2012年 05月 21日
Mahler: Sym#1@François-Xavier Roth/SWR Baden-Baden |
ヘンスラーの新譜で、SWRバーデン=バーデンの新たな主席指揮者に就任したフランソワ=グザヴィエ・ロトの一般お披露目ライブの模様から。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/4915641
Mahler: Symphony No. 1 in D major 'Titan'
Webern: Im sommerwind (Idyl for large orchestra) (1904)
Sinfonieorchestre Baden-Baden und Freiburg, François-Xavier Roth
・マーラー:交響曲第1番ニ長調『巨人』
・ヴェーベルン:夏風のなかで
バーデン=バーデン&フライブルクSWR交響楽団(南西ドイツ放送交響楽団)
フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮)
このマーラー巨人を含むプログラムは、2011年9月ドナウ・エッシンゲン音楽祭が開催中にSWRの本拠地=フライブルク・コンツェルトハウスでとりおこなわれたロトの首席就任演奏会でも演奏されたものだそうで、この録音はその直後、10月末~11月にかけて開催されたお披露目演奏会での模様だ。なんともマーラーに拘りが見えるデビューであり、今後、ロトがSWRとマーラー・チクルスを録っていく布石との意味合いがあるやに個人的には感じている。同じSWRでもシュトゥットガルトのマーラー・チクルスといえばノリントンがやっていたものが特徴的で記憶に残っている。オケは異なるが、同じ南西ドイツ・サウンドということでノリントンSWRの巨人と聴き比べてみるのも一興だ。
最初に針を降ろして聴いたとき失敗したかと思った。それは、何ともやる気を感じさせない1楽章のモチーフ~第1主題、そして展開部からコーダにかけての平面的で平坦な歩の進め方にはジンマン/TOZの低エナジー感に通じるものを嗅ぎ取ったからだ。2楽章のスケルツォは多少ポップなのだがやはりメリハリという点では並み居る強豪の演奏とはフレーバーが異なる。そして緩徐楽章へと入るが、ここは逆にしっとりとした丹念な描き込みが明確な強点となっていてぐっと来るものがある。そしてフィナーレなのだが、硬質スティックを使ったツイン・ティンパニおよび大口径グランカッサが乾いた皮の衝撃波を縦横に放散するところが特徴だ。そして一気のアチェレランドと思いきや、抑制的で個を廃した如くの冷静沈着なバトン捌きがステージを支配し、理性的でエナジー感の低い進行が続くのだ。割と淡々とした盛り上がりとプツンと切れたようなコーダ、そして呆気ない終わり方・・。やはり失敗したかと思った。
ところが、数時間経ってから何故かもう一度聴いてみたいと思った。そして頭に戻しふたたび再生した。最初と余り変わらない印象を持つが、すっきりした解釈は悪くはない。濃密で美しいブーレーズや鋭敏で鮮やかなMTT、ざらついて野性的なゲルギエフ、更には古いコンドラシンやテンシュテットの渋くテンペラメンタルな解釈が脳裏を過(よ)ぎる。それら過去の名演とされるものと頭内で比較考量しつつ聴いても特徴がないのであるが、このロトのマーラーは何故かすんなりと聴覚を経由して頭脳に入ってくる演奏設計なのである。理由は明確ではないが反芻して聴けば聴くほど癖のない平坦さが寧ろ快感へと変わっていくのである。
演奏技巧的には伝統的なVPOやBPO、また現代的なCSOやSFSO及びフィラデルフィア、昨今では鮮烈なテクニックで売り出し中のマーラー室内管などには比肩できないと思われる地味系な出来なのであるが、なんとも田舎風で素朴な取り組みが好感できる演奏であり、そういったオケの特性も相俟ってロトのストレートで飾らない解釈とリードは厚塗りマーラー/鮮烈マーラーの時代にあっては貴重なのかも知れない。毒々しいほど美味しい演奏はパフォーマンス的には魅惑的であって頭初の感動は深いものの、実は飽きが来るのも早くリピート率は低いと言えるかもしれない。しかし、このロトの演奏は反復して鑑賞することにより聴き所をきめ細かく再発見させられるという別の魅力を持った演奏であることに気が付かされるのだ。
過去のマーラー巨人の名演を挙げろ、と言われれば今であればMTT/SFSO、伝統的にはショルティCSOやバーンスタインNPOを推すかも知れないが、個人的に聴きたい演奏はそれらとは大概は異なるのだ。しかも時と場合によりフェイヴァリットは変化するものだ。マーラーの交響曲は独創的でワン・アンド・オンリーの魅力を帯びた作風の連作であるが、演奏する側のバリエーションもかなり多くて相当に楽しめるジャンルであることを再認識させられた一枚であった。
(録音評)
Hänssler 93294、通常CD。録音は2011年10月29日、11月2,3日、場所はフライブルクのコンツェルトハウスとある。演奏内容と同様に音質的にも腰高で外したかと思ったのであるが、反復して再生するうちにみるみる変貌を遂げ、今やヘンスラーのCD-DA(通常CD)としては最右翼の超高音質と言える。この前のシモーネ・ヤングのエームズ盤も凄かったが、このヘンスラーの巨人の音質は更に洗練されていて、しかもアーティスティックな薫りをまとったコンツェルトハウスの残響が美しく漂い、全体の楽音で絶妙なピラミッド・バランスを達成している。器楽配列がそのまま俯瞰できて、かつ奏者一人一人の息遣いまでもが捉えられている臨場感も格別だ。収録自体はハイビット/ミディアム・サンプリングPCMと思われるのだが空間感にはDSDっぽいところが感じられる。どうやら、SACDハイブリッドを得意としている高音質レーベルが通常CD-DA単層盤で堂々と勝負を仕掛けるのがこのところの流行のようだ。
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http://www.hmv.co.jp/product/detail/4915641
Mahler: Symphony No. 1 in D major 'Titan'
Webern: Im sommerwind (Idyl for large orchestra) (1904)
Sinfonieorchestre Baden-Baden und Freiburg, François-Xavier Roth
・マーラー:交響曲第1番ニ長調『巨人』
・ヴェーベルン:夏風のなかで
バーデン=バーデン&フライブルクSWR交響楽団(南西ドイツ放送交響楽団)
フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮)
このマーラー巨人を含むプログラムは、2011年9月ドナウ・エッシンゲン音楽祭が開催中にSWRの本拠地=フライブルク・コンツェルトハウスでとりおこなわれたロトの首席就任演奏会でも演奏されたものだそうで、この録音はその直後、10月末~11月にかけて開催されたお披露目演奏会での模様だ。なんともマーラーに拘りが見えるデビューであり、今後、ロトがSWRとマーラー・チクルスを録っていく布石との意味合いがあるやに個人的には感じている。同じSWRでもシュトゥットガルトのマーラー・チクルスといえばノリントンがやっていたものが特徴的で記憶に残っている。オケは異なるが、同じ南西ドイツ・サウンドということでノリントンSWRの巨人と聴き比べてみるのも一興だ。
最初に針を降ろして聴いたとき失敗したかと思った。それは、何ともやる気を感じさせない1楽章のモチーフ~第1主題、そして展開部からコーダにかけての平面的で平坦な歩の進め方にはジンマン/TOZの低エナジー感に通じるものを嗅ぎ取ったからだ。2楽章のスケルツォは多少ポップなのだがやはりメリハリという点では並み居る強豪の演奏とはフレーバーが異なる。そして緩徐楽章へと入るが、ここは逆にしっとりとした丹念な描き込みが明確な強点となっていてぐっと来るものがある。そしてフィナーレなのだが、硬質スティックを使ったツイン・ティンパニおよび大口径グランカッサが乾いた皮の衝撃波を縦横に放散するところが特徴だ。そして一気のアチェレランドと思いきや、抑制的で個を廃した如くの冷静沈着なバトン捌きがステージを支配し、理性的でエナジー感の低い進行が続くのだ。割と淡々とした盛り上がりとプツンと切れたようなコーダ、そして呆気ない終わり方・・。やはり失敗したかと思った。
ところが、数時間経ってから何故かもう一度聴いてみたいと思った。そして頭に戻しふたたび再生した。最初と余り変わらない印象を持つが、すっきりした解釈は悪くはない。濃密で美しいブーレーズや鋭敏で鮮やかなMTT、ざらついて野性的なゲルギエフ、更には古いコンドラシンやテンシュテットの渋くテンペラメンタルな解釈が脳裏を過(よ)ぎる。それら過去の名演とされるものと頭内で比較考量しつつ聴いても特徴がないのであるが、このロトのマーラーは何故かすんなりと聴覚を経由して頭脳に入ってくる演奏設計なのである。理由は明確ではないが反芻して聴けば聴くほど癖のない平坦さが寧ろ快感へと変わっていくのである。
演奏技巧的には伝統的なVPOやBPO、また現代的なCSOやSFSO及びフィラデルフィア、昨今では鮮烈なテクニックで売り出し中のマーラー室内管などには比肩できないと思われる地味系な出来なのであるが、なんとも田舎風で素朴な取り組みが好感できる演奏であり、そういったオケの特性も相俟ってロトのストレートで飾らない解釈とリードは厚塗りマーラー/鮮烈マーラーの時代にあっては貴重なのかも知れない。毒々しいほど美味しい演奏はパフォーマンス的には魅惑的であって頭初の感動は深いものの、実は飽きが来るのも早くリピート率は低いと言えるかもしれない。しかし、このロトの演奏は反復して鑑賞することにより聴き所をきめ細かく再発見させられるという別の魅力を持った演奏であることに気が付かされるのだ。
過去のマーラー巨人の名演を挙げろ、と言われれば今であればMTT/SFSO、伝統的にはショルティCSOやバーンスタインNPOを推すかも知れないが、個人的に聴きたい演奏はそれらとは大概は異なるのだ。しかも時と場合によりフェイヴァリットは変化するものだ。マーラーの交響曲は独創的でワン・アンド・オンリーの魅力を帯びた作風の連作であるが、演奏する側のバリエーションもかなり多くて相当に楽しめるジャンルであることを再認識させられた一枚であった。
(録音評)
Hänssler 93294、通常CD。録音は2011年10月29日、11月2,3日、場所はフライブルクのコンツェルトハウスとある。演奏内容と同様に音質的にも腰高で外したかと思ったのであるが、反復して再生するうちにみるみる変貌を遂げ、今やヘンスラーのCD-DA(通常CD)としては最右翼の超高音質と言える。この前のシモーネ・ヤングのエームズ盤も凄かったが、このヘンスラーの巨人の音質は更に洗練されていて、しかもアーティスティックな薫りをまとったコンツェルトハウスの残響が美しく漂い、全体の楽音で絶妙なピラミッド・バランスを達成している。器楽配列がそのまま俯瞰できて、かつ奏者一人一人の息遣いまでもが捉えられている臨場感も格別だ。収録自体はハイビット/ミディアム・サンプリングPCMと思われるのだが空間感にはDSDっぽいところが感じられる。どうやら、SACDハイブリッドを得意としている高音質レーベルが通常CD-DA単層盤で堂々と勝負を仕掛けるのがこのところの流行のようだ。

♪ よい音楽を聴きましょう ♫
by primex64
| 2012-05-21 01:16
| Symphony
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