2012年 08月 05日
Martha Argerich and Friends: Live from the Lugano Festival 2011 Disc 2 |
前回の続きでルガノ2011の二枚目。ここでのアルゲリッチは冒頭に入れたコンチェルト・パセティークを連弾で弾いていて、後の二つには登場しない。が、この冒頭はかなり強烈な印象の演奏であり、全体の機運を支配するだけの迫力だ。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/5018988
Disc 2
Liszt: Concerto pathetique in E minor for two pianos, S258
Lilya Zilberstein(Pf), Martha Argerich(Pf)
Rachmaninov: Trio élégiaque No.1 in G minor, Op.post.
Denis Kozhukhin(Pf), Renaud Capucon(Vn), Yan Levionnois(Vc)
Shostakovich: Moscow-Cheryomushki, Op.105
arr. by Andrew Cornall and transcribed for 3 pianos by C.M. Griguoli
Giorgia Tomassi(Pf), Carlo Maria Griguoli(Pf), Alessandro Stella(Pf)
CD2
・リスト:悲愴協奏曲ホ短調 R.356
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
リーリャ・ジルべルシュテイン(ピアノ)
・ラフマニノフ:ピアノ三重奏曲第2番ニ短調 Op.9
デニス・コジュヒン(ピアノ)
ルノー・カプソン(ヴァイオリン)
ヤン・ルヴィノワ(チェロ)
・ショスタコーヴィチ:モスクワのチェリョムーシカ Op.105
(Arranged by Andrew Cornall, transcribed by C.M.Griguoli for 3 pianos)
ジョルジア・トマッシ(ピアノ)
カルロ・マリア・グリグオーリ(ピアノ)
アレッサンドロ・ステッラ(ピアノ)
ピアノ連弾曲ではあるがコンチェルトと銘打たれたこの曲は、元々は1850年作曲のGrand Solo de Concert S.176(演奏会用大独奏曲ホ短調)が原曲であり、その後の小改訂を経て1865年に2台4手用へと編曲して作られた大規模作品。さらにここからPコンS.365が導かれたとされている。一般には単一楽章形式とされているが、その内部構造は敷居の低いパートに分割されていることから1853年作のロ短調ソナタと酷似した形態であり、いくつかの主題が循環して出現する点においてもロ短調ソナタと似たフレーバーとなっている。連弾とは言えこんな大きな曲をアルゲリッチが超若々しく、そして臆面もなく弾いているとはちょっと驚き。こういった連弾曲は日常におけるコンサート/リサイタルで弾かれる機会はまずなく、こういった複数のピアニストが集う音楽祭ならではのプログラムと言えよう。曲自体は大規模で豪華かつ重層感溢れるものだ。アルゲリッチと組んでいるのはロシアの中堅・リーリャ・ジルべルシュテインだが、この二人の息はぴたりとは合っておらず少々ずれ気味だ。つまり、どのパートを誰が弾いているのかは定かではないが、後拍気味に引きずる感じの弾き方とストレートに突き進む弾き方が終始要所で衝突する傾向があって輪郭はちょっと暈けているし、些細だがミスタッチが目立った演奏だ。だが、ライブならではの緊迫した掛け合いと独特の荒れたアーティキュレーションが臨場感をそそる。
ラフのピアノトリオ2番は欧題ではTrio élégiaqueとされていて、これを直訳して「悲しみの三重奏曲」と呼ばれることもある。この作品にはモチーフとなった元の作品がある。これはやはりTrio élégiaqueと呼ばれていて冒頭のリストの作品と同様に単一楽章の合奏曲、しかもモスクワ音楽院時代の習作とされる。因みにこの習作がピアノトリオ1番とされ本作の2番と区別されているようだ。物悲しくも落ち着いた、そして美しく儚い旋律が特徴となる傑作だ。切々とした2挺の弦を哀調漂うピアノが下支えする重厚な作品であり、途中で明転する場面もあるが基本は悲歌であって、聴くものを圧倒する野太い慟哭がとても印象的な典型的なラフマニノフの音型と言える。朗々と語り続けるヤン・ルヴィノワのVc、啜り泣きながらも訥々とした語り口のルノー・カプソンのVnは秀逸。
最後に入っているモスクワのチェリョムーシカは初めて聴く曲だ。因みにショスタコが残した唯一のオペレッタで、この中から抜粋し、更に3台のピアノ用に編曲したものらしい。このオペレッタはドタバタ系の喜劇らしくて、面白可笑しく愉快な旋律が散りばめられており、例えばジャズ用や吹奏楽(ビッグバンド)用にも広くアレンジされているようだ。これの3台ピアノ版ということであり絢爛豪華、かつ超絶技巧的な眩いピアニズムがそこかしこに炸裂している。ピアノの音とピアニストのテクニックを理屈抜きで楽しみたいものだ。
(続く)
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Liszt: Concerto pathetique in E minor for two pianos, S258
Lilya Zilberstein(Pf), Martha Argerich(Pf)
Rachmaninov: Trio élégiaque No.1 in G minor, Op.post.
Denis Kozhukhin(Pf), Renaud Capucon(Vn), Yan Levionnois(Vc)
Shostakovich: Moscow-Cheryomushki, Op.105
arr. by Andrew Cornall and transcribed for 3 pianos by C.M. Griguoli
Giorgia Tomassi(Pf), Carlo Maria Griguoli(Pf), Alessandro Stella(Pf)
CD2
・リスト:悲愴協奏曲ホ短調 R.356
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
リーリャ・ジルべルシュテイン(ピアノ)
・ラフマニノフ:ピアノ三重奏曲第2番ニ短調 Op.9
デニス・コジュヒン(ピアノ)
ルノー・カプソン(ヴァイオリン)
ヤン・ルヴィノワ(チェロ)
・ショスタコーヴィチ:モスクワのチェリョムーシカ Op.105
(Arranged by Andrew Cornall, transcribed by C.M.Griguoli for 3 pianos)
ジョルジア・トマッシ(ピアノ)
カルロ・マリア・グリグオーリ(ピアノ)
アレッサンドロ・ステッラ(ピアノ)
ピアノ連弾曲ではあるがコンチェルトと銘打たれたこの曲は、元々は1850年作曲のGrand Solo de Concert S.176(演奏会用大独奏曲ホ短調)が原曲であり、その後の小改訂を経て1865年に2台4手用へと編曲して作られた大規模作品。さらにここからPコンS.365が導かれたとされている。一般には単一楽章形式とされているが、その内部構造は敷居の低いパートに分割されていることから1853年作のロ短調ソナタと酷似した形態であり、いくつかの主題が循環して出現する点においてもロ短調ソナタと似たフレーバーとなっている。連弾とは言えこんな大きな曲をアルゲリッチが超若々しく、そして臆面もなく弾いているとはちょっと驚き。こういった連弾曲は日常におけるコンサート/リサイタルで弾かれる機会はまずなく、こういった複数のピアニストが集う音楽祭ならではのプログラムと言えよう。曲自体は大規模で豪華かつ重層感溢れるものだ。アルゲリッチと組んでいるのはロシアの中堅・リーリャ・ジルべルシュテインだが、この二人の息はぴたりとは合っておらず少々ずれ気味だ。つまり、どのパートを誰が弾いているのかは定かではないが、後拍気味に引きずる感じの弾き方とストレートに突き進む弾き方が終始要所で衝突する傾向があって輪郭はちょっと暈けているし、些細だがミスタッチが目立った演奏だ。だが、ライブならではの緊迫した掛け合いと独特の荒れたアーティキュレーションが臨場感をそそる。
ラフのピアノトリオ2番は欧題ではTrio élégiaqueとされていて、これを直訳して「悲しみの三重奏曲」と呼ばれることもある。この作品にはモチーフとなった元の作品がある。これはやはりTrio élégiaqueと呼ばれていて冒頭のリストの作品と同様に単一楽章の合奏曲、しかもモスクワ音楽院時代の習作とされる。因みにこの習作がピアノトリオ1番とされ本作の2番と区別されているようだ。物悲しくも落ち着いた、そして美しく儚い旋律が特徴となる傑作だ。切々とした2挺の弦を哀調漂うピアノが下支えする重厚な作品であり、途中で明転する場面もあるが基本は悲歌であって、聴くものを圧倒する野太い慟哭がとても印象的な典型的なラフマニノフの音型と言える。朗々と語り続けるヤン・ルヴィノワのVc、啜り泣きながらも訥々とした語り口のルノー・カプソンのVnは秀逸。
最後に入っているモスクワのチェリョムーシカは初めて聴く曲だ。因みにショスタコが残した唯一のオペレッタで、この中から抜粋し、更に3台のピアノ用に編曲したものらしい。このオペレッタはドタバタ系の喜劇らしくて、面白可笑しく愉快な旋律が散りばめられており、例えばジャズ用や吹奏楽(ビッグバンド)用にも広くアレンジされているようだ。これの3台ピアノ版ということであり絢爛豪華、かつ超絶技巧的な眩いピアニズムがそこかしこに炸裂している。ピアノの音とピアニストのテクニックを理屈抜きで楽しみたいものだ。
(続く)

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by primex64
| 2012-08-05 22:36
| Compilation
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