2012年 07月 24日
Beethoven: Sym#9@Jan Willem de Vriend/Netherlands SO. |
Challenge Classicsの春の新譜でベト9合唱、SACDハイブリッドだ。かなり前に買って好印象を持っていたCDであるが、オフ会にてこれに興味を持った人に貸し出していた関係で今頃になって書いている。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/4941819
Beethoven: Symphony No. 9 in D minor, Op.125 'Choral'
Annemarie Kremer(sop), Wilke te Brummelstroete (alt),
Marcel Reijans(ten) & Geert Smits(bari)
Consensus Vocalis(Choir)
Netherlands Symphony Orchestra / Jan Willem de Vriend
ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調 op.125 合唱
アンマリー・クレメール(ソプラノ)、ウィルケ・テ・ブルンメルストローテ(アルト)、
マルセル・レイヤン(テノール)、ゲールト・スミッツ(バリトン)
コンセンサス・ヴォーカリス(合唱)
ネザーランド交響楽団(ヘット・オーステン管弦楽団)
ヤン・ヴィレム・デ・フリエンド(指揮)
かなり新機軸の第九であり、このような演奏は余り聴いたことはない。良いのか悪いのかと問われれば、かなり良い、と答えるしか方法がない解釈/演奏であり、これはどういった所に由来しているのであろうか。
指揮を執るフリエンドは、アンシェント楽器による古楽アンサンブルであるCombattimento Consort Amsterdamのリーダーであり、またVn奏者でもあってバロック期からの音楽形態をずっと追究してきた人物だそうだ。そういわれると、この第九は1楽章から贅肉を削ぎ落としたハイスピードで求道的なリチェルカーレのような構築スタイルであり、とにもかくにも高速で卒なく疾風のように爽やかに駆け抜けていく。
全般的には強弱方向よりも時間軸方向の揺らぎ、即ち多彩なアゴーギクによる独自のアーティキュレーションはバッハの時代のチェンバロ組曲的なアプローチであって、ベートーヴェンの交響曲、取り分け第九の演奏にこれが取り入れられているのは珍しいと思う。1~3楽章は独特のリズム感に乗ってさらさらと流れていくが、最終章に入って声楽が乗ってくるまでは前楽章までと同様、爽やかな流れ方だ。そして混声合唱と独唱が合流してからは疾駆感を少々抑えてインテンポなリードに変わり、過度な情感移入は避けつつも、小さな起伏を幾つも積み重ねながら大きなうねりを形成していくという手法だ。
第九の合唱部といえば大概は熱気と迫力を前面に押し出し、とにかく陽の面を徹底的に抉って露出するというのが常套手段だが、このフリエンドの解釈はそうではない。主旋律を張る独唱また合唱を陽とするならば、下を支えるオケは対旋律にあたり、そして陰なのである。しかし、この陰の部分にこそフリエンドの解釈上の真骨頂がある。つまり、シラーの歌詞付き旋律とオケによる伴奏は対等の立場であって、縄を編む行程に似ている。つまり、何本かの紐が等しく捩られて一本の太い縄に編み上がっていく過程を見ているようなものなのだ。この様子はそう、伝統的な対位法に模した表現であって、各々陰陽を成す旋律要素が時間軸方向に沿って様々な角度で嵌合する技法なのだ。中間部からコーダに掛けては独特の韻を踏んでいて、マーチ部からずっと背景に連続する規則的な、そして小さく跳躍するようなポップなリズムを伴った歩の進め方だ。この辺りはヴァンスカ/ミネソタ管の第九の終楽章に似たところがある。勿論、ヴァンスカほどの確信犯ではないにせよ。
この第九、とにもかくにもフリエンドの新しい試みを含む新鮮で冷涼感溢れる演奏となっていて楽しい一枚。ネザーランド響はフェザータッチの弦楽隊を擁する超技巧派集団であって限りなく透明で破綻のない演奏を聴かせてくれる。
(録音評)
Challenge Classics、CC72533、SACDハイブリッド。録音は2011年7月12~19日、場所はMuziekcentrum Enschede(NL)とある。録音担当は、Bert van der Wolf率いるNorthStar Recording社で、超低歪のSonodore社製マイクロフォン、dCSのDSD/DXDコンバータを駆使する超Hi-Fi録音を得意とする技術者集団だ。音質はDSD特有の球面構成の音場展開が特徴となり、楽音の正確さ、響きの肌合いのリアルさと、どこをとっても超一級の録音で、これこそがSACDフォーマットを最大限に生かした録音と言っても過言ではない。まさに新世代の超高音盤なのだ。
※この第九はフリエンド/ネザーランドSOのベト響チクルスのコンプを飾る盤だが、なぜか、この第九を含む全集ボックスも同時リリースされた。これがまた格安の価格設定であり驚いてしまう。新譜リリースのたびに一枚ずつ楽しんで買い揃えてきたファンの中には臍(ほぞ)を噛んでいる人がいるのではないか。
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♪ よい音楽を聴きましょう ♫

http://www.hmv.co.jp/product/detail/4941819
Beethoven: Symphony No. 9 in D minor, Op.125 'Choral'
Annemarie Kremer(sop), Wilke te Brummelstroete (alt),
Marcel Reijans(ten) & Geert Smits(bari)
Consensus Vocalis(Choir)
Netherlands Symphony Orchestra / Jan Willem de Vriend
ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調 op.125 合唱
アンマリー・クレメール(ソプラノ)、ウィルケ・テ・ブルンメルストローテ(アルト)、
マルセル・レイヤン(テノール)、ゲールト・スミッツ(バリトン)
コンセンサス・ヴォーカリス(合唱)
ネザーランド交響楽団(ヘット・オーステン管弦楽団)
ヤン・ヴィレム・デ・フリエンド(指揮)
かなり新機軸の第九であり、このような演奏は余り聴いたことはない。良いのか悪いのかと問われれば、かなり良い、と答えるしか方法がない解釈/演奏であり、これはどういった所に由来しているのであろうか。
指揮を執るフリエンドは、アンシェント楽器による古楽アンサンブルであるCombattimento Consort Amsterdamのリーダーであり、またVn奏者でもあってバロック期からの音楽形態をずっと追究してきた人物だそうだ。そういわれると、この第九は1楽章から贅肉を削ぎ落としたハイスピードで求道的なリチェルカーレのような構築スタイルであり、とにもかくにも高速で卒なく疾風のように爽やかに駆け抜けていく。
全般的には強弱方向よりも時間軸方向の揺らぎ、即ち多彩なアゴーギクによる独自のアーティキュレーションはバッハの時代のチェンバロ組曲的なアプローチであって、ベートーヴェンの交響曲、取り分け第九の演奏にこれが取り入れられているのは珍しいと思う。1~3楽章は独特のリズム感に乗ってさらさらと流れていくが、最終章に入って声楽が乗ってくるまでは前楽章までと同様、爽やかな流れ方だ。そして混声合唱と独唱が合流してからは疾駆感を少々抑えてインテンポなリードに変わり、過度な情感移入は避けつつも、小さな起伏を幾つも積み重ねながら大きなうねりを形成していくという手法だ。
第九の合唱部といえば大概は熱気と迫力を前面に押し出し、とにかく陽の面を徹底的に抉って露出するというのが常套手段だが、このフリエンドの解釈はそうではない。主旋律を張る独唱また合唱を陽とするならば、下を支えるオケは対旋律にあたり、そして陰なのである。しかし、この陰の部分にこそフリエンドの解釈上の真骨頂がある。つまり、シラーの歌詞付き旋律とオケによる伴奏は対等の立場であって、縄を編む行程に似ている。つまり、何本かの紐が等しく捩られて一本の太い縄に編み上がっていく過程を見ているようなものなのだ。この様子はそう、伝統的な対位法に模した表現であって、各々陰陽を成す旋律要素が時間軸方向に沿って様々な角度で嵌合する技法なのだ。中間部からコーダに掛けては独特の韻を踏んでいて、マーチ部からずっと背景に連続する規則的な、そして小さく跳躍するようなポップなリズムを伴った歩の進め方だ。この辺りはヴァンスカ/ミネソタ管の第九の終楽章に似たところがある。勿論、ヴァンスカほどの確信犯ではないにせよ。
この第九、とにもかくにもフリエンドの新しい試みを含む新鮮で冷涼感溢れる演奏となっていて楽しい一枚。ネザーランド響はフェザータッチの弦楽隊を擁する超技巧派集団であって限りなく透明で破綻のない演奏を聴かせてくれる。
(録音評)
Challenge Classics、CC72533、SACDハイブリッド。録音は2011年7月12~19日、場所はMuziekcentrum Enschede(NL)とある。録音担当は、Bert van der Wolf率いるNorthStar Recording社で、超低歪のSonodore社製マイクロフォン、dCSのDSD/DXDコンバータを駆使する超Hi-Fi録音を得意とする技術者集団だ。音質はDSD特有の球面構成の音場展開が特徴となり、楽音の正確さ、響きの肌合いのリアルさと、どこをとっても超一級の録音で、これこそがSACDフォーマットを最大限に生かした録音と言っても過言ではない。まさに新世代の超高音盤なのだ。
※この第九はフリエンド/ネザーランドSOのベト響チクルスのコンプを飾る盤だが、なぜか、この第九を含む全集ボックスも同時リリースされた。これがまた格安の価格設定であり驚いてしまう。新譜リリースのたびに一枚ずつ楽しんで買い揃えてきたファンの中には臍(ほぞ)を噛んでいる人がいるのではないか。

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by primex64
| 2012-07-24 00:23
| Symphony
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