2011年 12月 27日
Berlioz: Harold in Italy & Les Nuits d'Été@Minkowski / Musiciens du Louvre-Grenoble,Tamestit,Otter |
naïveの新譜でベルリオーズの佳作集から。今や世界的なピリオド奏法の指揮者として名を馳せるマルク・ミンコフスキが手兵のルーヴル宮廷音楽隊を振り、そして自らがプロデュースもして満を持してリリースしたというロマン派作品は、普段のnaïveとはちょっと風情の異なる力の入った一枚だ。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/4226718
Berlioz:
Harold en Italie Op.16
Les Nuits d'été Op.7
La Damnation de Faust Op.24: Le Roi de Thulé
Antoine Tamestit(Va) for Op.16 & 24
Anne Sofie von Otter(Ms) for Op.7 & 24
Les Musiciens du Louvre-Grenoble, Marc Minkowski
ベルリオーズ:
・イタリアのハロルド op.16
・夏の夜 op.7
・テューレの王のバラード(『ファウストの劫罰』op.24より)
アントワン・タメスティ(ヴィオラ/1672年ストラディヴァリウス「マーラー」)
アンネ=ソフィー・フォン・オッター(メゾ・ソプラノ)
レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル・グルノーブル(ルーヴル宮廷音楽隊)
マルク・ミンコフスキ(指揮)
このアルバムだが、「ハロルド」はタメスティを、そして「夏の夜」が、なんとワールドクラスの超有名メゾであるオッターを起用してきた。DG専属のオッターを連れてくるとは、いったい何が起きたのであろうか。naïveとしてはこれまた異例の、ぶ厚い豪華ブックレット付き、かつプラCDケースと共にカートン入りの装丁となっている。
ベルリオーズはフランス生まれで、自由形式交響曲の始祖、かつオーケストラ/歌曲専門のロマン派ともいえる偉大な作曲家だ。時期的には先輩に当たるベートーヴェンがドイツ/ウィーンで活躍していて、その晩年にベルリオーズは生まれた計算となる。この二人の作風の違いは歴然としていて、今でこそベートーヴェンは楽聖として尊ばれているが、時代が時代ならば評価は逆転していたかも知れない。片や形式主義的で厳めしく、しかしシンプルでストイックな構築美を探求し、そしてもう一方は奔放にして型に嵌らず、そして自由で悠然たる曲を書いたのだった。
個人的にはベルリオーズはメンデルスゾーンと同等に好きな作家であり、両人とも人の心の中の揺らぎを描写するに天才的なところがある。イタリアをテーマにしたメンデルスゾーンの作品と言えば4番交響曲が異名をイタリアという。どちらもフランスの側から見れば明媚な地中海風の曲想で描いたものだろうが、翳りという点においてはベルリオーズの方が深いし味わいもあってなかなかなのだ。
さて、このアルバムだが、ミンコフスキが大事に育てたルーヴル宮廷音楽隊を更に絞り込んで贅肉を削ぎ落としたかの使い方は非常にストイックな反面、中規模編成だからこそ達成し得る純度の高い弦楽が基底となっている。イタリアのハロルドの名演・名録音は色々とあるが市中のメジャー大規模オケにはないピュアで澄み切ったノン・ヴィブラートによる傑出したクラリティは別格だ。ここにタメスティの切なく太いVaが乗ってきて何とも言われぬ円やかな風情を醸す。ダイナミックレンジの広い演奏と解釈はハロルドの新しいスタンダードとなるのは必至と思われる。
後半はいよいよオッターの登場。冒頭のヴィラネル (Villanelle)だが、邦題のキャプションとしては「野いちごを摘む若い恋人たちの、春を喜ぶ歌」とされる長ったらしい名前を頂いている。これはもうやられてしまう。オッターがメゾであるということが嘘のような伸びやかで透明な高域成分はこれはもう完全にソプラノのテリトリーを侵しているであろう。しかし、第2曲のばらの精 (Le Spectre de la Rose)~第4曲の君なくて(Absence)=「彼方に去った恋人に呼びかける歌」あたりではアルト声域で切々とした粘性を伴って紡がれるのは、紛れもない不世出の現代メゾのなせる技。
このアルバムは素晴らしい出来映えであり、そして長く付き合うには好適なベルリオーズ作品集なのであった。それを見越しての超豪華装丁だと思われる、見栄えに関しても完璧な一枚。フランスのロマン派を原点から中興の祖まで追いかけるには外せない曲集だ。
(録音評)
naïve V5266、通常CD。録音は2011年4月、場所はパリのヴェルサイユ宮オペラ・ロワイヤルとある。制作機材はPyramixとだけクレジットされており詳細は分からない。ブックレットの立派さとセンスの良さがひときわ印象的な完成度の高いアルバムであり、音質もそれに見合う、いや、想像を遙かに超える超高音質を達成している。拡がる音場と完璧な音像定位はいつものnaïveの水準を凌駕するものであり、これが通常CD-DAであるとは俄に信じられない出来映え。
但し、再生はそんなに楽ではないだろう。音場およびアンビエント成分が非常に多く含まれるため、再生系に少しでも不安があるとワンワンと五月蠅く鳴り響くリスクがあって万人にお勧めは出来ないと思料する。装置のコンディションに自身のある人はチャレンジして欲しい。但し、へんてこりんな音がしても即座に落ち込まないように・・。
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♪ よい音楽を聴きましょう ♫

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Berlioz:
Harold en Italie Op.16
Les Nuits d'été Op.7
La Damnation de Faust Op.24: Le Roi de Thulé
Antoine Tamestit(Va) for Op.16 & 24
Anne Sofie von Otter(Ms) for Op.7 & 24
Les Musiciens du Louvre-Grenoble, Marc Minkowski
ベルリオーズ:
・イタリアのハロルド op.16
・夏の夜 op.7
・テューレの王のバラード(『ファウストの劫罰』op.24より)
アントワン・タメスティ(ヴィオラ/1672年ストラディヴァリウス「マーラー」)
アンネ=ソフィー・フォン・オッター(メゾ・ソプラノ)
レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル・グルノーブル(ルーヴル宮廷音楽隊)
マルク・ミンコフスキ(指揮)
このアルバムだが、「ハロルド」はタメスティを、そして「夏の夜」が、なんとワールドクラスの超有名メゾであるオッターを起用してきた。DG専属のオッターを連れてくるとは、いったい何が起きたのであろうか。naïveとしてはこれまた異例の、ぶ厚い豪華ブックレット付き、かつプラCDケースと共にカートン入りの装丁となっている。
ベルリオーズはフランス生まれで、自由形式交響曲の始祖、かつオーケストラ/歌曲専門のロマン派ともいえる偉大な作曲家だ。時期的には先輩に当たるベートーヴェンがドイツ/ウィーンで活躍していて、その晩年にベルリオーズは生まれた計算となる。この二人の作風の違いは歴然としていて、今でこそベートーヴェンは楽聖として尊ばれているが、時代が時代ならば評価は逆転していたかも知れない。片や形式主義的で厳めしく、しかしシンプルでストイックな構築美を探求し、そしてもう一方は奔放にして型に嵌らず、そして自由で悠然たる曲を書いたのだった。
個人的にはベルリオーズはメンデルスゾーンと同等に好きな作家であり、両人とも人の心の中の揺らぎを描写するに天才的なところがある。イタリアをテーマにしたメンデルスゾーンの作品と言えば4番交響曲が異名をイタリアという。どちらもフランスの側から見れば明媚な地中海風の曲想で描いたものだろうが、翳りという点においてはベルリオーズの方が深いし味わいもあってなかなかなのだ。
さて、このアルバムだが、ミンコフスキが大事に育てたルーヴル宮廷音楽隊を更に絞り込んで贅肉を削ぎ落としたかの使い方は非常にストイックな反面、中規模編成だからこそ達成し得る純度の高い弦楽が基底となっている。イタリアのハロルドの名演・名録音は色々とあるが市中のメジャー大規模オケにはないピュアで澄み切ったノン・ヴィブラートによる傑出したクラリティは別格だ。ここにタメスティの切なく太いVaが乗ってきて何とも言われぬ円やかな風情を醸す。ダイナミックレンジの広い演奏と解釈はハロルドの新しいスタンダードとなるのは必至と思われる。
後半はいよいよオッターの登場。冒頭のヴィラネル (Villanelle)だが、邦題のキャプションとしては「野いちごを摘む若い恋人たちの、春を喜ぶ歌」とされる長ったらしい名前を頂いている。これはもうやられてしまう。オッターがメゾであるということが嘘のような伸びやかで透明な高域成分はこれはもう完全にソプラノのテリトリーを侵しているであろう。しかし、第2曲のばらの精 (Le Spectre de la Rose)~第4曲の君なくて(Absence)=「彼方に去った恋人に呼びかける歌」あたりではアルト声域で切々とした粘性を伴って紡がれるのは、紛れもない不世出の現代メゾのなせる技。
このアルバムは素晴らしい出来映えであり、そして長く付き合うには好適なベルリオーズ作品集なのであった。それを見越しての超豪華装丁だと思われる、見栄えに関しても完璧な一枚。フランスのロマン派を原点から中興の祖まで追いかけるには外せない曲集だ。
(録音評)
naïve V5266、通常CD。録音は2011年4月、場所はパリのヴェルサイユ宮オペラ・ロワイヤルとある。制作機材はPyramixとだけクレジットされており詳細は分からない。ブックレットの立派さとセンスの良さがひときわ印象的な完成度の高いアルバムであり、音質もそれに見合う、いや、想像を遙かに超える超高音質を達成している。拡がる音場と完璧な音像定位はいつものnaïveの水準を凌駕するものであり、これが通常CD-DAであるとは俄に信じられない出来映え。
但し、再生はそんなに楽ではないだろう。音場およびアンビエント成分が非常に多く含まれるため、再生系に少しでも不安があるとワンワンと五月蠅く鳴り響くリスクがあって万人にお勧めは出来ないと思料する。装置のコンディションに自身のある人はチャレンジして欲しい。但し、へんてこりんな音がしても即座に落ち込まないように・・。

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by primex64
| 2011-12-27 00:40
| Orchestral
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