Tchaikovsky: Sym#5@Tugan Sokhiev/ONCT |

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Tchaikovsky: Symphony No.5 in E minor, Op.64
Shostakovich: Festive Overture, Op. 96
Orchestre National du Capitole de Toulouse, Tugan Sokhiev
・チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調 Op.64
・ショスタコーヴィチ:祝典序曲 Op.96
トゥールーズ・キャピトル管弦楽団
トゥガン・ソヒエフ(指揮)
ソヒエフはあのテミルカーノフの薫陶を受けた新鋭のロシア人指揮者だ。HMVにはキングインターの紹介文が載っていて、そこにはスヴェトラーノフの再来みたいなことが書いてある。しかし、一聴して分かることであるが、古典的事大主義で浪花節的テンペラメントを特徴とするスヴェトラーノフとは似ても似つかない丸っきり違う演奏だ。そのことはレビューを書いている人からも商業主義に流れた安直な煽動である旨、一刀でばっさり斬り捨てられている通り。そして、師匠テミルカーノフとも違っていて、より現代的でドライな解釈が基底にありつつサンクト・ペテルブルク流のエモーションが極浅く載っかるといった風合いのリードだ。一方のトゥールーズ・キャピトル管は典型的なフランス地方都市の高性能オケであり、南仏の気風を色濃く反映するお洒落でフェザータッチの音色が特徴。
暗澹としたClで始まる一楽章の入りこそ悠然とした雰囲気であるが、その後に繰り返される第一主題のアチェレランドは凄まじく、まさに疾駆するチャイ5。速いだけではなくてマイクロスコピックな譜読みが徹底されており、どの部分を拡大してみてもマンデルブロー空間のように美しく磨き上げられたテクスチャが整然と並んでいるのだ。そして明転する第二主題では一旦は悠然たる鼓動に戻るのであるが展開部に入るや、やはり凄いアチェレランドを駆使して緊張度を増して行き、そして再現部からコーダにかけての怒濤の付点モチーフの連続は手に汗を握る迫真の恐怖を演出している。コーダ末尾では急ブレーキを踏んでコンバスの通奏でこと切れる。第一楽章だけでぐったりするほど目まぐるしい演奏であり、なんとも密度の濃いチャイ5であろうか。
緩徐楽章および3拍子(ワルツ系)の三楽章における豊満で潤沢なオケの鳴らし方はソヒエフのもう一つの側面を垣間見ることができる。割とロマンチストであり、さりとて事大がからないという現代っ子の解釈だ。静謐なのだが、たっぷりとした音数を引き出しながらの精緻なリードが光る。終始に渡り音が痩せずにふくよかさを保っているのは特筆もの。
そしてフィナーレだが、これは一楽章を更に輪をかけて拡大解釈をした一大スペクタクルだ。ソヒエフの荒々しい暴力的なほどのエナジーがストレートに発露する。チャイ5の直截的なわかりやすさとシンプルな盛り上がりはソヒエフの手に掛かると重層感溢れる音のミルフィーユへと変身する。重い音や鋭く歪むパートも勿論あるにはあるが、指揮者の解釈およびオケの特性からか、決して鈍重にならず荒れず、というか寧ろ軽量高剛性の最高性能を発揮する。チタン合金で制作された高性能エンジンがレッドゾーンまで一気に吹け上がるような爽快感が得られるのだ。もしチャイコがフィナーレを超えて第五楽章を書いたとするならばこんな展開に違いない、と想像してしまうような四楽章だった。
そして、五楽章は無理にしても、もうちょっとこの彼らの演奏を聴いていたい・・、と思っているところに効果的に置かれているのがショスタコ祝典序曲である。余白とはいえアルバムの最後を飾るに相応しい骨格の太い筋肉質な祝典序曲だ。チャイ5には登場しない特大級グランカッサが怒濤の低周波を放散しまくる胸の透く演奏だ。最後の最後にレンジが上下とも1オクターヴほど拡がってこのアルバムは閉じる。
(録音評)
Naïve V5252、通常CD。録音はちょっと前で2010年7月、場所は La Halle aux Grains, Toulouse, France。録音機材はマイク:Neumann TLM50, DPA4003 DPA4006, Neumann TLM170,Schoeps、プリアンプとA/D:AX-24 DADman、録音/編集:Pyramix Studio(44.1kHz、24bit)とある。縦方向は24bitとハイビットながら、横方向はハイサンプリングせず44.1kHzのまま録ったものであり、とても珍しい。この頃はハイサンプリングが尊ばれない風潮があるらしく、192kHzはかなり減ってきて、96kHzや88.2kHzで際立った高音質を得ている盤が目立つ。Naïveは10年ほどdCSのA/Dを使ってきていたが、このところDAD(デジタルオーディオデンマーク)社製のプリ+A/Dを多用していて、この効果は絶大だ。要は非常に音質が良い。この盤の音質も驚くほど優秀であり、SACDはもう不要であると確信できるほど自然で実在感のある音の風合いなのだ。サウンドステージの奥行き方向の立体感は半端なく深く、そして左右方向の器楽配列の描写性能は恐るべきものがある。スピーカーのバッフル面に対し、巨大な卵形の音場が形成され、リスナーはその中央に置かれる格好となる。まさにホールに着座しているのと何ら変わりないアンビエントに包まれるのだ。CDはここまで来たか、と唸らざるを得ない超優秀録音。

♪ よい音楽を聴きましょう ♫

こちらこそご無沙汰しております。ユーリさんのBlogは更新の度にほぼ拝見させて頂いております。ただ、私の方には、お題に突っ込むほどの知見がないので失礼を致しておりますです・・。
名字・・・、なるほど、サイトの名前の真ん中のあれはそういう意味だったんですね! 私ら関東に住む者は綱島といえば東急東横線の急行停車駅を連想しますが、名字としてはなかなか想定し得ないと思います。
>私の居住地が判明できそうですね。
そんな・・・。ストーカーじゃあるまいしww これから京都出張が増えそうなので、もし足を伸ばしてお目にかかれるチャンスがあればな、と思います!
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