2012年 01月 15日
Brahms & Schubert: Vc Sonatas@Natalie Clein |
Classics For Pleasureプレゼンツ(EMIの英国ローカル廉価版シリーズ)の一枚。尚、これは新譜ではなく随分前のリリースだ。というのはタワレコに行った折、クラシック・コーナーの片隅でワゴンセールをやっていて、その中を何気なく物色していたら出てきたもの。一枚600円ほどだったので可哀想になってサルベージした。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1812324
Brahms: Cello Sonata No. 2 in F major, Op.99
Schubert: Sonata in A minor 'Arpeggione', D821
Brahms: Cello Sonata No. 1 In E minor, Op.38
Natalie Clein (Vc), Charles Owen (Pf)
ブラームス:チェロ・ソナタ第1 & 2番
シューベルト:アルペジョーネ・ソナタ
ナタリー・クライン(チェロ)、チャールズ・オウエン(ピアノ)
なぜこの2004年リリースの古いCDを拾い出したか、なのだが、CFPシリーズのこのEMI盤は、実はナタリー・クラインの初録音CDなのだ。CFPシリーズはLPレコードの時代からEMIが英国や欧州の一部で発売してきた廉価版レーベルで、CDの時代になった現在でも続けているもの。内容は、というと、古い音源の再発が多く、しかしその中に混ざって無名若手奏者の有望新規録音もあったりと玉石混淆なのは昔と変わらない。ある意味、無名新人にとっては登竜門的な予備レーベルとも位置付けられるのだ。しかし、このシリーズは定期的・体系的には日本国内に流通しておらず、店頭で見掛ける機会はとても少ない。こういったワゴンセールの格好で十把一絡げで扱われるのが精々なんだろうと思う。
このCFPデビュー時点で、ナタリーは既にコンサート・チェリストとしてかなりの地歩を築いていた。27歳というからCDデビューとしては遅い方だ。しかも大手EMIのマイナー・ローカルということであって恵まれたデビューではなかったのであろう。このCDは期せずしてある程度のセールスを記録し、EMIの制作側は本家EMIでデビューさせることとしたわけだ。そして2006年にはラフマニノフ&ショパン作品集、続く2007年にはエルガーのコンチェルトのヒットへと繋がるのだ。
CDの内容はブラ#2、シューベルトのアルペジオーネ、そしてブラ#1となっており、新人チェリストの初リリースとは考えられない重厚で本格的な構成だ。通常、こういった盤を出す場合には特徴的な得意領域を聴かせるためにコンピレーション形式の小品集とすることが多いが、今から思えばクラインらしく、正攻法の正面突破で挑みかかった渾身のCDだ。
演奏は、英国内で広く受け入れられたのが頷ける良い内容である。冒頭のブラ#2の伸びやかで軽やかな飛翔感は魅惑的で聴きやすく、そして親しみを覚える律儀な解釈と演奏だ。突出したテクニックやテンペラメントは感じられないけれど肩肘が張らないゆとりある演奏。中核に収まるアルペジオーネだが、これはクラインの非凡なロマンチシズムが迸る名演奏といえるもの。深くてたゆたうヴィブラートはコントラルト歌手が声帯を振るわすような豊かな波動を生み出しており、これが後のエルガーの協奏曲などで発露する切々たるエモーション表現へと通じるのだ。最後のブラ#1は毅然とした暗めの解釈を基本としており、音量の少ないクラインとしてはちょっと無理があるくらい頑張って弾き通している。しかし破綻するほどの無茶はしておらず理性的で仄暗くそして時に悲観的に啜り泣く1777年製グァダニーニ"Simpson"が憂いに満ちた歌声を紡ぐ。
ピアノのチャールズ・オーウェンだが、細身で繊細、美しいスタインウェイの音色で好サポートしており、この緻密で静謐な伴奏がクラインの優しい曲想を一層引き立てる結果となっている。こういった音量の少ないソリストの場合には殊のほか伴奏者の技量が全体の出来映えを左右するのを思い知る。
(録音評)
EMI CFP 723 5 86146 2、録音は2004年2月23~26、場所はSt Martin's, East Woodhayとある。廉価版だとたかをくくって聴くと裏切られる出来映えの音質で、右手奥でオーウェンのピアノが静かに奏でられるなか、中央にクラインのグァダニーニが明確に定位してリアルな演奏を繰り広げる。弦と弓の擦過音、クラインの息遣いが生々しく捉えられている。この頃からEMIの音作りは一貫して優れているのだ。
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♪ よい音楽を聴きましょう ♫
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1812324
Brahms: Cello Sonata No. 2 in F major, Op.99
Schubert: Sonata in A minor 'Arpeggione', D821
Brahms: Cello Sonata No. 1 In E minor, Op.38
Natalie Clein (Vc), Charles Owen (Pf)
ブラームス:チェロ・ソナタ第1 & 2番
シューベルト:アルペジョーネ・ソナタ
ナタリー・クライン(チェロ)、チャールズ・オウエン(ピアノ)
なぜこの2004年リリースの古いCDを拾い出したか、なのだが、CFPシリーズのこのEMI盤は、実はナタリー・クラインの初録音CDなのだ。CFPシリーズはLPレコードの時代からEMIが英国や欧州の一部で発売してきた廉価版レーベルで、CDの時代になった現在でも続けているもの。内容は、というと、古い音源の再発が多く、しかしその中に混ざって無名若手奏者の有望新規録音もあったりと玉石混淆なのは昔と変わらない。ある意味、無名新人にとっては登竜門的な予備レーベルとも位置付けられるのだ。しかし、このシリーズは定期的・体系的には日本国内に流通しておらず、店頭で見掛ける機会はとても少ない。こういったワゴンセールの格好で十把一絡げで扱われるのが精々なんだろうと思う。
このCFPデビュー時点で、ナタリーは既にコンサート・チェリストとしてかなりの地歩を築いていた。27歳というからCDデビューとしては遅い方だ。しかも大手EMIのマイナー・ローカルということであって恵まれたデビューではなかったのであろう。このCDは期せずしてある程度のセールスを記録し、EMIの制作側は本家EMIでデビューさせることとしたわけだ。そして2006年にはラフマニノフ&ショパン作品集、続く2007年にはエルガーのコンチェルトのヒットへと繋がるのだ。
CDの内容はブラ#2、シューベルトのアルペジオーネ、そしてブラ#1となっており、新人チェリストの初リリースとは考えられない重厚で本格的な構成だ。通常、こういった盤を出す場合には特徴的な得意領域を聴かせるためにコンピレーション形式の小品集とすることが多いが、今から思えばクラインらしく、正攻法の正面突破で挑みかかった渾身のCDだ。
演奏は、英国内で広く受け入れられたのが頷ける良い内容である。冒頭のブラ#2の伸びやかで軽やかな飛翔感は魅惑的で聴きやすく、そして親しみを覚える律儀な解釈と演奏だ。突出したテクニックやテンペラメントは感じられないけれど肩肘が張らないゆとりある演奏。中核に収まるアルペジオーネだが、これはクラインの非凡なロマンチシズムが迸る名演奏といえるもの。深くてたゆたうヴィブラートはコントラルト歌手が声帯を振るわすような豊かな波動を生み出しており、これが後のエルガーの協奏曲などで発露する切々たるエモーション表現へと通じるのだ。最後のブラ#1は毅然とした暗めの解釈を基本としており、音量の少ないクラインとしてはちょっと無理があるくらい頑張って弾き通している。しかし破綻するほどの無茶はしておらず理性的で仄暗くそして時に悲観的に啜り泣く1777年製グァダニーニ"Simpson"が憂いに満ちた歌声を紡ぐ。
ピアノのチャールズ・オーウェンだが、細身で繊細、美しいスタインウェイの音色で好サポートしており、この緻密で静謐な伴奏がクラインの優しい曲想を一層引き立てる結果となっている。こういった音量の少ないソリストの場合には殊のほか伴奏者の技量が全体の出来映えを左右するのを思い知る。
(録音評)
EMI CFP 723 5 86146 2、録音は2004年2月23~26、場所はSt Martin's, East Woodhayとある。廉価版だとたかをくくって聴くと裏切られる出来映えの音質で、右手奥でオーウェンのピアノが静かに奏でられるなか、中央にクラインのグァダニーニが明確に定位してリアルな演奏を繰り広げる。弦と弓の擦過音、クラインの息遣いが生々しく捉えられている。この頃からEMIの音作りは一貫して優れているのだ。
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by primex64
| 2012-01-15 23:02
| Solo - Vc
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