Ives: Vn-Sonatas #1-4@Hilary Hahn,Valentina Listisa |
http://www.hmv.co.jp/en/product/detail/4235190
Charles Ives (1874-1954)
Sonata for Violin and Piano No.1
Andante - Allegro vivace
Largo cantabile
Allegro
Sonata for Violin and Piano No.2
Autumn. Adagio maestoso - Allegro moderato
In the Barn. Presto - Allegro moderato
The Revival. Largo - Allegretto
Sonata for Violin and Piano No.3
Adagio (Verse I) - Andante (Verse II) - Allegretto (Verse III)
- Adagio (Last Verse)
Allegro
Adagio (Cantabile) - Andante con spirito
Sonata for Violin and Piano No.4 "Children's Day At The Camp Meeting"
Allegro
Largo - Allegro (con slugarocko)
Allegro
Hilary Hahn(Vn), Valentina Lisitsa(Pf)
チャールズ・アイヴズ
・ヴァイオリン・ソナタ第1番
・ヴァイオリン・ソナタ第2番
・ヴァイオリン・ソナタ第3番
・ヴァイオリン・ソナタ第4番「キャンプの集いの子供の日」
ヒラリー・ハーン(Vn)
ヴァレンティーナ・リシッツァ(Pf)
アメリカの現代作家であるアイヴズは前衛的で特異な作品で知られるが、没後50年ほど経過した近年になり俄に脚光を浴びている感がある。但し日本国内での人気のほどは不確かだ。
ライナーによれば、いずれの曲も主題をアメリカの民謡、黒人霊歌、賛美歌などから取ったものらしく、これらを面白可笑しく、ときにデモーニッシュ、諧謔に、そして突飛で予測の付かない和声・・恐らくは破綻した調性あるいは無調・・に、ちょっとふざけたような実験的なフレーズ/旋律が並んでいる。アイヴズに限らず現代作家の場合には曲の親しみやすさやハーモニーの美しさを楽しむと言うよりは、音により媒介される心象や情景描写を、聴き手側の感性をも動員しつつ嗜むという世界が大半であり、この作品たちもまたそのような建て付けで書かれているものと思料する。
ソナタ1番はちょっと仄暗いが割と楽天的な情感に支配されたもの、2番は寒々とした風景が脳裏に浮かぶけれども、その風景は長続きすることなく煩瑣に転調を繰り返したりする不安定要素の大きなもの、3番はドラスティックな裏切りが随所に仕組まれたダイナミックで諧謔性に満ち溢れた渾身の作で、音世界の中で大いに遊べるものだ。
ソナタ4番は唯一副題が付いた作品だ。これは誰しもが気が付く著名な旋律を拝借した作品であり、最終3楽章は殆ど編曲無しに生の原曲が出現する。そう・・「たんたん狸の金時計・・・」がハーンによって訥々とメカニカルに奏でられる。この旋律には日本国内では種々の替え歌が付けられていて必ずしも正統的に受け入れられていないかも知れないが、実は出自はしっかりとした主題だ。Shall We Gather at the River(邦訳=まもなくかなたの)という賛美歌で、1864年にバプテスト教会のアメリカ人聖職者、ロバート・ローリー (Robert Lowry:1826年-1899年)が書いたものとされる。
アメリカ人Vnソリストとしての矜持からか、ハーンは敢えて解釈が難しく万人受けすることは必ずしも期待の出来ないアイヴズの作品集をリリースした。この作品はどういった風情で弾かれるのが上等なのかは不勉強のため判断がつかないのだが、少なくともハーンの操弦技術は素晴らしく、またこれら作品への並々ならぬ感性と譜読みのエフォートが強く感じられる出来映えとなっていると言っておこう。
どういった演出意図からかは知らないが、ハーンのVnは古色蒼然とした音色になっている。一方のリシッツァの弾くベーゼンドルファーはふくよかでフローラルな音色を湛えており、ぶ厚いマスに支えられた重心の低い伴奏展開は秀逸。
(録音評)
DG B00160820-2、通常CD。録音はちょっと古く2009年4月、場所はClubhouse in Rhinebeck, NYとなっている。制作はMEYER MEDIA LLCの担当で、プロデュースはAndreas K.Mayerとハーンの共同と書いてある。音質は前衛的と言えばそうだが、前述の通りハーンのVnは暖色系の古色蒼然としたノイジーなもの。しかもかなりのオンマイク設定でクローズアップした狙い方としており、音像としては正しく定位しない。対するリシッツァのPfは適度に距離感を経た少し後方にきちんと定位する正統的なマイクアングルであり、残響成分も自然に拡がって心地良いし、ベーゼンドルファーの形質である華やいでいて豊かなボディ感が忠実に捉えられていて優秀。どうもハーンのCDはいつも音質的に難があって、これもまたその域を出ないものだ。あまり変な小細工をせず正攻法のアングルで狙えばもっとハーンの巧さが光ると思うのだが・・。
※この盤はUSおよびカナダ(北米)向けのものを直輸入した製品で、一方、英国やEU向けは4779435という番号で出回っている。更に日本のユニバーサルからはUCCG1554というSHM-CDが出ている。
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