2011年 12月 21日
Franck,Debussy,Poulenc: Vc Sonatas@A.Gastinel, C.Désert |
naïveの秋の新譜で、若手にして既に渋く堂々たる活動を続けるアンヌ・ガスティネルと、MIRARE専属のクレール・デゼールをレンタルしてのVcソナタ集。フランス印象楽派の王道を行く作家による、いずれも不世出と言えるVcソナタ(フランクの作品はデルサールによるVnからVcへの編曲版)を三つ並べた力作。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/4197302
Cello Sonatas by Franck, Debussy & Poulenc
Debussy: Cello Sonata
Franck, C: Violin Sonata in A major
~transcription pour celle de Jules Delsart
Poulenc: Cello Sonata, Op. 143
Anne Gastinel(Vc), Claire Désert(Pf)
・フランク(1822-1890):ソナタ イ長調
(原曲:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ/ジュール・デルサール編)
・ドビュッシー(1862-1918):チェロ・ソナタ ニ短調
・プーランク(1899-1963):チェロ・ソナタ
アンヌ・ガスティネル(チェロ/1690年製テストーレ、Fonds Instrumental Francais 貸与)
クレール・デゼール(ピアノ)
このCDは、フランスではつとに有名なベストセラー・チェリストであるアンヌ・ガスティネルがnaïveに録音した15枚目のアルバムとなる。この録音であいかたを務めるのはガスティネルといつも組んでいるPf奏者である、MusicArenaお馴染みのクレール・デゼール。この二人が織りなすのはフランス室内楽の金字塔とされるフランクのVnソナタのVc編曲の決定版、そしてドビュッシー、プーランクのソナタである。
ガスティネルは1971年生まれで、ピアノとオーボエを勉強する傍ら、実に4歳でチェロを弾き始めている。彼女は10歳のときにコンサート・ソリストとしてテレビでデビューを飾る。そしてその5年後、リオン音楽学校を首席で卒業。彼女はその後、パリ国立高等音楽院を卒業する。1989年、ガスティネル18歳にしてスヘフェニンゲン国際コンペティションで優勝、そしてプラハの春・国際音楽コンクールに出場し、フランス人としては実に40年ぶりのファイナリストとなったのだ。
フランクのVnソナタは数多の演奏がある。昔はよく演奏されたこのデルサールによるVc版は昨今ではあまり出番がない。今までは、オクターブ下がることによる湿潤で落ち着いた雰囲気ばかりがメリットとして、また、Vnに負けないほどのVcのアクロバティックな技巧が強調されてきた風に感じられるデルサール版だが、ガスティネルとデゼールの解釈はちょっと違っていて、湿潤と乾燥、明と暗、そして屹立する厳しさと寄り添う優しさ・・・、といった揺れ動いて出入りする感情の綾が支配する、とてもエモーショナルな演奏となっている。それでいてVnによる演奏かと思わされるような軽量でストレスのない高速・高域パッセージが全体を支配するものだから、これはVnによる正規版とあまり変わりない表現領域と言える。それは、とりもなおさずガスティネル/デゼールの技巧が素晴らしい、とも言えるのだが、それ以前に、彼女らのこの曲に対する思い入れとお洒落な解釈の優位性が基底を作っていると解するべきだろう。これはなかなかの演奏だ。
ドビュッシーの揺れ動くこのソナタ、やはり音域から言って無理がなくてガスティネルの紡ぐメロディは変幻自在であり、また基礎を作り出すデゼールの好アシストが白眉。ドビュッシーの音楽はこの曲も含めて無伴奏では厳しいが、ここでのガスティネルの弾き出すVcの音はそのタブーを可能にするのではないかとの錯覚に陥るほど浮遊感の強い立体構成となっている。勿論、そこはかとないデゼールの伴奏がそのフワフワとした風情を下支えしているのは言うまでもない。そして最後のプーランクだが、これが現在のガスティネルの演奏パフォーマンスと美しい解釈およびその充実度を最も正確に表した演奏ではなかろうか。この作品はそれぞれの楽章に脈絡はなく、そして各々が独自の美学を持って閉じられる組曲形式の名曲なのだが、これをなんとも言われぬ強い飛翔感を基調として紡いでいく。最終トラックのフィナーレ、堂々と太く単純化された第一主題、それを規範として変奏を繰り返して遙か遠方へ飛散させていくプーランク独特の(いや、サン=サーンスやフォーレ、フランクにも通ずる)パッセージを厳しくそして優しく、時に楽しく組み立てていく彼女らのドライなセンスに脱帽だ。
(録音評)
naive V5259、通常CD。録音は2011年4月、場所は昨今では頻繁に録音サイトとして使われるMC2:Grenoble(グルノーブル)だ。機材のクレジットによれば、マイク:Neumann M149 Tube、DPA 4003、Schoeps MK4V、マイクプリ:DAD AX24、DPA HMA5000AD、コンバータ:DAD AX24、編集機:Pyramix、96kHz/24bit とある。この録音は音質が極めて優秀であり、特にサウンドステージの静寂さと漆黒のノン・カラーレーションが特徴となる。独奏楽器をここまで精密、かつノーブルに捉えた録音は昨今では珍しい。抽象的な言い方だが、アーティスティックな独特の香りを秘めた録音だ。当然にして、あまり人に知られたくない密やかな名盤として所有する愉悦に浸るとしよう・・・。
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♪ よい音楽を聴きましょう ♫
http://www.hmv.co.jp/product/detail/4197302
Cello Sonatas by Franck, Debussy & Poulenc
Debussy: Cello Sonata
Franck, C: Violin Sonata in A major
~transcription pour celle de Jules Delsart
Poulenc: Cello Sonata, Op. 143
Anne Gastinel(Vc), Claire Désert(Pf)
・フランク(1822-1890):ソナタ イ長調
(原曲:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ/ジュール・デルサール編)
・ドビュッシー(1862-1918):チェロ・ソナタ ニ短調
・プーランク(1899-1963):チェロ・ソナタ
アンヌ・ガスティネル(チェロ/1690年製テストーレ、Fonds Instrumental Francais 貸与)
クレール・デゼール(ピアノ)
このCDは、フランスではつとに有名なベストセラー・チェリストであるアンヌ・ガスティネルがnaïveに録音した15枚目のアルバムとなる。この録音であいかたを務めるのはガスティネルといつも組んでいるPf奏者である、MusicArenaお馴染みのクレール・デゼール。この二人が織りなすのはフランス室内楽の金字塔とされるフランクのVnソナタのVc編曲の決定版、そしてドビュッシー、プーランクのソナタである。
ガスティネルは1971年生まれで、ピアノとオーボエを勉強する傍ら、実に4歳でチェロを弾き始めている。彼女は10歳のときにコンサート・ソリストとしてテレビでデビューを飾る。そしてその5年後、リオン音楽学校を首席で卒業。彼女はその後、パリ国立高等音楽院を卒業する。1989年、ガスティネル18歳にしてスヘフェニンゲン国際コンペティションで優勝、そしてプラハの春・国際音楽コンクールに出場し、フランス人としては実に40年ぶりのファイナリストとなったのだ。
フランクのVnソナタは数多の演奏がある。昔はよく演奏されたこのデルサールによるVc版は昨今ではあまり出番がない。今までは、オクターブ下がることによる湿潤で落ち着いた雰囲気ばかりがメリットとして、また、Vnに負けないほどのVcのアクロバティックな技巧が強調されてきた風に感じられるデルサール版だが、ガスティネルとデゼールの解釈はちょっと違っていて、湿潤と乾燥、明と暗、そして屹立する厳しさと寄り添う優しさ・・・、といった揺れ動いて出入りする感情の綾が支配する、とてもエモーショナルな演奏となっている。それでいてVnによる演奏かと思わされるような軽量でストレスのない高速・高域パッセージが全体を支配するものだから、これはVnによる正規版とあまり変わりない表現領域と言える。それは、とりもなおさずガスティネル/デゼールの技巧が素晴らしい、とも言えるのだが、それ以前に、彼女らのこの曲に対する思い入れとお洒落な解釈の優位性が基底を作っていると解するべきだろう。これはなかなかの演奏だ。
ドビュッシーの揺れ動くこのソナタ、やはり音域から言って無理がなくてガスティネルの紡ぐメロディは変幻自在であり、また基礎を作り出すデゼールの好アシストが白眉。ドビュッシーの音楽はこの曲も含めて無伴奏では厳しいが、ここでのガスティネルの弾き出すVcの音はそのタブーを可能にするのではないかとの錯覚に陥るほど浮遊感の強い立体構成となっている。勿論、そこはかとないデゼールの伴奏がそのフワフワとした風情を下支えしているのは言うまでもない。そして最後のプーランクだが、これが現在のガスティネルの演奏パフォーマンスと美しい解釈およびその充実度を最も正確に表した演奏ではなかろうか。この作品はそれぞれの楽章に脈絡はなく、そして各々が独自の美学を持って閉じられる組曲形式の名曲なのだが、これをなんとも言われぬ強い飛翔感を基調として紡いでいく。最終トラックのフィナーレ、堂々と太く単純化された第一主題、それを規範として変奏を繰り返して遙か遠方へ飛散させていくプーランク独特の(いや、サン=サーンスやフォーレ、フランクにも通ずる)パッセージを厳しくそして優しく、時に楽しく組み立てていく彼女らのドライなセンスに脱帽だ。
(録音評)
naive V5259、通常CD。録音は2011年4月、場所は昨今では頻繁に録音サイトとして使われるMC2:Grenoble(グルノーブル)だ。機材のクレジットによれば、マイク:Neumann M149 Tube、DPA 4003、Schoeps MK4V、マイクプリ:DAD AX24、DPA HMA5000AD、コンバータ:DAD AX24、編集機:Pyramix、96kHz/24bit とある。この録音は音質が極めて優秀であり、特にサウンドステージの静寂さと漆黒のノン・カラーレーションが特徴となる。独奏楽器をここまで精密、かつノーブルに捉えた録音は昨今では珍しい。抽象的な言い方だが、アーティスティックな独特の香りを秘めた録音だ。当然にして、あまり人に知られたくない密やかな名盤として所有する愉悦に浸るとしよう・・・。
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by primex64
| 2011-12-21 23:59
| Solo - Vc
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