団室内アンサンブル
このアルバムの合唱を担うのはテネブレといい、このSACDの指揮を務めるナイジェル・ショートが創立・主宰する気鋭の合唱団だ。テネブレ tenebres とは、カトリックにおける復活祭の前の週の聖木・金・土曜日の3日間に行なう朝課・賛課のこと(キリストの受難と死を記念して行なわれる)。この時に使われる歌詞をルソン・ド・テネブレといい、これに旋律を付けたクープラン、ド・ラランドの同名の作品が有名。なお、ナイジェル・ショートはキングズ・シンガーズの元メンバーだった人物で、現在では英国合唱楽壇では著名な人物だそうだ。
輸入元のキングインターによれば以下の通り、この録音は"シティ・オブ・ロンドン・フェスティバル"と呼ばれる音楽祭で大好評を博したプログラムの再現録音だそうで、どうりで演出豊かで楽しめる内容となっているわけだ。
2011年6月、テネブレとLSO選抜メンバーによる室内アンサンブルは「シティ・オブ・ロンドン・フェスティバル」に出演、セント・ポール大聖堂でのコンサートは大成功を収めました。これはその翌年2012年5月に、すぐれた音響で知られるセント・ジャイルズ・クリップルゲイト教会でおこなわれた同一プログラム再演の模様をライヴ収録したものです。
このSACDハイブリッドのメインディッシュはフォーレのレクイエムであることは疑う余地はないのであるが、その前座のバッハ編曲作品が余りにユニークかつ聴き応えのあるものであったため、この前半パートを何度も何度も反芻して聴いてしまい、なかなか本題に取り掛かれなかった。この前半部は、最近とみに増えてきたミルフィーユ状で交互積層型の構成をとっていて、無伴奏VnパルティータBWV1004を題材にしたものを聴くのは初めてだった。アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグ、シャコンヌと並んだVn独奏楽章に、歌唱を伴う教会カンタータやコラールを挟み込む格好となっている。歌曲のほうは非常に細密、落ち着いた感じで好感度は大きい。
一方、ソロVnのほうはLSOのコンサートマスターを務めるゴルダン・ニコリッチという人が弾いている。これは通常のバッハの無伴奏というよりは現代風に叙情豊かにアレンジした変奏と考えたほうがよい内容だ。後刻、ニコリッチについて調べてみたら、ジャン・ジャック・カントロフに師事したとあって、なるほど豊かなヴィブラートだし、一級のヴィルトゥオージティを備えていたのであった。
メインのレクイエムだが、これは相当ハイレベルな出来栄えで、今までのLSOの常識を覆す精緻で正確、しかも密度感も空間感も申し分のない出来栄えだ。最初の出足から広大な音場が広がってそして、厳かだけれどもすっきりとオケが入り、そしてコーラスが重畳されてくる。この曲においてはキー・ポジションとなるグレース・デイヴィッドソン(Sop)の声が非常に秀逸であり、これはなかなかに反復性のある美しい歌唱だ。このソプラノはコルボ/ローザンヌのアナ・クインタンスやエキルベイ/アクセンタスにおけるサンドリーヌ・ピオーに匹敵する美声かつ極度に安定した音程であって、今世紀におけるフォーレのPie Jesu(ピエ・イェズ)としては最高峰のうちの一つではないだろうか。
勿論、一つ前のSanctus(サンクトゥス)も、後に続くAgnus Dei(アニュス・デイ)も出来としては素晴らしくて申し分ない。また、オケのサポートがLSOの精選メンバーらしく非常に優れており、静謐で淀みなく、かつ破綻どころか一点の曇りもないコヒーレンスを達成しているのだ。LSOは最大規模になるとアインザッツやリリースで滲みが増えて統率が難しそうなオケであるが、中規模アンサンブルの演奏においてはさすがに技術的に巧い人が揃っているということを改めて再認識させられた思い。
LSOは、非常に惜しいことに主柱=コリン・デイヴィスを失ってしまったが、彼はこういったシュアなオケを育てたかったのであろうと想像する。そして、この録音の出来栄えを更に完璧なものにしているのがテネブレの歌唱の正確無比かつ地味ながら真摯で固い謳いにある。アクセンタスのような馥郁たる香りや、ローザンヌのような牧歌的で屈託のない伸びやか、自由な発露もないのであるが、このテネブレの歌唱はある意味いままで橋頭堡を築いてきた世界規模で活躍する主要アンサンブル・コーラス隊に対する挑戦と言えるかもしれない。今後注視すべきコーラス隊だと思う。
(録音評)
LSO Live LSO0728、SACDハイブリッド。録音は2012年5月ロンドン、セント・ジャイルズ・クリップルゲイト教会ある。例によって担当はClassic Sound Limitedの手により、プロデューサー:ジェイムズ・マリンソン、エンジニア:ジョナサン・ストークス&ニール・ハッチンソンという布陣。音質は従来のLSO Liveの優秀録音の系譜の延長線上にある出来栄えで、とりわけ透明度が高く音場展開が幅広くかつ奥深い。更にソリストやアンサンブルの主要パートが発するビームが鋭く前方へ照射されて臨場感は抜群だ。いわゆる今風の三次元立体音場を作る3D型の録音である。レコーディングはネーティブなDSDではなくてハイビット/ハイサンプリングのPCMであろう。硬質ながら鮮烈で実像感が強く、とても優れた現代を代表する最高峰の録音となっている。CDレイヤーにおいては音場展開が多少曖昧になるものの基本線はSACDレイヤーと変わらず、こちらも巧妙なマッピング技術が生きていて優秀だ。
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