Mozart & Schubert: String Quartets@Quatuor Chiaroscuro |
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Mozart: String Quartet No.19 in C major, K465 'Dissonance'
Schubert: String Quartet No.13 in A minor, D804 'Rosamunde'
Quatuor Chiaroscuro:
Alina Ibragimova(Vn), Pablo Hernan Benedi(Vn),
Emilie Hörnlund(Va), Claire Thirion(Vc)
モーツァルト: 弦楽四重奏曲 第19番 ハ長調「不協和音」K465
シューベルト: 弦楽四重奏曲 第13番 イ短調「ロザムンデ」D804 Op.29
キアロスクーロ・カルテット
アリーナ・イブラギモヴァ(1st Vn)、パブロ・エルナン・ベネディ(2nd Vn)、
エミリー・ヘルンルンド(Va)、クレア・ティリオン(Vc)
キアロスクーロ四重奏団は2005年設立で、英国ロイヤル・カレッジ・オブ・ミュージックの卒業生有志で構成されるピリオド・アプローチのカルテット。主として1750~1830年代までの作品をそのレパートリーとしている。この四重奏団のリーダーはロシア出身で、現在では英国を中心に人気が高まっているアリーナ・イブラギモヴァである。直近のMusicArenaでは彼女の独奏でベトVnソナタ6番・3番・クロイツェルを取り上げたが、これは非常にレベルの高い演奏であった。イブラギモヴァはピリオド・アプローチとロマン派アプローチの双方を習得した非常に守備範囲の広いソリストの一人であり、録音/演奏はバッハ~ラヴェル~シマノフスキにまで及び、とても多彩なのだ。
このアルバムは作品としては古典派~初期ロマン派に属する作品を扱ってはいるが、奏法としてはピリオド・アプローチであり、直截的で直進性の強いピュアな曲想で貫かれている。モーツァルトの19番・不協和音は冒頭の入りのモチーフ(動機展開)がその異名の元となっているが、不協和音要素が強いのはその辺りだけであり、トータルするとモーツァルトらしい穏健で衒いのない(多少は影が感じられるけれど・・)作品だ。この割と平坦で起伏の浅いモーツァルト特有のパッセージを驚くべきハイスピード、並びに精密なテンポで疾風のように刻んでいるのがこの演奏の特徴。一般的によく見られる天国的でテンペラメンタルなエモーションはいっさい夾雑されないストレートな演奏なのだ。
一方のロザムンデは、これは静かで深い思索を基としたような理性的かつ淡々とした演奏だ。一般的にはこれまたテンペラメンタルな解釈で切々と訴えかけてくる湿潤系ロザムンデとは一線を画したドライでクールなロザムンデなのだ。これはこれでシューベルトが譜面に込めた情感の一解釈としては十分にあり得る現代的で割り切ったものとして得心が行く演奏だ。ヴィブラートやアゴーギクを殆ど用いないピリオド・アプローチに加え、この4人の弦捌き・弓捌きの正確さは無類であり、これが独特の新鮮さ、そしてべたつきのない爽快感を強く演出しているのだ。
若くて独特の才能に溢れたこの人たちの豊かな感性を、正直、羨ましいと思う。今後もっとも注目に値する気鋭の四重奏ユニットの一つといえよう。
(録音評)
Aparté AP022、通常CD。録音は2010年12月、場所はPart Royal des Champs(パリ郊外のポール・ロワイヤル修道院)。演奏内容もさることながらこの冷涼で透き通った音質、そして直進性の強い綺麗な残響が非常に印象的な録音だ。キアロスクーロの完璧な操弦技法を丸々捉えており、さりとて殊更に高解像度な輪郭を強調したマイク・アングルでもない。この録音もご多分に漏れずCD-DAでありながらDSDやハイビット/ハイサンプリングPCMの必要性を殆ど感じさせない超優秀録音で、昨今のビットマッピング折り畳み技術の凄さを思い知らされる一枚。尚、ApartéのCDは過去にも何枚か買っているが、ここは現在ではHarmonia Mundiの配下となっており、ハイセンスな企画と録音内容は期待を裏切らない優秀レーベルなのだ。
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