MusicArena Awards 2011 |
あの忌まわしい厄災から早くも一年が経過しようとしている。あらためて犠牲者の冥福を祈るとともに一刻も速い復興を祈念するものである。
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MusicArena Awards 選考基準
・2011年中に国内リリースされたCD/SACD(国内盤・輸入盤を問わず)
・演奏面/音質面ともに優れたもの
・前衛的な取り組みであると認められるもの
・以上を考慮して以下の各賞を選考する
MusicArena Grand Prix - 最優秀作品を1点選出
MusicArena Semi-Grand Prix - 優秀作品を2点選出
MusicArena Performance of the year - 演奏に特に秀でた作品を数点選出
MusicArena Sound of the year - 録音品質に特に秀でた作品を数点選出
MusicArena Special Encouraging Prize - 将来を嘱望する奏者の作品を数点選出
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※以下、ジャケット写真をクリックすると詳細解説が開きます
MusicArena Grand Prix 2011
Liszt: P-Sonata B min. Etc@Irina Mejoueva
ピアノ・ソナタ ロ短調
愛の夢 第3番
ラ・カンパネラ
子守歌 S.198
瞑想 S.204 他
イリーナ・メジューエワ(Pf)
レーベル:若林工房
イリーナ・メジューエワの昨今の活動は以前にも増して活発であり、そして特筆すべきはその音楽内容の充実ぶりである。作曲家が楽譜に込めた情感を翻訳する立場としての演奏者に徹し、トランスペアレントな姿勢で演奏会/録音に臨むイリーナのひたむきなスタンスが奏功している。このリストのソナタは出色の出来映えであり、ただ単に思索的で物思いに耽るような演奏ではなく、リストのポジティブなエナジーを毅然と表出している。
MusicArena Semi-Grand Prix 2011
Brahms: Vn-Con Etc.@Isabelle Faust, Harding/Mahler C.O.
ブラームス:
ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.77
弦楽六重奏曲第2番ト長調 Op.36
イザベル・ファウスト
マーラー室内管弦楽団
ダニエル・ハーディング(指揮) 他
レーベル:Harmonia Mundi
ファウストは何を演奏させても巧くて、ちょっとドライで直進的な解釈によっては厳しすぎる面も垣間見られるが、このブラームスにおける硬軟の使い分けとダイナミックな解釈は素晴らしいの一言。もう既に名手としての地歩を固めている感のあるファウストだが、今後とも注視が必要だ。
MusicArena Semi-Grand Prix 2011
Schumann+Liszt: P-Con@Etsuko Hirose,F.Karoui/O.de Pau Pays du Bearn
シューマン: ピアノ協奏曲イ短調Op.54
リスト: ピアノ協奏曲第2番イ長調
広瀬悦子(ピアノ)
ベアルン地方ポー管弦楽団
フェイサル・カルイ(指揮)
レーベル:MIRARE
広瀬の高い技巧と度胸には日本人離れしたところがあって、これまでの日本人女流ピアニストのベースラインを大いに拡大することであろう。この演奏はオケと共にかなりテンペラメンタルなもので実に楽しめる内容だ。
MusicArena Performance of the year 2011
Beethoven: P-Con#1,#2@Shani Diluka, Kwamé Ryan/ONBA
ベートーヴェン:
ピアノ協奏曲第2番変ロ長調 作品19
ピアノ協奏曲第1番ハ長調 作品15
シャニ・ディリュカ(ピアノ)
ボルドー・アキテーヌ国立管弦楽団
クワメ・ライアン(指揮)
レーベル:MIRARE
ディリュカはロマン派専門家と思っていたが、実はベートーヴェンのような骨格の太い作品を弾かせても非常に巧いということが証明された。オケとの掛け合いも有機的で機動的、そしてピアノの音が透明でとても綺麗だ。録音もかなり優秀。
MusicArena Performance of the year 2011
J.S.Bach: Goldberg Variations BWV988@Fretwork
J.S.バッハ: ゴルトベルク変奏曲
(6つのヴィオラ・ダ・ガンバ版)
フレットワーク
スザンナ・ペル、森川麻子、
ライアン・バーン、市瀬礼子、
リチャード・タニクリフ、
リチャード・ブースビー
レーベル:Harmonia Mundi
バロック・アンサンブルによるバッハのクラヴィーア曲の忠実なる再現・・。実に深遠で興味深い試みであろうか。誰しもが思いつくことではないし、また、その成果を如実に音で表現してみせるのも至難の業と思われるのである。ブースビー率いるフレットワークの面々の目覚ましい演奏とエフォートに快哉を送る。
MusicArena Sound of the year 2011
Ives: Concord Sym/Copland: Sym for Org&Orch@MTT/SFSO
アイヴズ/ブラント編: コンコード交響曲
コープランド: オルガン交響曲
ポール・ジェイコブス(オルガン)
サンフランシスコ交響楽団
マイケル・ティルソン・トーマス(指揮)
レーベル:SFS Media
音楽的には現代アメリカの頽廃と進歩の過程にインスパイアされた前衛的な内容だ。だが、難解な領域の音楽が超高音質によって楽しく浮き浮きとした気分で聴けるとしたらどうであろうか? このSACDは、音楽メディアにおける演奏の優秀性は録音再生品質によって大いに左右されるものであるということを示しているのだ。
MusicArena Sound of the year 2011
Berlioz: Harold in Italy Etc.@Minkowski / Musiciens du Louvre-Grenoble,Tamestit,Otter
ベルリオーズ:
イタリアのハロルド op.16
夏の夜 op.7 他
アントワン・タメスティ(ヴィオラ)
アンネ=ソフィー・フォン・オッター(Ms)
ルーヴル宮廷音楽隊
マルク・ミンコフスキ(指揮)
レーベル:Naïve
贅沢な作品内容を贅沢なパーソネルで制作したこの一枚は、内容的にはベルリオーズのベストアルバムと言うべきものとなっているのでお勧めなのだが、音質が凄まじく優秀であり、ある意味SACDを超える素晴らしい出来映えなのだ。Naïveは元々SACDでのリリースを拒んでいるレーベルであるが、その理由がはっきりと分かる一枚。
MusicArena Special Encouraging Prize 2011
Liszt: P-Sonata B min. Etc@Khatia Buniatishvili
フランツ・リスト:
愛の夢 第3番変イ長調 S.541-3
ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178
メフィスト・ワルツ第1番『村の居酒屋での踊り』 S.514
他
カティア・ブニアティシヴィリ(ピアノ)
レーベル:Sony Classical
カティアのソニー盤にはぶっ飛んだ。こんなに先鋭で衝撃的なリストはレスチェンコ以来だ。リストのソナタは誰が弾いてもそれなりに個性は明確に出るが、このドライブ感というかグルーヴ感、それと節々での細やかなアーティキュレーションは他の若手の誰しもが真似できない天性の技というべきだろう。まだまだ荒削りであって、それほどレパートリーも広くないのであるが、今後の伸びしろが多いに期待できる逸材である。尚、ライナー・マイラートによるCDの音質も素晴らしいものがある。
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最終選考まで残った秀作たち:
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♪ よい音楽を聴きましょう ♫
エーッ、私の大好きなラサールちゃんが受賞を逃しちゃいましたか?(爆
まあ、メジューエワの昨今の充実ぶりにリーズ・ドゥ・ラ・サールも吹き飛ばされてしまったのは致し方ない、相手が悪すぎた、ということでしょうか。メジューエワもDENONでリリースしていた時は、中途半端な「売り方」もあり、メトネル作品集でオッという感じが少しあるだけ、若林工房になってからも、初期は録音が良いのだか何だかわからん盤もあったような・・・・・・でも、ベト・チクルス辺りからの音楽の充実と録音の高音質化が相俟って無敵状態は何より。「2012」もメジューエワのシューベルトがエントリーされるのでしょうが、私としてはやはり「頑張れッ、ラサールちゃん」です(爆
お久しぶりです&コメントありがとうございます。リーズのリスト・アルバムは内容的には結構良くて、最後まで悩んじゃいましたが、ちょっと小粒かなぁーー? ってことで・・。
イリーナの系統的で弛まぬ音楽活動とアルバムの高い完成度に軍配を上げた格好です。リーズのアルバムはセミ・グランプリに・・、とも思いましたが、こちらのほうでも強力なコンペティターがいて随分悩んだですよ・・。次に期待ということでww