Mahler: Sym#2@Simone Young/Hamburg PO |
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Mahler: Symphony No.2 in C minor 'Resurrection'
1. Allegro maestoso - Mit durchaus ernstem und feierlichem Ausdruck
2. Andante moderato - Sehr gemachlich
3. In ruhig fliesender Bewegung
4. Urlicht. Sehr feierlich, aber schlicht
5. Im Tempo des Scherzo - Wild herausfahrend
Michaela Kaune (soprano) & Dagmar Pecková (alto)
Philharmoniker Hamburg, Simone Young
・マーラー:交響曲第2番ハ短調『復活』 [79:23]
第1楽章:アレグロ・マエストーソ まじめで荘厳な表現で一貫して [20:34]
第2楽章:アンダンテ・モデラート きわめてくつろいで、急がずに [09:29]
第3楽章:スケルツォ 静かに流れるような動きで [10:44]
第4楽章:『原光』 きわめて荘重に、しかし素朴に [05:18]
第5楽章:スケルツォのテンポで、荒野を進むように [33:18]
ミヒャエラ・カウネ(ソプラノ)、ダグマル・ペチコヴァー(アルト)
北ドイツ放送合唱団、ラトヴィア国立合唱団
ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団
シモーネ・ヤング(指揮)
ブルックナーのチクルスで見られた丹念な描き込みの延長線上でのエモーショナルなマーラーを予期していたが、実際には相当にマッシブで鮮やかな「復活」だった。音の密度が非常に濃く、しかも各パートの分離が明晰なので音がいっぱい聞こえる。例えばブーレーズなどは最初から色を整えた油絵の具を周到に間違いなく塗り込んでいく手法、例えばMTTは写真製版を用いて緻密かつ忠実に被写体の実体と影を再現していく手法とするならば、ヤング/ハンブルクのこのマーラーは、原色のアクリルガッシュを一切混ぜることなく大胆かつ緻密に点描したかのような色彩感豊かで高コントラスト、それでいて細部の透明度が非常に高く、全体構成的にも滲みが全くないという近未来的な手法。いわば音楽的なHi-Fi度が高い解釈と演奏なのだ。
時間配分で見ると次の通りで、全体としては速めのテンポで通している。上段がこの盤の時間で、以下はゲルギエフ、ブーレーズ、ノリントン、MTT、エッシェンバッハ(いずれも彼らの最新の録音)と続く。
SY/HPO: 20:34 9:29 10:44 5:18 33:18
VG/LSO: 21:50 10:07 9:23 4:39 31:44
PB/VPO: 20:55 9:17 9:27 5:36 35:21
RN/SWR: 20:40 8:55 9:41 5:04 33:57
MTT/SFS: 23:19 11:33 10:45 5:44 36:57
CE/P.O.: 22:35 11:12 10:34 5:49 37:14
このうちで、このヤングの時間配分に最も近いのはノリントン盤と思われるが、実は、ノリントンの復活はかなり急ぎ足であることがぱっと聴きで分かってしまう演奏であった。しかしヤングのこれは、急峻とは全然感じられない充実ぶりであり、それは前述の通り細部にまで目を届かせた緻密かつ大胆なダイナミズムにその理由がある。音の密度が非常に高いので、聴き手は各楽章の所要時間には関係なく高い満足度を得ていると思われる。
原光は類を見ない小さなpp(ピアニッシモ)であり、他のどの録音よりも静謐だ。ダグマル・ペチコヴァーのコントラルトはこの静寂の中にすっと溶け込んで空間全体を震わせるようなブロードな発声であって素晴らしい浸透力で聴かせられる。この時のオケの弦の美しさと正確さ、そしてなにより小節の出入りの音の頭がどんぴしゃ合っているので滲みが全くなく、歪感、ノイズも皆無だ。
そして、否が応でも評価せざるを得ないフィナーレだが、ここのダイナミックレンジはこれまた前例のない驚くべき広大さであり、冒頭の怒濤の嵐から続く緊張感は途中の緩徐部でも途絶えることはなく、そして混声四部合唱からの延長線上にやってくるトゥッティに至るまでピンと張り詰めた一本のスチールワイヤーのような直線性を見せる。時間配分的にはゲルの超高速には及ばないもののノリントンよりも僅かに速いタクト捌きでありながら急いだところが全く感じられない濃密な終楽章だ。
よい意味で期待を大きく裏切られた一枚であった。「復活」はあまりにポピュラーな演目なだけに差別化が困難な状況下にはあるが、このヤングの解釈はある意味奇を衒わずに打ち出された希有の新機軸であり、彼女の今後の新作に対し更なる期待を抱かせてくれる秀逸な出来映えとなった。
(録音評)
OEHMS OC412、通常CD。録音は2010年10月24-25日、場所はLaeiszhalle, Hamburg、Recording Supervision, Editing and Mastering: Jens Schunemann、Sound Engineer: Nora Brandenburg、Balance Engineer: Johannes Kutznerとある。音質だが、ライスハレの辛口のアンビエント特性が丸ごと捉えられている滲みのない現代的なものである。SACDの必要性が全くないと断言できる優れたビットマッピング手法により超ワイド・ダイナミックレンジ、ブロードな周波数特性、克明な音像定位と自然に拡がる温度感の低い広大なサウンドステージの再創成を達成しており、昨今のCD-DAの進化ぶりをまざまざと見せ付けている。ここに来て各有力レーベルのCD-DAは明らかに地殻変動を起こしており、旧態依然とした一部大手レーベルとのクォリティ差は歴然としてしまった感がある。
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