Beethoven: Vn-Sonata #9 "Kreutzer" Etc@Alina Ibragimova,Cédric Tiberghien |
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Beethoven: Violin Sonatas Volume 3
Beethoven:
Violin Sonata No. 6 in A major, Op.30 No.1
Violin Sonata No. 3 in E flat major, Op.12 No.3
Violin Sonata No. 9 in A major, Op.47 "Kreutzer"
Alina Ibragimova (Vn) & Cédric Tiberghien (Pf)
ベートーヴェン:
・ヴァイオリン・ソナタ第6番イ長調op.30-1
・ヴァイオリン・ソナタ第3番変ホ長調op.12-3
・ヴァイオリン・ソナタ第9番イ長調op.47『クロイツェル』
アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン)
セドリック・ティベルギアン (ピアノ)
イブラギモヴァはロシア出身でまだ若いが、現在はロンドンを活動拠点としていて、BBCを通じて根強いファンを獲得している著名ソリストである。HMVの解説にもある通り、来日公演も敢行しておりその名はある程度国内でも知れているのではないだろうか。
不勉強で恐縮だが、このアルバムはベトVnソナタ全集の最終第三弾となるようで、1~2集は聴いていない。そして、あまり基礎知識なしに初めて針を降ろしてびっくりした。この人のVnは恐ろしく微細かつハイスピードであり、かつ若年でありながら相当な完成域に達しているのである。欧州の現在の楽壇で成功している華やかな女流Vn奏者としては多くの名が挙げられる(著名なところではユリア・フィッシャー、ジャニーヌ・ヤンセン・・・)が、この人の場合にはちょっと違った立ち位置のようで、いずれの出自とも異なる玄人気質が感じられる。
このアルバムのトリはクロイツェルだが、その前のOp.30#1、Op.12#3が凄い。大体はベトVnソナタの直進的な美点で勝負すべき作品なのだがイブラギモヴァは少し斜に構えたアーティキュレーションで弾いていく。闊達といえば闊達なのだがちょっと陰影が濃くてかつての20世紀の巨匠たちのような余裕と「でかい」態度が見え隠れする。それだけテクニックに自信があるということなのだろうけれど、更に聴き込むと独特の美学があるようなのだ。それは、昨今のファウストのようにサビの部分で殆どヴィブラートを使わず、そして陳腐なアコーギクによらず確信犯的なデュナーミクを連発することだ。要はマルカート主体にべたつかずに弾ききるのは現代風だけれども、それだけではないソリッドな魅力をベートーヴェンの作品に見いだすのであった。
そしてクロイツェル。特段に変わった演奏ではない。しかし前述のマルカート基調が貫かれていてドライでハイスピード、そして随所で炸裂する加速度感が堪らない出来映えだ。表現は必ずしも良くないが、名人芸の域に達しているクロイツェルと分類されよう。このチクルスを締めくくるに相応しい堂々たる、そして聴くものを圧倒する抑揚と優れた技巧と評しておこう。衝撃的だったサラ・ネムタヌのアルバムに匹敵する、なんとも耳をグリップする演奏なのであった。勿論、ネムタヌの揺動激しい技巧とは真逆な演奏なのであるが。
(録音評)
Wigmore Hall Liveレーベル、WHLIVE0045、通常CD。600名ほどの収容人員しかないウィグモア・ホールはその音の良さではロンドン、いや欧州を代表する音楽専用小型ホールである。東京ではさしずめ紀尾井ホールか石橋メモリアル、東京文化の小ホールに匹敵する規模と性能を備えている立派なホールである。勿論、ウィグモアの方が歴史的には古くて、東京でここに相当する伝統を持つのは日比谷公会堂くらいだが、音響的には勝負にはなっていない。このCD、ウィグモアのなんとも高貴で典雅な響きが堪能できる録音となっており、他のメジャー・レーベルのウィグモア録音のどれよりも優れていると断言出来る。ディテールが見え透くトランスペアレンシーと、相反するかの豊かなアンビエンスが両立しているのだ。このレーベル、今後ちょっと着目してコレクションしたくなってきた・・。
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