9月24日(土)の昼は市営地下鉄方面へ出かけた折、吉野町で降りてラーメンを食べた。なかなか機会がなくて賞味出来ていなかった旭川ラーメンの名店と誉れ高いぺーぱんへ。時間的には13:00を回っていたからか、店に着いた時には空いており、ご近所の常連と思しき年配の男性が一人、ラーメンをゆっくりと慈しむように召し上がっていた。この客人は元々無口なのであろうか、店の女将さんが時々声を掛けると頷く仕草を見せるものの声を発して受け答えするというふうではない。だが殆ど毎日のように訪れてラーメンを食しているようで店のご主人も女将さんも淡々としつつ暖かい応対である。
今時のラーメン屋の風情からは隔絶されたかの昭和レトロのこの店の造作は相当に年季が入っており小綺麗とは言えない状態である。しかし、カウンタの椅子やテーブルは驚くほど綺麗に拭き清められており実はとても清潔だ。当然にして自動券売機などという近代的なシステムは導入されておらず、女将さんに指示されたカウンタ席に座ってから口頭で注文を告げる昔ながらのラーメン屋だ。

頼んだのは家内は味噌野菜ラーメン、私が醤油野菜チャーシューメンだ。厨房は客の座るカウンタの目の前であり調理の様子は手に取るように分かる。麺を茹で釜に投入した後、私が頼んだチャーシューを肉塊から数枚分、手早く切り出す。そして丼の準備にかかる。即ち醤油ベースの丼にはタレを小型しゃもじで数杯注ぎ、味噌ベースの丼には特製味噌を分量を匙で測って投入する。

続いて冷蔵庫から野菜(もやし)を取り出して専用ガスコンロに常駐する中華鍋を熱した後に投入、サッと炒めてからそのまま温熱状態で置き、今度は丼へスープを注いで攪拌する。十数秒後に麺を素早く湯切りして丼に移すと同時に中華鍋の中から炒め野菜をザザッと移して盛る。最後にはそれぞれの注文に応じたトッピングを添え付け、間髪入れずカウンタ越しにサーブするという手筈である。

この間、次々に常連と思しき客が入店してくる。女将さんは手を休めることなく注文を威勢良く復唱し、ご主人は次のオーダーに向けて丼の準備へとすかさず取りかかる。我々のラーメンがサーブされた段階で中華鍋振りはご主人へスイッチし女将さんは麺茹でと具の準備へと移る。この様な流麗なコンビネーションで次々と注文の品を仕上げていくのだ。

サーブされたラーメンは、見た目にも昭和レトロを色濃く出した美味しそうな一品だ。家内の頼んだ味噌は、ボリューム満点の野菜を纏ってサーブされた。スープは明るい褐色であり、味は旨味・甘み・コクがバランスする絶妙なもの。麺は濃い黄色の中細縮れ麺であって、小麦の香りと鹹水の風味が昔懐かしい風情を醸す。

この麺に味噌仕立ての絶品スープが良く絡んで得も言われぬ美味さを演出している。この麺と味噌ベースは非常に相性が良い。これは当たり前の話であって特段に申し添えることではないかも知れないが。私の頼んだ醤油野菜チャーシューは、丼の表面にびっしりとチャーシューを並べていて麺の姿を窺い知ることは出来ない。

チャーシューを少しどけて下の方から混ぜ返して麺を取り出すと、例の濃い黄色の中細縮れ麺が現れる。スープは醤油ベースではあるが、若い醤油ではなくて溜まり醤油のような濃厚にしてまったりと熟成された醤油であり、これが実に懐かしい昭和レトロの旭川、また似たところでは東京や喜多方、佐野のラーメンを想起させられるものである。
もうちょっと若い醤油を合わせると富山の大喜に似た感じともなろうか。この鄙びた醤油スープとこの麺はやはり絶妙のマッチングを見せるのである。豚本来の風味を閉じ込めた古風な仕上げのこのチャーシューとシャキシャキした炒めもやしを絡めつつズズッと一気に啜ると、気分は昭和40年代へと突然タイムスリップするのであった。
ぺーぱんは旭川からこの地にやってきてしっかりと根を降ろしている、しかも良い仕事をしている貴重なラーメン屋である。今後とも息長く頑張っていって欲しい。

元祖北海道旭川ラーメン ぺーぱん
神奈川県横浜市南区高砂町3-34
電話: 045-243-0595
営業:
11:30~21:00(平日)
11:30~16:00、17:30~21:00(土日祝)
定休: 水曜日
最寄: 市営BL吉野町 4分

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