2011年 08月 26日
Rachmaninov: P-Con#2@Yuja Wang,Abbado/Mahler Chamber O. |
今年の初めのDGの新譜で、人気急上昇中のユジャ・ワンが弾くラフマニノフのテーマアルバムから。ユジャ・ワンはちょっと前から日本国内でも演奏会があってか着目されていたようで、昨今ではNHKのテレビやFMでもその露出度が高まってきている。個人的にはDGというのもあって今まで聴く機会はなかった。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3980198
Sergei Rachmaninov
Rhapsody on a Theme of Paganini, Op. 43
Piano Concerto No. 2 in C minor, Op. 18
Yuja Wang (piano)
Mahler Chamber Orchestra/Claudio Abbado
ラフマニノフ:
・パガニーニの主題による狂詩曲 Op.43
・ピアノ協奏曲第2番ハ短調 Op.18
ユジャ・ワン(ピアノ)
マーラー室内管弦楽団
クラウディオ・アバド(指揮)
最初のパート、パガニーニ由来のコンチェルト風に編曲したオムニバスだが、ポップで楽しめる内容となっている。ユジャ・ワンという人の演奏は初めて聴くが、噂で聞くほど上手ではないという印象。技巧的にはかなり完成されたソリストだ。高速スケールも離散的な分散和音もかなりのピッチで正確にこなして行く。
目立つのはアバド/マーラー室内管弦楽団の優秀さで、ユジャ・ワンのピアノは余り目立たない。ノリノリなのはアバドであってユジャ・ワンは今ひとつ乗れていないという印象。編曲自体が楽しめるものであり、一種の音的スペクタクルと思えばこれはこれで面白いし、またユジャ・ワンのアクロバティックなくせに脆くて壊れそうな独奏も悪くはないのだ。
あまり明確には言いたくはないが、メインのラフPコン2番はとても残念な出来だ。ライブであるというハンディを加味しても、これは褒められた演奏ではない。但し、前の曲と同様、アバドの乗りとマーラー室内管の演奏はかなり完璧で、寧ろこの楽団のデモ・ディスクとさえ思える内容と出来映えだ。それに対してユジャ・ワンのピアノはエネルギー感がとても低くてこのオケのクォリティに完全に負けている。要は、ラフが描いた重要な機微をオケにマスクされる格好で全く表出できていないのだ。録音が悪くてピアノが聞こえない、という話では決してなく、元々のピアノのエナジー感が欠如しているのである。そして、結局のところ、この独奏ピアノは何を主張し表現したかったのかがさっぱり分からないままフィナーレを迎えてしまう。最後のトゥッティでも目立つのはアバドの軒昂ぶりであり、ピアノは消し飛んでしまっている。終って感じるのは、ラフPコンが管弦楽版で演奏された(勿論、そんな正規な楽譜は存在しない・・)ということ。演奏が終わった直後、過度のブラボーが叫ばれた瞬間に理解できるのであるが、ピアノのパートのインプレッションが殆ど脳裏に残っていないということ。何度聴き返してもピアノの印象は薄く、逆にアラが目立ってしまってその部分が頭内でマスキングして聞こえないようになっているのかも知れない。
ユジャ・ワンだが、基礎的な体力と筋力を養成して、天性のこの技巧を更にハイライト出来るように持っていけるかどうかが今後の彼女の行く末を左右すると思う。勿論のことだが、作品の読み込みと弛まぬ練習によって「何を弾いて何をどう感じさせたいのか」をちゃんと整理してから事に当たって欲しいもの。若い頃の上原彩子の場合にもこの様な表現力欠如の症状があったが、その後の訓練と研鑽により今の演奏スタイルを確立した。ユジャ・ワンは人気先行だが将来性は高いと思っているので更なる稽古を積み上げて出直して欲しいと思う。
(録音評)
DG 4779308、通常CD。録音は2010年4月、場所はテアトロ・コムナーレ(フェラーラ)でのライヴとある。DGとしては凡庸のちょっと下くらいの音質だ。例によって派手でブリリアントな音調だが、意外にもライブの良いところ、即ち臨場感と熱気といったアンビエンスも少なからず捉えていて微妙な評価とせざるを得ない。フランス系やドイツ系の手堅いレーベルの音質には遠く及ばないが、それなりと評しておこう。演奏内容と出来映えもこの音質と同じようなものなのだが・・。
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Sergei Rachmaninov
Rhapsody on a Theme of Paganini, Op. 43
Piano Concerto No. 2 in C minor, Op. 18
Yuja Wang (piano)
Mahler Chamber Orchestra/Claudio Abbado
ラフマニノフ:
・パガニーニの主題による狂詩曲 Op.43
・ピアノ協奏曲第2番ハ短調 Op.18
ユジャ・ワン(ピアノ)
マーラー室内管弦楽団
クラウディオ・アバド(指揮)
最初のパート、パガニーニ由来のコンチェルト風に編曲したオムニバスだが、ポップで楽しめる内容となっている。ユジャ・ワンという人の演奏は初めて聴くが、噂で聞くほど上手ではないという印象。技巧的にはかなり完成されたソリストだ。高速スケールも離散的な分散和音もかなりのピッチで正確にこなして行く。
目立つのはアバド/マーラー室内管弦楽団の優秀さで、ユジャ・ワンのピアノは余り目立たない。ノリノリなのはアバドであってユジャ・ワンは今ひとつ乗れていないという印象。編曲自体が楽しめるものであり、一種の音的スペクタクルと思えばこれはこれで面白いし、またユジャ・ワンのアクロバティックなくせに脆くて壊れそうな独奏も悪くはないのだ。
あまり明確には言いたくはないが、メインのラフPコン2番はとても残念な出来だ。ライブであるというハンディを加味しても、これは褒められた演奏ではない。但し、前の曲と同様、アバドの乗りとマーラー室内管の演奏はかなり完璧で、寧ろこの楽団のデモ・ディスクとさえ思える内容と出来映えだ。それに対してユジャ・ワンのピアノはエネルギー感がとても低くてこのオケのクォリティに完全に負けている。要は、ラフが描いた重要な機微をオケにマスクされる格好で全く表出できていないのだ。録音が悪くてピアノが聞こえない、という話では決してなく、元々のピアノのエナジー感が欠如しているのである。そして、結局のところ、この独奏ピアノは何を主張し表現したかったのかがさっぱり分からないままフィナーレを迎えてしまう。最後のトゥッティでも目立つのはアバドの軒昂ぶりであり、ピアノは消し飛んでしまっている。終って感じるのは、ラフPコンが管弦楽版で演奏された(勿論、そんな正規な楽譜は存在しない・・)ということ。演奏が終わった直後、過度のブラボーが叫ばれた瞬間に理解できるのであるが、ピアノのパートのインプレッションが殆ど脳裏に残っていないということ。何度聴き返してもピアノの印象は薄く、逆にアラが目立ってしまってその部分が頭内でマスキングして聞こえないようになっているのかも知れない。
ユジャ・ワンだが、基礎的な体力と筋力を養成して、天性のこの技巧を更にハイライト出来るように持っていけるかどうかが今後の彼女の行く末を左右すると思う。勿論のことだが、作品の読み込みと弛まぬ練習によって「何を弾いて何をどう感じさせたいのか」をちゃんと整理してから事に当たって欲しいもの。若い頃の上原彩子の場合にもこの様な表現力欠如の症状があったが、その後の訓練と研鑽により今の演奏スタイルを確立した。ユジャ・ワンは人気先行だが将来性は高いと思っているので更なる稽古を積み上げて出直して欲しいと思う。
(録音評)
DG 4779308、通常CD。録音は2010年4月、場所はテアトロ・コムナーレ(フェラーラ)でのライヴとある。DGとしては凡庸のちょっと下くらいの音質だ。例によって派手でブリリアントな音調だが、意外にもライブの良いところ、即ち臨場感と熱気といったアンビエンスも少なからず捉えていて微妙な評価とせざるを得ない。フランス系やドイツ系の手堅いレーベルの音質には遠く及ばないが、それなりと評しておこう。演奏内容と出来映えもこの音質と同じようなものなのだが・・。
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by primex64
| 2011-08-26 00:03
| Concerto - Pf
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