2012年 04月 30日
Berg, Beethoven: Vn-Con@Faust, Abbado/Orchestra Mozart |
大型連休の前半だが、実は28日から富山の実家に入っている。これは今年の正月にリリースされ、買ってからしばらく積んでいたファウストのベルクVnコン。いよいよ本腰を入れて聴いてみた。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/4397762
Berg & Beethoven: Violin Concertos
Berg: Violin Concerto 'To the Memory of an Angel' (1935)
Beethoven: Violin Concerto in D major, Op.61
Isabelle Faust (Vn)
Orchestra Mozart, Claudio Abbado
・ベルク: ヴァイオリン協奏曲(ある天使の思い出に)
・ベートーヴェン: ヴァイオリン協奏曲ニ長調 op.61
イザベル・ファウスト(ヴァイオリン/スリーピング・ビューティ Stradivarius, 1704)
モーツァルト管弦楽団
クラウディオ・アバド(指揮)
ファウストは2006年にもベトVnコンを録音していて、割と早めの再録という印象だ。そしてアルバン・ベルクのVnコンは初めての録音となる。なんでもアバドからのたっての要望にファウストが応えた格好で実現した競演盤とのことである。アバドは世間的にビッグネームではあるが、個人的には茫洋とした曲想をもった指揮者の一人であって、よって余りCDは持っていない。
アルバン・ベルクとベートーヴェンのVnコンのカップリングは、要するにウィーン楽派と新ウィーン楽派の対比という趣向のプログラム内容で、わりと一般的に見られる取り合わせだ。昨今のこの組み合わせで好印象だったのがアラベラ・シュタインバッハーのORFEO盤である。
この盤でのアバドは自らが申し出ただけあってかなかなかに力の入ったバトン捌きでモーツァルト管を引っ張る。1楽章のファウストはクールで瞑想的、そして特に前半部においては抑制的だが彫りの深い独奏を展開している。後半には情感の出し入れを少し強くするが、主に抑え気味のダブルストップを使用して理性的な旋律トレースを進めていく。アバドは実はアルバン・ベルクのこの曲が得意で、しかもとても巧いということに気が付いた。この作品は12音技法と分類されてはいるけれど在来曲に旋律の範を得ているパートが多いので聴き疲れるほどの支離滅裂さはなく、この種の音楽としては刺激と不快感は少ない。そのため、ともすると淡々と無機質に流れてしまって捉えどころのないつまらない演奏になるが、ここでのアバドの演奏は骨格をしっかりと捉え、確かで骨太な解釈設計に基づいた演奏を展開している。反面、クールなファウストの独奏部とは温度差があって、解釈法/ポリシーがやや乖離している感もあるが、実は婉曲なリチェルカーレのような対位法と見ることも出来て面白い展開だ。2楽章に入るとファウストの指の廻り方が一変し、ゴリゴリと太く、しかも時に超絶的に微細な描写が突如全開となる。自由に高く飛躍し、そしてあるときには遠くへと一気に飛翔するファウストが駆るスリーピング・ビューティは変幻自在な動きを聴かせる。アバド/モーツァルト管が醸すエナジー感もファウストと共に最高潮に達してから暫く、この名曲は脈絡なく閉じる。
シュタインバッハーのアルバン・ベルクと比較すると、硬軟の違いはあるもののどちらも良い演奏だ。しかし、彫琢の深さがまるで異なる。シュタインバッハーの解釈は野太いが、一方ではわりとエレガントかつリラックスしており、また音の作り方もスムーズ&スイートで聴きやすいものであったが、ファウストのアルバン・ベルクはマルティヌーやジョリベなどにおける解釈とも通じる孤高の厳しさと情感の深みをまとっている。
カップリングのベトVnコンだが、これは全般的に感じているアバドの茫洋感が前面に押し出された陳腐な解釈と述べておこう。但し、ファウストのソロは流石と言わざるを得ないパフォーマンスであって非常に巧い。アバドがファウストの曲想を理解していないか、或いは強いエナジーを御し切れていないようなちぐはぐさが気になる。ベトVnコンに関しては2006年のビエロフラーヴェク/プラハ・フィル盤の方が明らかに優秀。
(録音評)
Harmonia Mundi HMC902105、通常CD。録音は少し前で、2010年11月、場所はボローニャのAuditorio Manzoniとある。音質はどちらのVnコンも優秀で、比較的暖色系の強めの残響を伴うこのホールの特質を良く出している。さりとてオケの各パートやファウストのソロが埋没しているかというとそうではなくてちゃんと分離して美しく響き合っている。アルバン・ベルクの2楽章におけるグランカッサが非常にリアル、リニアリティが良好な捉え方で極低音の風が吹いてくる。
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♪ よい音楽を聴きましょう ♫

http://www.hmv.co.jp/product/detail/4397762
Berg & Beethoven: Violin Concertos
Berg: Violin Concerto 'To the Memory of an Angel' (1935)
Beethoven: Violin Concerto in D major, Op.61
Isabelle Faust (Vn)
Orchestra Mozart, Claudio Abbado
・ベルク: ヴァイオリン協奏曲(ある天使の思い出に)
・ベートーヴェン: ヴァイオリン協奏曲ニ長調 op.61
イザベル・ファウスト(ヴァイオリン/スリーピング・ビューティ Stradivarius, 1704)
モーツァルト管弦楽団
クラウディオ・アバド(指揮)
ファウストは2006年にもベトVnコンを録音していて、割と早めの再録という印象だ。そしてアルバン・ベルクのVnコンは初めての録音となる。なんでもアバドからのたっての要望にファウストが応えた格好で実現した競演盤とのことである。アバドは世間的にビッグネームではあるが、個人的には茫洋とした曲想をもった指揮者の一人であって、よって余りCDは持っていない。
アルバン・ベルクとベートーヴェンのVnコンのカップリングは、要するにウィーン楽派と新ウィーン楽派の対比という趣向のプログラム内容で、わりと一般的に見られる取り合わせだ。昨今のこの組み合わせで好印象だったのがアラベラ・シュタインバッハーのORFEO盤である。
この盤でのアバドは自らが申し出ただけあってかなかなかに力の入ったバトン捌きでモーツァルト管を引っ張る。1楽章のファウストはクールで瞑想的、そして特に前半部においては抑制的だが彫りの深い独奏を展開している。後半には情感の出し入れを少し強くするが、主に抑え気味のダブルストップを使用して理性的な旋律トレースを進めていく。アバドは実はアルバン・ベルクのこの曲が得意で、しかもとても巧いということに気が付いた。この作品は12音技法と分類されてはいるけれど在来曲に旋律の範を得ているパートが多いので聴き疲れるほどの支離滅裂さはなく、この種の音楽としては刺激と不快感は少ない。そのため、ともすると淡々と無機質に流れてしまって捉えどころのないつまらない演奏になるが、ここでのアバドの演奏は骨格をしっかりと捉え、確かで骨太な解釈設計に基づいた演奏を展開している。反面、クールなファウストの独奏部とは温度差があって、解釈法/ポリシーがやや乖離している感もあるが、実は婉曲なリチェルカーレのような対位法と見ることも出来て面白い展開だ。2楽章に入るとファウストの指の廻り方が一変し、ゴリゴリと太く、しかも時に超絶的に微細な描写が突如全開となる。自由に高く飛躍し、そしてあるときには遠くへと一気に飛翔するファウストが駆るスリーピング・ビューティは変幻自在な動きを聴かせる。アバド/モーツァルト管が醸すエナジー感もファウストと共に最高潮に達してから暫く、この名曲は脈絡なく閉じる。
シュタインバッハーのアルバン・ベルクと比較すると、硬軟の違いはあるもののどちらも良い演奏だ。しかし、彫琢の深さがまるで異なる。シュタインバッハーの解釈は野太いが、一方ではわりとエレガントかつリラックスしており、また音の作り方もスムーズ&スイートで聴きやすいものであったが、ファウストのアルバン・ベルクはマルティヌーやジョリベなどにおける解釈とも通じる孤高の厳しさと情感の深みをまとっている。
カップリングのベトVnコンだが、これは全般的に感じているアバドの茫洋感が前面に押し出された陳腐な解釈と述べておこう。但し、ファウストのソロは流石と言わざるを得ないパフォーマンスであって非常に巧い。アバドがファウストの曲想を理解していないか、或いは強いエナジーを御し切れていないようなちぐはぐさが気になる。ベトVnコンに関しては2006年のビエロフラーヴェク/プラハ・フィル盤の方が明らかに優秀。
(録音評)
Harmonia Mundi HMC902105、通常CD。録音は少し前で、2010年11月、場所はボローニャのAuditorio Manzoniとある。音質はどちらのVnコンも優秀で、比較的暖色系の強めの残響を伴うこのホールの特質を良く出している。さりとてオケの各パートやファウストのソロが埋没しているかというとそうではなくてちゃんと分離して美しく響き合っている。アルバン・ベルクの2楽章におけるグランカッサが非常にリアル、リニアリティが良好な捉え方で極低音の風が吹いてくる。

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by primex64
| 2012-04-30 08:53
| Concerto - Vn
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