2011年 08月 08日
Liszt: Piano works@Lise de la Salle |
今年はリスト生誕200年という節目にしてリストに縁(ゆかり)のCDがかなり多くリリースされている。前回取り上げたブニアティシヴィリのPソナタを含むアルバムは名実ともに衝撃が走る内容であった。そして、リーズのリスト・イヤーの新譜リリースはお馴染みnaiveからこのシンプルな一枚。リーズは昨年のショパンのアルバムでも非常に高度なパフォーマンスを見せ付けたわけだが、リストにおけるこの出来映えも尋常ならざるところがあって、自分としては納得がいくまで随分と長い時間をかけて耳を馴染ませるため繰り返し聴いてきた。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/4031035
Lise de la Salle plays Liszt
Liszt:
Après une lecture du Dante, fantasia quasi sonata
(Années de pèlerinage II, S. 161 No. 7)
Lacrymosa from Mozarts Requiem, S550
Ballade No. 2 in B minor, S171/R16
Widmung S566 after Schumann (Liebeslied)
Transcendental Study, S139 No. 4 'Mazeppa'
Nuages gris, S199
Ständchen - Leise flehen meine Lieder
(No. 7a from Schwanengesang, S560, after Schubert)
Funérailles (Harmonies poétiques et religieuses, S. 173 No. 7)
Isolde's Liebestod (after Wagner), S447
Lise de la Salle (Pf)
リスト:
・ダンテを読んで―ソナタ風幻想曲
・ラクリモーザ(モーツァルト/リスト)
・バラード第2番ロ短調
・愛の歌(献呈)(シューマン/リスト)
・マゼッパ(超絶技巧練習曲より第4番)
・灰色の雲
・セレナード(シューベルト/リスト)
・葬送(詩的で宗教的な夕べより第7曲)
・イゾルデの愛の死(ワーグナー/リスト)
リーズ・ドゥ・ラ・サール(ピアノ)
しかし、なんという完成度だろうか。ダンテ・ソナタの強靱にしてこの強い意思、深い読み込みの結果から得られたであろう確信に満ちた豊満な表現、そして美しい中高音部の和声と暴力的な低音弦の殴打の交錯・・。どこをとっても、巡礼の年第2年の濃密で変幻自在なリストのこの時代のエッセンスがこのトラックに込められていると言ってよいのだ。大きく成長したといえ、まだまだ若いリーズがこんなにも枯れた作品をこんな出来映えで弾きこなすとは驚異以外の何ものでもない。
リーズというピアニストを知ったのは今から4年余り前に遡る。このアルバムがあまりに衝撃的で、翌年に選定したMusicArena Awards・・この頃はまだそういった洒落た命名はしていなかったのだが・・のグランプリに入れたほど鮮烈な出来映えだった。普通、こういった凄く抜きんでた録音の後には息切れする時期が訪れることが往々にしてあるのであるが、リーズの場合にはそういうことはなくてずっとバイタルに活動してきている。そしてその後はモーツァルトやプロコ、ショパンなど著名どころを演奏/録音して、これらもことごとく成功しているし、またピアニストとしての技量、人間としての成長も大いに認められ、個人的にはちょっと前から現在、近未来に至るまで最も着目している奏者の一人なのだ。
このアルバムはリストのオリジナル作品だけではなく、リストが生前に愛した巨匠たちの作品へのトランスクリプション譜面の演奏も交互に並べて構成している点でとても興味深い。ラクリモーザはあのモツレクの中心を成す悲しみの聖母の心を読んだ旋律で、ここまで瞑想的な演奏はオケ+合唱版でも聴いたことがないほど深く浸透するリーズのピアニズムは脱帽もの。ちょっと複雑系のバラード2番のどろっとした部分を、それこそ大人の重たい解釈でがっつりと聴かせた後、シューマンの愛の歌の飛翔感は密度感を低めつつも十二分に心を込めた熱い演奏だ。そして超絶技巧からマゼッパを持ってきていて、このデモーニッシュな作品のまとめ方といったら数十年ぶりに聴いたと思われる堂に入った解釈と演奏なのだ。これを聴いたからには是非とも超絶技巧全曲を早々に出して欲しいと思わされる出来映えだ。実に巧いし聴かせる演奏だ。
またまた肩の力を抜くような並べ方が奏功し、シューベルトのセレナードが切々と奏でられる。リーズはどこまで成長したのか? と思わされ、期せずして溜息をついてしまうほどの美しい旋律/和声展開に酔いしれるのである。最後の二つはかなり難しい解釈が必要な現代音楽領域の作品であるが、ここでの瞑想的な演奏も特筆ものであって、もうちょっと経ったリーズがこれらをどう弾くかが楽しみな可能性を引き出している締め方だ。
(録音評)
Naïve: V5267、通常CD。録音は2011年1月、Sendesaal Bremenとある。プロデューサーはリーズ自身とRadio Bremenが務めたもので、音質は図太く実在感に満ちた優秀録音だ。録音系はマイクがNeumann KM130、Sequoia workstation+Jünger c8000 systemと記載されている。全体的には現在のNaïveの主流となっているPyramix系の高解像度路線とはちょっと違っていてPCMライクな実像重視の重量感のあるピアノ録音であり、曲想に合わせた感のあるお洒落な演出だ。芯を突くピアノ(恐らくスタインウェイ)の低音弦が存分に味わえる、今時としては珍しいオーソドックスなピラミッドバランスのピアノ録音と言える。
1日1回、ここをポチっとクリック ! お願いします。
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Lise de la Salle plays Liszt
Liszt:
Après une lecture du Dante, fantasia quasi sonata
(Années de pèlerinage II, S. 161 No. 7)
Lacrymosa from Mozarts Requiem, S550
Ballade No. 2 in B minor, S171/R16
Widmung S566 after Schumann (Liebeslied)
Transcendental Study, S139 No. 4 'Mazeppa'
Nuages gris, S199
Ständchen - Leise flehen meine Lieder
(No. 7a from Schwanengesang, S560, after Schubert)
Funérailles (Harmonies poétiques et religieuses, S. 173 No. 7)
Isolde's Liebestod (after Wagner), S447
Lise de la Salle (Pf)
リスト:
・ダンテを読んで―ソナタ風幻想曲
・ラクリモーザ(モーツァルト/リスト)
・バラード第2番ロ短調
・愛の歌(献呈)(シューマン/リスト)
・マゼッパ(超絶技巧練習曲より第4番)
・灰色の雲
・セレナード(シューベルト/リスト)
・葬送(詩的で宗教的な夕べより第7曲)
・イゾルデの愛の死(ワーグナー/リスト)
リーズ・ドゥ・ラ・サール(ピアノ)
しかし、なんという完成度だろうか。ダンテ・ソナタの強靱にしてこの強い意思、深い読み込みの結果から得られたであろう確信に満ちた豊満な表現、そして美しい中高音部の和声と暴力的な低音弦の殴打の交錯・・。どこをとっても、巡礼の年第2年の濃密で変幻自在なリストのこの時代のエッセンスがこのトラックに込められていると言ってよいのだ。大きく成長したといえ、まだまだ若いリーズがこんなにも枯れた作品をこんな出来映えで弾きこなすとは驚異以外の何ものでもない。
リーズというピアニストを知ったのは今から4年余り前に遡る。このアルバムがあまりに衝撃的で、翌年に選定したMusicArena Awards・・この頃はまだそういった洒落た命名はしていなかったのだが・・のグランプリに入れたほど鮮烈な出来映えだった。普通、こういった凄く抜きんでた録音の後には息切れする時期が訪れることが往々にしてあるのであるが、リーズの場合にはそういうことはなくてずっとバイタルに活動してきている。そしてその後はモーツァルトやプロコ、ショパンなど著名どころを演奏/録音して、これらもことごとく成功しているし、またピアニストとしての技量、人間としての成長も大いに認められ、個人的にはちょっと前から現在、近未来に至るまで最も着目している奏者の一人なのだ。
このアルバムはリストのオリジナル作品だけではなく、リストが生前に愛した巨匠たちの作品へのトランスクリプション譜面の演奏も交互に並べて構成している点でとても興味深い。ラクリモーザはあのモツレクの中心を成す悲しみの聖母の心を読んだ旋律で、ここまで瞑想的な演奏はオケ+合唱版でも聴いたことがないほど深く浸透するリーズのピアニズムは脱帽もの。ちょっと複雑系のバラード2番のどろっとした部分を、それこそ大人の重たい解釈でがっつりと聴かせた後、シューマンの愛の歌の飛翔感は密度感を低めつつも十二分に心を込めた熱い演奏だ。そして超絶技巧からマゼッパを持ってきていて、このデモーニッシュな作品のまとめ方といったら数十年ぶりに聴いたと思われる堂に入った解釈と演奏なのだ。これを聴いたからには是非とも超絶技巧全曲を早々に出して欲しいと思わされる出来映えだ。実に巧いし聴かせる演奏だ。
またまた肩の力を抜くような並べ方が奏功し、シューベルトのセレナードが切々と奏でられる。リーズはどこまで成長したのか? と思わされ、期せずして溜息をついてしまうほどの美しい旋律/和声展開に酔いしれるのである。最後の二つはかなり難しい解釈が必要な現代音楽領域の作品であるが、ここでの瞑想的な演奏も特筆ものであって、もうちょっと経ったリーズがこれらをどう弾くかが楽しみな可能性を引き出している締め方だ。
(録音評)
Naïve: V5267、通常CD。録音は2011年1月、Sendesaal Bremenとある。プロデューサーはリーズ自身とRadio Bremenが務めたもので、音質は図太く実在感に満ちた優秀録音だ。録音系はマイクがNeumann KM130、Sequoia workstation+Jünger c8000 systemと記載されている。全体的には現在のNaïveの主流となっているPyramix系の高解像度路線とはちょっと違っていてPCMライクな実像重視の重量感のあるピアノ録音であり、曲想に合わせた感のあるお洒落な演出だ。芯を突くピアノ(恐らくスタインウェイ)の低音弦が存分に味わえる、今時としては珍しいオーソドックスなピラミッドバランスのピアノ録音と言える。
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by primex64
| 2011-08-08 00:16
| Solo - Pf
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