Berlioz: Symphonie fantastique Op.14@Seiji Ozawa/SKO. |
昨年の夏、NYCのカーネギーホールで手兵=サイトウ・キネンを率いてのコンサートの模様は、特に小澤の秘技とされているブラ1を振ったシーンがテレビのニュースでも大々的に取り上げられ、国際的日本人マエストロ=世界のオザワの復帰を大いに祝福したものだ。この復帰コンサートの模様を収めたCDとDVDがDECCAの日本国内盤として3枚出ており、この幻想はそのシリーズ第2弾と言うことになる。
このシリーズは初日のブラ1、そしてこの幻想、ブリテンの戦争交響曲とで構成されるが、いずれのCDもSHM仕様のシングル・レイヤーSACD(SACDの単層盤)がチョイス出来る。しかし値段が法外に高くて二の足を踏むし、店頭在庫も置いておらず注文して後から取りに行くというのも面倒だったため、この幻想のSHM仕様の通常CDを一枚だけ買った。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/4036082
Hector Berlioz: Symphonie fantastique Op.14
1. Rêveries, Passions/ Largo-Allegro-agitato ed appassionato assai
2. Un Bal/ Valse: Allegro non troppo
3. Scene aux champs/ Adagio
4. Marche au supplice/ Allegretto non troppo
5. Songe d'une nuit du sabbat / Larghetto-Allegro-Allegro assai-Allegro
Saito Kinen Orchestra
Seiji Ozawa(Cond)
ベルリオーズ:幻想交響曲 Op.14
第1楽章: 夢、情熱
第2楽章: 舞踏会
第3楽章: 野の風景
第4楽章: 断頭台への行進
第5楽章: 魔女の夜会の夢
サイトウ・キネン・オーケストラ
小澤征爾(指揮)
個人的にはバーンスタインや小澤といった事大がかったスペクタクル系の指揮が苦手なため、彼らのCDはコンチェルト系を除いて殆ど持っていない。ということで殆ど期待せずに針を降ろしたのであるが、これは先鋭かつバイタルでなかなか良い演奏だ。
1楽章のふくよかで詩的な表現は若い頃の小澤からあまり変化しておらず、また2楽章のポップで華美なリードもまた健在だ(好き嫌いは別として)。3楽章はちょっと寂びた解釈だが、4楽章に至って小澤の真骨頂であるハデハデの表現が炸裂する。サイトウ・キネンは元々弦(特にVn)がそれほど綺麗ではなく細密さにも難があるのだが、ここの強奏では悲鳴を上げて破綻気味、コル・レーニョも空振りっぽい雰囲気である。ただその反面、パーカッションと木管隊、金管隊、低音弦が完璧であり、驚くほどの精密さとハイスピードのレスポンスによってここを疾駆していく。Vnを除くパートの全奏はほぼ合っていてその音圧は結構凄い。マエストロの復活を祝う悦びに満ちたエネルギッシュな幻想なのであり、これはこれで「あり」の演奏だし、恐らく、小澤/SKOの幻想の録音としてはこれが最後となるであろう。そういった点においても手許に置いておきたい一枚だ。
(録音評)
DECCA UCCD1292、国内通常CD(SHM仕様)、録音は2010年12月15日、Stern Auditorium/Perelman Stage at Carnegie Hall, New York City(ニューヨーク、カーネギー・ホール)。音質は従来のDECCAとは一線を画する臨場感溢れる優秀な出来映えで、しかも細密で正確なサウンドステージが捕捉されている。それもそのはず、この音源の制作はClassic Sound Ltd(London)が担当しており、トーンマイスターはお馴染みのJonathan Stokesなのだ。地を這うグランカッサ、パルシブなティンパニ、地鳴りのようなコンバス隊と、特に下方向へのレンジ感と広大な音場展開が素晴らしく、LSO LiveシリーズのSACDハイブリッドにも比肩する、いやもうちょっと良い出来映えかもしれない。
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