2011年 11月 30日
Mozart: P-Con#19 & 23@Hélène Grimaud, BRSO |
DGの秋の輸入新譜で、グリモーのモーツァルトPコン19番と23番、モイカ・エルトマンというソプラノ歌手が歌う歌曲を挟んでいる。DGのCDを買うのは本当に久し振りだ。このグリモーの盤は評判は良く、特に日本では(というか日本だけの現象?)上々の滑り出しのようだ。そうだから、というわけではないがなんとなく買ってみた一枚。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/4209070
Mozart:
Piano Concerto No. 19 in F major, K459
Ch'io mi scordi di te?... Non temer, amato bene, K505
Piano Concerto No. 23 in A major, K488
Mojca Erdmann (Sop. K505)
Hélène Grimaud (piano)
Kammerorchester des Bayerischen Rundfunks
(Bavarian Radio Symphony Orchestra: BRSO)
モーツァルト
・ピアノ協奏曲第19番 ヘ長調 K.459
・レチタティーヴォ『どうしてあなたが忘れられましょう』とアリア『心配しないで、愛する人よ』 K.505
・ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K.488
モイカ・エルトマン(ソプラノ、K.505)
バイエルン放送室内管弦楽団
エレーヌ・グリモー(ピアノ&指揮)
このアルバムはグリモーにとって二つの「初」が付く作品だ。即ち、DGにおいては彼女の初のライブ収録であること、そして初のモーツァルト・コンチェルト録音であることだ。グリモーは23番について「恐らくモーツァルトがかつて書いた最も崇高な協奏曲」とみなしているようで、これは緩徐楽章において「非常に深く、そして切ない痛みを伴う表現に真実のモーツァルト像を見ることが出来る」と述べている。
ヘ長調K.459はそれほど有名な作品ではないだろう。しかしとても特別な活力が漲り、ヴィルトゥオージティに満ちた最終楽章が「純粋にピアニスティックな愉悦」に浸れる曲であるとグリモーは述べている。2つのPコンに挟まれて、モイカ・エルトマンが歌うオケとソプラノ、そしてピアノのためのアリアは非常に美しい。因みに、このアリアはソプラノ歌手のナンシー・ストラーチェ(=フィガロの結婚の初演においてスザンナを演じた当時の名歌手)に対するモーツァルトの愛の告白でもあったと言われている・・。
グリモーはピアノが巧いと改めて感心してしまう。ただ単に巧いだけではなく何ものかに取り憑かれたような真摯で熱情的、かつ時に非常にクールなピアニズムは女流と言うには憚られるような直進性を備えたものだ。そういったグリモーの特質はこのアルバムでは逆の効果を発揮している。これはモーツァルトにしてはあまりに元気でしかも厳めしく、そしてエナジーが強烈過ぎるほどに放散されているのだ。ある友人はこの演奏を評して「まるでベートーヴェンだ」と述べた。言い得て妙だと思った。そう・・、モーツァルトの天性の曲風である変幻自在にして力の抜けた天衣無縫さがまるで感じられない。常に氷壁に対峙するかの如くのこの厳しいグリモーのピアニズムは凡そモーツァルトの「まるっ」としたメリットを引き出せていない。
そんなに頑張らなくても元々上手なグリモーの手にかかればモーツァルトはもっと普通に弾けると思うのであるが。因みにオケの方は元気は元気だが、硬軟、強弱の出し入れは巧妙であり、こちらはサロン風のモーツァルトを十二分に演じている。それだけに表に立つグリモーのピアノが更に突出してしまって強打の空回りが耳に障ってしまうのであった。
(録音評)
DG、4779455、通常CD。録音は2011年7月22,23日、ミュンヘンのプリンツレーゲンテン劇場でのライブ収録。この盤は単純なCD単体売りだが、これ以外に限定盤としてDVD同梱製品があり、更にDVDバンドル設定で国内向け限定版がリリースされている。都合3種類の盤が店頭に並ぶが、国内盤DVD付きは驚くほど強気の値付けで引いてしまい、結局は最もシンプルな輸入CD単体盤を買った。
録音スタッフにはDGの人間は殆どは入っておらず、おおかたがBR Klassicのスタッフの手による。ドイツの放送局、特にBR Klassicの自主制作盤の音質は従来から素晴らしいものがあるが、なぜかこの盤の音質はよろしくない。細密でディテールは捉えているものの音色が華美であってアンビエンスも過剰かつ美しくない。そう、この特質はDG/エミール・ベルリーナのものであって、やはりDG色が明瞭に付いているのだ。ちょっと残念な出来映えだ。
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Mozart:
Piano Concerto No. 19 in F major, K459
Ch'io mi scordi di te?... Non temer, amato bene, K505
Piano Concerto No. 23 in A major, K488
Mojca Erdmann (Sop. K505)
Hélène Grimaud (piano)
Kammerorchester des Bayerischen Rundfunks
(Bavarian Radio Symphony Orchestra: BRSO)
モーツァルト
・ピアノ協奏曲第19番 ヘ長調 K.459
・レチタティーヴォ『どうしてあなたが忘れられましょう』とアリア『心配しないで、愛する人よ』 K.505
・ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K.488
モイカ・エルトマン(ソプラノ、K.505)
バイエルン放送室内管弦楽団
エレーヌ・グリモー(ピアノ&指揮)
このアルバムはグリモーにとって二つの「初」が付く作品だ。即ち、DGにおいては彼女の初のライブ収録であること、そして初のモーツァルト・コンチェルト録音であることだ。グリモーは23番について「恐らくモーツァルトがかつて書いた最も崇高な協奏曲」とみなしているようで、これは緩徐楽章において「非常に深く、そして切ない痛みを伴う表現に真実のモーツァルト像を見ることが出来る」と述べている。
ヘ長調K.459はそれほど有名な作品ではないだろう。しかしとても特別な活力が漲り、ヴィルトゥオージティに満ちた最終楽章が「純粋にピアニスティックな愉悦」に浸れる曲であるとグリモーは述べている。2つのPコンに挟まれて、モイカ・エルトマンが歌うオケとソプラノ、そしてピアノのためのアリアは非常に美しい。因みに、このアリアはソプラノ歌手のナンシー・ストラーチェ(=フィガロの結婚の初演においてスザンナを演じた当時の名歌手)に対するモーツァルトの愛の告白でもあったと言われている・・。
グリモーはピアノが巧いと改めて感心してしまう。ただ単に巧いだけではなく何ものかに取り憑かれたような真摯で熱情的、かつ時に非常にクールなピアニズムは女流と言うには憚られるような直進性を備えたものだ。そういったグリモーの特質はこのアルバムでは逆の効果を発揮している。これはモーツァルトにしてはあまりに元気でしかも厳めしく、そしてエナジーが強烈過ぎるほどに放散されているのだ。ある友人はこの演奏を評して「まるでベートーヴェンだ」と述べた。言い得て妙だと思った。そう・・、モーツァルトの天性の曲風である変幻自在にして力の抜けた天衣無縫さがまるで感じられない。常に氷壁に対峙するかの如くのこの厳しいグリモーのピアニズムは凡そモーツァルトの「まるっ」としたメリットを引き出せていない。
そんなに頑張らなくても元々上手なグリモーの手にかかればモーツァルトはもっと普通に弾けると思うのであるが。因みにオケの方は元気は元気だが、硬軟、強弱の出し入れは巧妙であり、こちらはサロン風のモーツァルトを十二分に演じている。それだけに表に立つグリモーのピアノが更に突出してしまって強打の空回りが耳に障ってしまうのであった。
(録音評)
DG、4779455、通常CD。録音は2011年7月22,23日、ミュンヘンのプリンツレーゲンテン劇場でのライブ収録。この盤は単純なCD単体売りだが、これ以外に限定盤としてDVD同梱製品があり、更にDVDバンドル設定で国内向け限定版がリリースされている。都合3種類の盤が店頭に並ぶが、国内盤DVD付きは驚くほど強気の値付けで引いてしまい、結局は最もシンプルな輸入CD単体盤を買った。
録音スタッフにはDGの人間は殆どは入っておらず、おおかたがBR Klassicのスタッフの手による。ドイツの放送局、特にBR Klassicの自主制作盤の音質は従来から素晴らしいものがあるが、なぜかこの盤の音質はよろしくない。細密でディテールは捉えているものの音色が華美であってアンビエンスも過剰かつ美しくない。そう、この特質はDG/エミール・ベルリーナのものであって、やはりDG色が明瞭に付いているのだ。ちょっと残念な出来映えだ。
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by primex64
| 2011-11-30 22:47
| Concerto - Pf
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