2011年 07月 18日
Schumann+Liszt: P-Con@Etsuko Hirose,F.Karoui/O.de Pau Pays du Bearn |
MIRAREの新譜、そして、広瀬悦子のMIRAREデビュー2枚目のアルバムはシューマンとリストのPコンだった。MIRARE1枚目はショパンのノクターン、バラード集で、なかなかに独創的で秀逸な出来映えだったが、ここへ来てシューマンとリスト、それも協奏曲ばかりを並べてきた。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/3996999
Schumann & Liszt: Piano Concertos
Schumann:
Introduction & Allegro appassionato in G major, Op.92
Piano Concerto in A minor, Op.54
Liszt:
Piano Concerto No.2 in A major, S125
Etsuko Hirose (piano)
Orchestre de Pau Pays du Bearn, Fayçal Karoui
・シューマン:序奏とアレグロ・アパッショナートOp.92
・シューマン:ピアノ協奏曲イ短調Op.54
・リスト:ピアノ協奏曲第2番イ長調
広瀬悦子(ピアノ)
ベアルン地方ポー管弦楽団
フェイサル・カルイ(指揮)
ある意味、この人の場合には独奏ピアノよりかはコンチェルトの方が活き活きと外向的、そしてくっきりとした目鼻立ちの解釈で合っている気がする。冒頭のアパッショナートだが、ショパンの時と似たような、マルカート主体の旋律展開はシューマンの元気な長調部には似合うが、翳りの部分に至ると急に曲想は変化してアンニュイが漂うメランコリックな解釈となる。この曲自体は協奏曲の形態を成してはいるが譜面は単一楽章の序奏という位置付けなのだ。しかし、抑揚や起伏、そして音楽性という点ではなかなかにドラマティックな大曲なのだ。
続くシューマンのPコンは、シンプルながら求道的な旋律のリフレインが印象的な作品で、勇壮さと甘美なメロディを兼備する名曲だ。ここにおける広瀬の解釈はとても闊達であり、音が多く、そしてフェイサル・カルイ率いるポー管弦楽団の多彩かつ重層的な下支えが素晴らしい。楽器の音の一つ一つの光沢を伴った美しさも特筆ものだ。その美しいハーモニーに更に調和する広瀬の純音系キータッチが奏功し、とかく脇役に追いやられがちなシューマンのPコンとしては特別に立派な出来映えだ。
一方、リストのコンチェルトの1楽章・カデンツァで見せつけられるピアノの強打、というか殴打に近い、芯を突く堂々たるピアニズムには耳を奪われてしまう。そしてデモーニッシュなリストのハイスピードな和声を、乾燥した軽いタッチでトレースし、繰り返されるアチェレランドとリタルダンドを正確に制御しつつ疾駆していく。ピアノもオケもまさに熱演と言えるアップテンポを維持し、またリストならではの特異なアーティキュレーションを随所に炸裂させているのは必聴ものだ。後半の独特の緊張感とオケ・ピアノの一体感たるや素晴らしいのひとこと。このポー管弦楽団の定期公演での競演に穴を開けてしまったネルソン・フレイレの代役で出演した広瀬は思わぬ喝采を浴びて大成功を収め、そして今日のライブ録音が実現したのだと言うが、この高いパフォーマンスと度胸には日本人離れしたところがあって、今までの日本人若手女流ピアニストのベースライン(基線)を大いに拡大することが期待される。これはなかなかの演奏だし、インターナショナルなMIRAREの録音というところにも価値がある。
(録音評)
MIRARE MIR135、通常CD。録音は Auditorium Alfred de Vigny - Palais Bwumont á Pau とある。ネットによればこういう音のよさげな小ホールのようだ。 プロデュースは総帥=ルネ・マルタンが自ら務めたようだ。音質はMIRAREではちょっと前まで主流だった伝統的な低重心のもので、全く揺らぎのないピラミッドバランスにして地味、かつスタンドプレーを一切狙っていない剛健なものだ。マーケッティング上は色々と音の作り方はあるのだが、この録音に関しては必要以上にストイック、それでいて重低音から超高域のプレゼンスまで過不足なくブロードに捉えている。最後のリストのPコンは客を入れたライブであり、質の良い会場ノイズ、そしてピアノのffのインパクトにおいて広瀬がペダルとともに床を踏み締める音が極低音となって地を這うようなアンビエンスを形成していてぞくぞくさせられる。この床の踏み締め音がごく自然に、しかも中小規模の音楽専用ホールにいるかの臨場感で再生されればあなたの装置の低域再生能力は及第だ。
※尚、今回のリリースにも日本語解説が付いている。MIRARE(というかキング・インター)はかなり力を入れているようだ。
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http://www.hmv.co.jp/product/detail/3996999
Schumann & Liszt: Piano Concertos
Schumann:
Introduction & Allegro appassionato in G major, Op.92
Piano Concerto in A minor, Op.54
Liszt:
Piano Concerto No.2 in A major, S125
Etsuko Hirose (piano)
Orchestre de Pau Pays du Bearn, Fayçal Karoui
・シューマン:序奏とアレグロ・アパッショナートOp.92
・シューマン:ピアノ協奏曲イ短調Op.54
・リスト:ピアノ協奏曲第2番イ長調
広瀬悦子(ピアノ)
ベアルン地方ポー管弦楽団
フェイサル・カルイ(指揮)
ある意味、この人の場合には独奏ピアノよりかはコンチェルトの方が活き活きと外向的、そしてくっきりとした目鼻立ちの解釈で合っている気がする。冒頭のアパッショナートだが、ショパンの時と似たような、マルカート主体の旋律展開はシューマンの元気な長調部には似合うが、翳りの部分に至ると急に曲想は変化してアンニュイが漂うメランコリックな解釈となる。この曲自体は協奏曲の形態を成してはいるが譜面は単一楽章の序奏という位置付けなのだ。しかし、抑揚や起伏、そして音楽性という点ではなかなかにドラマティックな大曲なのだ。
続くシューマンのPコンは、シンプルながら求道的な旋律のリフレインが印象的な作品で、勇壮さと甘美なメロディを兼備する名曲だ。ここにおける広瀬の解釈はとても闊達であり、音が多く、そしてフェイサル・カルイ率いるポー管弦楽団の多彩かつ重層的な下支えが素晴らしい。楽器の音の一つ一つの光沢を伴った美しさも特筆ものだ。その美しいハーモニーに更に調和する広瀬の純音系キータッチが奏功し、とかく脇役に追いやられがちなシューマンのPコンとしては特別に立派な出来映えだ。
一方、リストのコンチェルトの1楽章・カデンツァで見せつけられるピアノの強打、というか殴打に近い、芯を突く堂々たるピアニズムには耳を奪われてしまう。そしてデモーニッシュなリストのハイスピードな和声を、乾燥した軽いタッチでトレースし、繰り返されるアチェレランドとリタルダンドを正確に制御しつつ疾駆していく。ピアノもオケもまさに熱演と言えるアップテンポを維持し、またリストならではの特異なアーティキュレーションを随所に炸裂させているのは必聴ものだ。後半の独特の緊張感とオケ・ピアノの一体感たるや素晴らしいのひとこと。このポー管弦楽団の定期公演での競演に穴を開けてしまったネルソン・フレイレの代役で出演した広瀬は思わぬ喝采を浴びて大成功を収め、そして今日のライブ録音が実現したのだと言うが、この高いパフォーマンスと度胸には日本人離れしたところがあって、今までの日本人若手女流ピアニストのベースライン(基線)を大いに拡大することが期待される。これはなかなかの演奏だし、インターナショナルなMIRAREの録音というところにも価値がある。
(録音評)
MIRARE MIR135、通常CD。録音は Auditorium Alfred de Vigny - Palais Bwumont á Pau とある。ネットによればこういう音のよさげな小ホールのようだ。 プロデュースは総帥=ルネ・マルタンが自ら務めたようだ。音質はMIRAREではちょっと前まで主流だった伝統的な低重心のもので、全く揺らぎのないピラミッドバランスにして地味、かつスタンドプレーを一切狙っていない剛健なものだ。マーケッティング上は色々と音の作り方はあるのだが、この録音に関しては必要以上にストイック、それでいて重低音から超高域のプレゼンスまで過不足なくブロードに捉えている。最後のリストのPコンは客を入れたライブであり、質の良い会場ノイズ、そしてピアノのffのインパクトにおいて広瀬がペダルとともに床を踏み締める音が極低音となって地を這うようなアンビエンスを形成していてぞくぞくさせられる。この床の踏み締め音がごく自然に、しかも中小規模の音楽専用ホールにいるかの臨場感で再生されればあなたの装置の低域再生能力は及第だ。
※尚、今回のリリースにも日本語解説が付いている。MIRARE(というかキング・インター)はかなり力を入れているようだ。

by primex64
| 2011-07-18 00:12
| Concerto - Pf
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Trackback(1)
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Comments(1)


お世話様です。前回の広瀬さんのショパンご紹介は今年の1月、直後にHMVにこのコンツェルトCDの予告、どちらにしようか?などと悩んでいる最中に3.11があり、気持ちの余裕がない日々ですwその間にメジューエワとかラサールちゃんのリスト、ガイヤールのバッハ無伴奏再録など、欲しいCDが目白押し、財布がもちません(爆)引き続いて色々とご紹介ください。宜しくお願いします。ではでは。
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