2011年 12月 18日
ヤマハNP-S2000ネットワークプレーヤ試聴会@泉岳寺 |
以前、スマホのテクノロジー系ニュースに付いていたリンクから申し込んで当選した首記の試聴会へPさんと二人で行ってきた。この日は、午前がクラシックの部、午後が軽音楽の部ということで、申し込んでいたのは午前の部。朝10:30スタートの12:00終わりというスケジュールで、土曜に早起きするのはちょっと辛かったが、まぁなんとか・・。
東横線でいったん横浜まで出て、後は京急の快特で泉岳寺まで乗り換え無しで一直線、25分の乗車時間だった。ヤマハの東京事業所は泉岳寺A3出口から1分足らずと便利なロケーションだ。泉岳寺駅の北の改札前でPさんと待ち合わせて試聴会場へと向かう。受付には名簿があり、係の女性から出欠確認がとられ、終わると地下の試聴室へ案内された。ここは、3年ほど前にA-S2000とCD-S2000の発売直前の試聴会が開催されたときに来て以来だ。今回招かれたのは15名ほどで全員が出席していて満席となった。
NP-S2000の詳細な仕様はここでは割愛するが、要するにDLNAサーバにIP接続してD/Aするネットワークプレーヤだ。
このプレーヤは薄型でスタイリッシュかつシンプルであり、他のSシリーズ・コンポーネントとデザイン上の整合性を取っている。このプレーヤの操作は、他のクライアント上で動く専用コントロール・アプリをIPを介して行う仕組みだ。
このコントロール・アプリはiOS版、Win版、そしてAndroid版があるが、いずれもタブレット以上の端末を要求する(つまり狭いスマホ画面では無理)。DLNAサーバを収めたPCやNAS、そしてコントロール・アプリを動かすクライアントがそれぞれWi-Fi接続されるような環境であるならば実にすっきりと構成できるというわけだ。
コントロール・アプリは、要はiTunesやFoobar2Kの様な音源ファイル選択/再生機能を持っていると思えば間違いない。但し、再生自体はNP-S2000という専用ハードウェア上で実行される。
この試聴会の第一の主旨は、要するに通常のCDPの様な物理回転系をもつ従来プレーヤにはない、ネットワーク再生方式だからこそのアドバンテージを比較試聴によって示すことだという。主として同じ音源をCD-S2000とNP-S2000で聴き比べるスタイルであった。また第二の主旨はハイレゾ(ハイビット・ハイサンプリング)音源をネット上のeONKYOやiTunes Storeなどの音楽ストアからダウンロードして聴く世界はCDPにはない高品位なものであるということをデモすること。
第一の主旨に関してであるが、これは恐らくは、一般論的に言われているような観点においては正しい。何故、試聴をしておきながら「恐らく」なのか? だが、この日の試聴機材の音が余りに酷くて、そんな機微を穿つような比較が出来なかったためだ。ソース機器はこのNP-S2000、回転系はCD-S2000 CD/SACDプレーヤ、送り出し機器がA-S2000プリメイン、そしてスピーカーがB&W 802Dという構成。
世間では悪い機材とは言われないかも知れないけれど、出て来た音は最悪に近い状態だ。まず音がスカキンで楽器の音を正しく再現していない。次に音像がうまく定位せず気持ち悪く肥大、また作られる音場は滅茶苦茶な状態でグルグルと回る。そしてなによりも30Hz以下がバッサリと切れているためにコンバスがあるスケール以下で消失し、グランカッサに至っては最初から登場しない。おまけにトゥッティやフォルティッシモでは音がサチって激しく破綻し聴くに耐えない異音を発する。これはアナログアンプが負荷を巧くグリップ出来ていない時の典型的な症状で、最終段の電流供給能力がスピーカーの逆起電力を御しきれていないのが明らか。
オーディオ界で独特のプレゼンスを保ってきたヤマハの試聴環境がこの状態であるというのは、長年に渡りこの世界と付き合ってきた自分としては悲しい限りだ。もうちょっと何とかならないものだろうか・・。
味の素サウンドのB&W 802Dの代わりに渋くてニュートラル基調のヤマハSoavo-1、A-S2000の代わりに駆動力抜群のD級アンプ、ヤマハMX-D1をあてがえば間違いなく普通の再生音が出せたはずだ。また、CD-S2000の音はやはりスカキンであり、ジッタも多いせいかシャーシャー言っていたのが気になるところ。
ここは、10年ほど前の古い製品だが普通の音がするヤマハGT-CD2などのほうが普遍的だったろうに(SACDは掛からないが・・)。どうもこのSシリーズは音決めをエキセントリックな方向に振っているのが戴けないところ。アンケートを書いて出してきたが、自由記述欄には前述の通りの危惧を忌憚なく書かせて頂いた。
かようの劣悪な試聴環境のなか、それでもNP-S2000はCD-S2000よりはおとなしくて静寂、それなりに純度の高い音を出すことは判別できた。が、これは、ネットワーク再生だからこその優位点かといわれればちょっと疑問で、真面目に作られたCDP/SACDPならばネットワーク再生によるクォリティを下回ると言うことはまずないはずだ。寧ろこれと逆で、一定レベル以上のCDP/SACDPの品位をネットワーク再生で凌駕することの方が極めて困難である。今回の場合、NP-S2000のDACはCD-S2000のDACと設計が共通というが、この音質差はNP-S2000のネットワーク再生方式の優位性を示すものではなく、CD-S2000のトランスポートの出来映えに問題があると言うべきだろう。
※ちょっと驚いたのが、CD-S2000やNP-S2000の音決めにはアキュのDP-77を規範としたとのコメントがあったこと(写真にも映っているが・・)。元々DP-77はオーディオ・マニア受けする様な演色度の高い音質設定なのでそれを真似てはいけないと思う。真似るなら地味系でニュートラルなDP-100/DC-101やDP-85などをターゲットとして欲しかった。でも、確かに、DP-77の過度にフローラルに振った気配はある程度忠実に再現されており、そういった点においては当初目標をクリアはしている。但し、「ナチュラルサウンド」を標榜するならば目標はもうちょっと高い水準に合わせて欲しかったところだが・・。
というわけで、ちょっと散々な試聴会であった。敢えての救いは説明を担当されたヤマハ広報の上席の人の解説は分かりやすく、またこの人物の聴感は非常に的確で音楽的嗜好も多彩、終始に渡り理性的で温厚な人柄がよく出ていて好感した。
ヤマハエレクトロニクスマーケティング株式会社 企画・広報室
(ヤマハ株式会社東京事業所B1F AV試聴室)
東京都港区高輪2-17-11 日本生命高輪ビル
電話: 03-5488-5465
最寄: 都営地下鉄 泉岳寺A3出口 1分
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♪ よい音楽を聴きましょう ♫
東横線でいったん横浜まで出て、後は京急の快特で泉岳寺まで乗り換え無しで一直線、25分の乗車時間だった。ヤマハの東京事業所は泉岳寺A3出口から1分足らずと便利なロケーションだ。泉岳寺駅の北の改札前でPさんと待ち合わせて試聴会場へと向かう。受付には名簿があり、係の女性から出欠確認がとられ、終わると地下の試聴室へ案内された。ここは、3年ほど前にA-S2000とCD-S2000の発売直前の試聴会が開催されたときに来て以来だ。今回招かれたのは15名ほどで全員が出席していて満席となった。
NP-S2000の詳細な仕様はここでは割愛するが、要するにDLNAサーバにIP接続してD/Aするネットワークプレーヤだ。


コントロール・アプリは、要はiTunesやFoobar2Kの様な音源ファイル選択/再生機能を持っていると思えば間違いない。但し、再生自体はNP-S2000という専用ハードウェア上で実行される。
この試聴会の第一の主旨は、要するに通常のCDPの様な物理回転系をもつ従来プレーヤにはない、ネットワーク再生方式だからこそのアドバンテージを比較試聴によって示すことだという。主として同じ音源をCD-S2000とNP-S2000で聴き比べるスタイルであった。また第二の主旨はハイレゾ(ハイビット・ハイサンプリング)音源をネット上のeONKYOやiTunes Storeなどの音楽ストアからダウンロードして聴く世界はCDPにはない高品位なものであるということをデモすること。
第一の主旨に関してであるが、これは恐らくは、一般論的に言われているような観点においては正しい。何故、試聴をしておきながら「恐らく」なのか? だが、この日の試聴機材の音が余りに酷くて、そんな機微を穿つような比較が出来なかったためだ。ソース機器はこのNP-S2000、回転系はCD-S2000 CD/SACDプレーヤ、送り出し機器がA-S2000プリメイン、そしてスピーカーがB&W 802Dという構成。
世間では悪い機材とは言われないかも知れないけれど、出て来た音は最悪に近い状態だ。まず音がスカキンで楽器の音を正しく再現していない。次に音像がうまく定位せず気持ち悪く肥大、また作られる音場は滅茶苦茶な状態でグルグルと回る。そしてなによりも30Hz以下がバッサリと切れているためにコンバスがあるスケール以下で消失し、グランカッサに至っては最初から登場しない。おまけにトゥッティやフォルティッシモでは音がサチって激しく破綻し聴くに耐えない異音を発する。これはアナログアンプが負荷を巧くグリップ出来ていない時の典型的な症状で、最終段の電流供給能力がスピーカーの逆起電力を御しきれていないのが明らか。

味の素サウンドのB&W 802Dの代わりに渋くてニュートラル基調のヤマハSoavo-1、A-S2000の代わりに駆動力抜群のD級アンプ、ヤマハMX-D1をあてがえば間違いなく普通の再生音が出せたはずだ。また、CD-S2000の音はやはりスカキンであり、ジッタも多いせいかシャーシャー言っていたのが気になるところ。

かようの劣悪な試聴環境のなか、それでもNP-S2000はCD-S2000よりはおとなしくて静寂、それなりに純度の高い音を出すことは判別できた。が、これは、ネットワーク再生だからこその優位点かといわれればちょっと疑問で、真面目に作られたCDP/SACDPならばネットワーク再生によるクォリティを下回ると言うことはまずないはずだ。寧ろこれと逆で、一定レベル以上のCDP/SACDPの品位をネットワーク再生で凌駕することの方が極めて困難である。今回の場合、NP-S2000のDACはCD-S2000のDACと設計が共通というが、この音質差はNP-S2000のネットワーク再生方式の優位性を示すものではなく、CD-S2000のトランスポートの出来映えに問題があると言うべきだろう。
※ちょっと驚いたのが、CD-S2000やNP-S2000の音決めにはアキュのDP-77を規範としたとのコメントがあったこと(写真にも映っているが・・)。元々DP-77はオーディオ・マニア受けする様な演色度の高い音質設定なのでそれを真似てはいけないと思う。真似るなら地味系でニュートラルなDP-100/DC-101やDP-85などをターゲットとして欲しかった。でも、確かに、DP-77の過度にフローラルに振った気配はある程度忠実に再現されており、そういった点においては当初目標をクリアはしている。但し、「ナチュラルサウンド」を標榜するならば目標はもうちょっと高い水準に合わせて欲しかったところだが・・。
というわけで、ちょっと散々な試聴会であった。敢えての救いは説明を担当されたヤマハ広報の上席の人の解説は分かりやすく、またこの人物の聴感は非常に的確で音楽的嗜好も多彩、終始に渡り理性的で温厚な人柄がよく出ていて好感した。
ヤマハエレクトロニクスマーケティング株式会社 企画・広報室
(ヤマハ株式会社東京事業所B1F AV試聴室)
東京都港区高輪2-17-11 日本生命高輪ビル
電話: 03-5488-5465
最寄: 都営地下鉄 泉岳寺A3出口 1分

♪ よい音楽を聴きましょう ♫
by primex64
| 2011-12-18 23:57
| Audio
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Comments(2)
お久しぶりです、
レポートを読ませてもらいました、ヤマハのA-2000を中古で所有してる物として、今のヤマハには少しガッカリな感じがしてます。
秋葉原のヨドバシでSoavoを聞いてみたのですが、
これもなんだか面白みがないです。
レポートを読ませてもらいました、ヤマハのA-2000を中古で所有してる物として、今のヤマハには少しガッカリな感じがしてます。
秋葉原のヨドバシでSoavoを聞いてみたのですが、
これもなんだか面白みがないです。
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いらっしゃいませ! お久しぶりです。
Soavo-1は相当の駆動力を持ったアンプじゃないとまともに鳴りません。普通の中級アナログアンプだとデッドで黴くさい音でしか鳴らず、本領は発揮しません。ハイエンド大出力アナログパワーか、もしくはデジアンで初めて目覚めます。このスピーカーは並の性能ではないです。日本国内ではまるで相手にされていませんが、実は欧州、特に音にうるさい北欧で相当数売れています。皆さんICEpowerとかで鳴らしているようですが。
Soavo-1は相当の駆動力を持ったアンプじゃないとまともに鳴りません。普通の中級アナログアンプだとデッドで黴くさい音でしか鳴らず、本領は発揮しません。ハイエンド大出力アナログパワーか、もしくはデジアンで初めて目覚めます。このスピーカーは並の性能ではないです。日本国内ではまるで相手にされていませんが、実は欧州、特に音にうるさい北欧で相当数売れています。皆さんICEpowerとかで鳴らしているようですが。