Ives: Concord Sym/Copland: Sym for Org&Orch@MTT/SFSO |

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Michael Tilson Thomas conducts Ives & Copland
Ives, C: A Concord Symphony / orch. Henry Brant
Copland: Symphony for organ and orchestra
Paul Jacobs (Org.)
San Francisco Symphony, Michael Tilson Thomas(Cond.)
アイヴズ/ヘンリー・ブラント編:コンコード交響曲(原曲:コンコード・ソナタ)
コープランド:オルガン交響曲
ポール・ジェイコブス(オルガン:=コープランド)
サンフランシスコ交響楽団
マイケル・ティルソン・トーマス(指揮)
チャールズ・アイヴスもアーロン・コープランドもアメリカの作曲家であり、そういった点においては今までのMTT/SFSOが取り組んできた欧州の重厚系作品とは系統を異にする録音となっている。
コンコード・シンフォニーは、元々はアイヴスのPソナタ#2が原曲で、それをヘンリー・ブラントというカナダ生まれのアメリカ人作曲家/編曲家が近年になってオーケストレーションした作品であり、かなり大規模な四楽章形式の曲だ。名称や経緯はそれとなく知ってはいたが、原曲を含め、聴くのは勿論今回が初めてだ。作風は現代曲と言ってよい風情だが12音技法やトーン・クラスタ系列の聴き辛いものではなくて、どちらかというとコルンゴルト、もうちょっと遡るとシマノフスキに近い調性を備えた不可思議な展開を示すもの。純和音系のパートは2楽章の中間部に現れるが、残りは不協和音が支配する陰鬱で濃密な陰翳を湛えた作品だ。このSACDは実は一ヶ月以上、ほぼ毎日のように帰宅後の深夜に聴いているのであるがちょっと癖になるモルヒネ的な要素を多分に含んでいると思われる。3~4楽章も不思議な不協和音が底辺にはあるものの明滅するリズムが飽きの来ない展開を作っている。部分的にはマーラーのメロディーラインやオーケストレーションを範としたような分かり易いところも出現する。楽しく聴き応えのする曲だが、演奏時間が非常に長いので通しで聴くには多忙な平日には適さないかも知れない。(そういった点においてもマーラーやブルックナーに通ずるものがある・・)
カップリングされているコープランドのオルガン交響曲もアメリカの著名作家による作品で、これも録音、演奏機会ともに少ないと思う。大規模でドラマティックな展開だが、これはある意味アメリカっぽい雰囲気が漂っている。アイヴス/ブラントの作品も不協和音を主軸にしていたが、このコープランドの作品はジャズの不協和音に似た仮想的かつ計算された不協的な和音であって、想定される延長線上には明確な対旋律が存在する。そこへオルガンの重厚な通奏低音が加わってメロディー・ラインを下支えするのだ。色彩感が明瞭で明らかにアメリカ的、というか、ガーシュインのストレートな作風に捻りを二回くらい加えたような感じであり、これはこれでゴージャス、かつ音の洪水に身を任せて楽しむには最適な作品だ。旋律とちょっと崩れた和声はそれほど奇を衒ったものではなく、どちらかというとニールセンを脳裏に浮かべれば大きな間違いはないだろう。リズム的、また和音の展開は断片的にラヴェルの左手Pコンを想起させられる部分が登場する。
どちらの作品も初めて聴く新手のもので、演奏の上手い下手が判別できるわけではないが、MTTもSFSOもそつなく緊迫感に満ちた演奏を展開していると言える。うまい表現が見当たらないのであるが「正しい不協和音」が奏でられているようだ。
(録音評)
SFS Media、82193600382、SACDハイブリッド、録音は2010年2月3-6日(アイヴス)、9月22-25日(コープランド)、場所はSFSOの本拠、サンフランシスコのデイヴィス・シンフォニー・ホールでの客を入れたライヴ収録である。今までマーラー・チクルスを録ってきたTritonus Musikproduktion GmbHの社名も、社長にして主任エンジニアであるAndreas Neubronnerの名もクレジットされていない。しかし、音質は恐ろしく透徹されており、過去の超優秀録音の系譜を完全に承継していると言える。寧ろ、更に透明度が増して奥行き、左右方向ともに臨場感が増している感があって凄い。しかも、これは客を入れたライヴであり、多少なりともデッドとなるホール環境を加味すればとんでもなく優秀な録音と言える。この盤はSACDプレーヤーで再生すべきである。このCDレイヤーは他の多くのCD-DA優秀録音を完全に凌ぐのであるが、それでもSACDレイヤーの超絶的な音質によって完全に霞んでいるのだ。
