2011年 09月 11日
Beethoven: P-Con#1,#2@Shani Diluka, Kwamé Ryan/ONBA |
MIRAREの春の新譜で、シャニの久し振りのアルバムは、なんと驚いたことにドイツ古典派の王道、ベトPコン1番&2番だった。勿論、以前の録音のメンデルスゾーンもあっち(独)系ではあるが、あまりに毛色が違いすぎてどんな演奏をするのか想像もつかなかった。サポートはこのところめきめきと頭角を現してきたクワメ・ライアンとボルドー・アキテーヌが担当する。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/3984075
Beethoven: Piano Concertos Volume 1
Beethoven:
Piano Concerto No. 1 in C Major, Op.15
Piano Concerto No. 2 in B flat major, Op.19
Shani Diluka (piano)
ONBA - Orchestre National Bordeaux Aquitaine, Kwamé Ryan(Cond)
ベートーヴェン:
・ピアノ協奏曲第2番変ロ長調 作品19
・ピアノ協奏曲第1番ハ長調 作品15
シャニ・ディリュカ(ピアノ)
ボルドー・アキテーヌ国立管弦楽団
クワメ・ライアン(指揮)
結論から言うと、もの凄く巧くて素晴らしい完璧なベトPコンだ。ここまで整った、それでいてワクワクしてくるリズミカルでハイスピードなベートーヴェンはこのところ聴いたことがない。1番も2番もどちらも甲乙付けがたく巧いし出色の出来。褒め過ぎと思われるかも知れないが、これは贔屓もなにもなく手放しで賞賛されて然るべき演奏である。
アレグロにおける疾駆感と着実に基底を押さえた旋律進行、及びシンプルで素直な和声把握は目から鱗が落ちるほど新鮮かつ清潔な解釈である。硬軟の素早い出し入れと起伏の浅いアゴーギク、目が覚めるほど大胆なデュナーミクはドイツ古典派、というかベートーヴェン孤高のPコンの神髄を捉えているのだ。緩徐楽章におけるシャニのメロディアスな描写は以前から定評のあるロマンティックなものであり、ここではアレグロにおける筋肉質の疾駆感は影を潜める。しかし弱音における解像度の高さと、決して低下しない透明度は素晴らしいのひとこと。一音一音が弱音であるにも拘わらずバックオケの隅々にまでピアノ弦の波が浸透していくのだ。つまり、弱音部であるがため却ってシャニが弾くピアノの存在感が際立つのである。
終楽章の疾駆感と、ちょっとソリッドでありながら靱性の高いパッセージ描写はぞくぞくするくらい巧いし息継ぐ暇もないくらい目まぐるしくも楽しい展開。特に2番の最終ロンド(アレグロ・スケルツァンド)の付点の主題、そして展開部に時折現れてくるひときわ大胆な連続シンコペーションと高速の装飾音符が織りなす加速度感は往年の巨匠たちに勝るとも劣らないヴィルトゥオージティとエナジーに満ち溢れている。
テキストでどんなに賞賛しようが所詮は音楽なので聴いてみなければこの演奏の真価は推し量れないだろう。ベト好き、或いはPコンのファンは是非聴いてみて欲しいところ。
(録音評)
MIRAREレーベル、MIR126、通常CD。録音は2010年4月、Bordeaux, salle Franklinとある。ピアノはベヒシュタインD282で、これはシャニ自らが曲想に合わせて選択したという。確かに、歪感が少なく、そしてスタインウェイのようにピーキーには鳴かず、フローラルでふくよかな抱擁感がベトPコンには似合っていると思われる。音質はMIRARE典型の透過性の高い優秀録音だ。サウンドステージ展開がコンパクトで、かつ奥へ深く、これは大人の音場空間といえよう。素晴らしいのひとこと。
1日1回、ここをポチっとクリック ! お願いします。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/3984075
Beethoven: Piano Concertos Volume 1
Beethoven:
Piano Concerto No. 1 in C Major, Op.15
Piano Concerto No. 2 in B flat major, Op.19
Shani Diluka (piano)
ONBA - Orchestre National Bordeaux Aquitaine, Kwamé Ryan(Cond)
ベートーヴェン:
・ピアノ協奏曲第2番変ロ長調 作品19
・ピアノ協奏曲第1番ハ長調 作品15
シャニ・ディリュカ(ピアノ)
ボルドー・アキテーヌ国立管弦楽団
クワメ・ライアン(指揮)
結論から言うと、もの凄く巧くて素晴らしい完璧なベトPコンだ。ここまで整った、それでいてワクワクしてくるリズミカルでハイスピードなベートーヴェンはこのところ聴いたことがない。1番も2番もどちらも甲乙付けがたく巧いし出色の出来。褒め過ぎと思われるかも知れないが、これは贔屓もなにもなく手放しで賞賛されて然るべき演奏である。
アレグロにおける疾駆感と着実に基底を押さえた旋律進行、及びシンプルで素直な和声把握は目から鱗が落ちるほど新鮮かつ清潔な解釈である。硬軟の素早い出し入れと起伏の浅いアゴーギク、目が覚めるほど大胆なデュナーミクはドイツ古典派、というかベートーヴェン孤高のPコンの神髄を捉えているのだ。緩徐楽章におけるシャニのメロディアスな描写は以前から定評のあるロマンティックなものであり、ここではアレグロにおける筋肉質の疾駆感は影を潜める。しかし弱音における解像度の高さと、決して低下しない透明度は素晴らしいのひとこと。一音一音が弱音であるにも拘わらずバックオケの隅々にまでピアノ弦の波が浸透していくのだ。つまり、弱音部であるがため却ってシャニが弾くピアノの存在感が際立つのである。
終楽章の疾駆感と、ちょっとソリッドでありながら靱性の高いパッセージ描写はぞくぞくするくらい巧いし息継ぐ暇もないくらい目まぐるしくも楽しい展開。特に2番の最終ロンド(アレグロ・スケルツァンド)の付点の主題、そして展開部に時折現れてくるひときわ大胆な連続シンコペーションと高速の装飾音符が織りなす加速度感は往年の巨匠たちに勝るとも劣らないヴィルトゥオージティとエナジーに満ち溢れている。
テキストでどんなに賞賛しようが所詮は音楽なので聴いてみなければこの演奏の真価は推し量れないだろう。ベト好き、或いはPコンのファンは是非聴いてみて欲しいところ。
(録音評)
MIRAREレーベル、MIR126、通常CD。録音は2010年4月、Bordeaux, salle Franklinとある。ピアノはベヒシュタインD282で、これはシャニ自らが曲想に合わせて選択したという。確かに、歪感が少なく、そしてスタインウェイのようにピーキーには鳴かず、フローラルでふくよかな抱擁感がベトPコンには似合っていると思われる。音質はMIRARE典型の透過性の高い優秀録音だ。サウンドステージ展開がコンパクトで、かつ奥へ深く、これは大人の音場空間といえよう。素晴らしいのひとこと。

by primex64
| 2011-09-11 17:54
| Concerto - Pf
|
Trackback
|
Comments(4)

う、良さそう。。。買わなきゃ。w
0
kenjiさん、ご無沙汰ですw
これ、凄いです。ベトをずっと聴き続けている人にこそお勧めしたいですけれど、ダルなベトに辟易して離脱しそうな人にも特効薬!! これを聴くと見直しますよ。ベートーヴェンって、凄く良いんだぁーーー! ってねww
これ、凄いです。ベトをずっと聴き続けている人にこそお勧めしたいですけれど、ダルなベトに辟易して離脱しそうな人にも特効薬!! これを聴くと見直しますよ。ベートーヴェンって、凄く良いんだぁーーー! ってねww
4番、5番はそれぞれに別格の曲ですが、1~3番も大好きな曲です。それにしてもprimex64さんの評、読んでいてワクワクしますね。
「サイトウ・キネンは元々弦(特にVn)がそれほど綺麗ではなく細密さにも難があるのだが」とは恐れ入りました。
新しいCDを聞く機会がほとんどないので、うれしい情報が多くて、ブログの「お気に入り」にリンクさせていただきました。
kaguragawaさま
ご訪問&コメントありがとうございます。はい、ベートーヴェンのPコンチェルト、Pソナタはどれもが愛すべき作品たちなんですね。国内では交響曲を特に愛でる傾向にありますが、個人的にはベトはクラヴィーア専門(鍵盤楽器)の作家だったと思っております。
MusicArenaのお気に入りにも「めぐり逢うことばたち」を追加させていただきました。今後ともよろしくお願いいたします。
ご訪問&コメントありがとうございます。はい、ベートーヴェンのPコンチェルト、Pソナタはどれもが愛すべき作品たちなんですね。国内では交響曲を特に愛でる傾向にありますが、個人的にはベトはクラヴィーア専門(鍵盤楽器)の作家だったと思っております。
MusicArenaのお気に入りにも「めぐり逢うことばたち」を追加させていただきました。今後ともよろしくお願いいたします。