Brahms: P-Quintet Op.34 Etc@Modigliano Quartet,Neuburger,Hill |
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Brahms:
Piano Quintet in F minor, Op.34
Two songs for contralto with viola obbligato, Op.91
Jean-Frédéric Neuburger (Pf)
Andrea Hill (Ms) (Op.91)
Modigliano Quartet
ブラームス:
1. ピアノ五重奏曲ヘ短調 Op.34
2. 2つの歌曲 Op.91(ヴィオラ、メゾ・ソプラノ、ピアノのための)
ジャン=フレデリック・ヌーブルジェ(ピアノ)
アンドレア・ヒル(メゾ・ソプラノ:2)
モディリアーニ四重奏団
ブラームスは生涯にわたり小編成の室内楽曲(トリオ~セクステット)を、しかも多様な楽器向けに数多く残した。その中にあってこのPクインテットは、ブラームスが31歳、青年期から中年期に入ろうとしている頃に書かれた大規模な作品である。個人的には、これより若い頃に書かれたPカルテットOp.25(例えばこれ)と、このP五重奏曲はブラームスの前期室内楽作品としては双璧だと思っている。
尚、この作品は元々はストリング・クインテットとして着想されていたのであるが、余り受けが良くなかったせいか直後に2台4手連弾のためのPソナタとして書き直しをしている。尚、この楽譜は現在も残されており大きな音楽祭等では割とポピュラーに弾かれている作品の一つ。
ブラームスの若い頃の作品はとても厳しくて男性的、そして剛直な展開と熱情的な風合いが特徴であり、このPクインテットもまたそういったテンペラメンタルな作品である。これをヌーブルジェとモディリアーニSQがどう解釈するのか、というところが興味深かった。結論から言うと非常に素晴らしい演奏だ。激情が激しく迸り、時に仄暗くて瞑想的な演奏であり、強い緊迫感を伴う一糸乱れない高精度なアンサンブルが展開される。
ヌーブルジェのピアノは変幻自在であり、さりとて前に取り上げたツェルニーの様なメカニカルな弾き方はかなり抑えていて、叙情的かつ柔和な面も満載、多様性を内包するブラームス前期作品の神髄を抉っていると言える。対するモディリアーニSQの発するエナジー感は非常に強く、とても精密なくせに熱いという二律背反を同時に獲得している理想的なチームと見受ける。全体としてみれば弦楽アンサンブルの妙味がぎっしりと詰まったうえにヌーブルジェの高度な技巧/情感表現が重畳されるという美味しいアルバムだ。
カップリングされている歌曲は中年域に達したブラームスが書いた柔和で静謐そして簡潔な起承転結構造をもった小品で、これをPf/Va/Msという小さな構成で紡いでいく。欧文曲名からも分かる通り、ブラームスはこの曲をコントラルト(Alt)用に書いたのだが、このCDでは何故かMsが歌っている。このMs、アンドレア・ヒルの浸透性の強い声には聴き惚れてしまう。彼女は著名なオペラ歌手として既に名を馳せているそうだが、今年になってヌーブルジェとのリサイタル・ツアーを精力的にこなしているようでマーラーのリュッケルト歌曲集、デュパルクやフォーレなど幅広いレパートリーで好評らしい。
(録音評)
MIRARE MIR130、通常CD。録音は2010年9月12~15日、場所はTAP(Théâtre & Auditorium de Poitiers)とある。このCDはこのところのMIRAREとしては珍しく再生が難しい。このTAPというホールは劇場と音楽ホールを兼ねた構造らしく、劇場としては700席、ホールとしては1000席の収容人員であり、いずれにせよ中型に分類されるホールだ。EUの中でも新しくて取り分け音質が優れているとの定評があるらしい。
最初かけた時、靄がかかったような音色で、かつ、音像が散乱気味、そして音場もくっきりとは展開せず失敗したかと思った。しかし何度も再生しているうちにシステムが馴染んでくるのが分かる。現在、リファレンスであるDP-85はオーバーホールのためアキュフェーズへ行っているので、代役のDP-70Vで聴いている。線はDP-85に比べて太くなって、アンビエント成分が少し後退はするけれども、音場展開や音像表現自体はそれほど異なったものではない。いまだにSPは学習を続けており、最終的にどんな状態に聴こえるようになるのかはまだ明瞭には見えてこない。これはひょっとすると超絶的な高性能録音盤である可能性が高い。我が家のシステムは十分に老成されていたかと思っていたのであるが、どうやらまだまだ巧く対応できないディスクが存在するようだ。
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