2011年 07月 07日
Debussy: La Mer Etc@Gergiev/LSO |
2011年に入り、実に半分が過ぎ去ってしまった。3月の震災以来、自分はいったい何をしていたんだろうか・・・。勿論だが、職業上の影響は大きかったし、いまだにその影響は残り続けてはいる。そんな中、あんまり音楽に没入するという環境にはないのだが、日々音楽に癒され続けているのは事実。そして、遅く始まったMusicArenaの2011年。その冒頭がこれ。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/4004182
Debussy: La Mer, Jeux & Prélude à l’après-midi d’un faune
Debussy:
Prélude à l'après-midi d'un faune
La Mer
Jeux - Poème dansé
London Symphony Orchestra, Valery Gergiev
ドビュッシー:
牧神の午後への前奏曲
交響詩「海」~3つの交響的スケッチ
バレエ音楽「遊戯」
ロンドン交響楽団
ワレリー・ゲルギエフ(指揮)
とても残念な始まりだ。牧神の午後への前奏曲は名曲であって他に類を見ない「霞棚引く」系統の音楽だ。ゲルの指揮は我が耳を疑う弱音にしてしかも味わいも盛り上がりも、そして心も入っていないロー・テンションな演奏だ。全体の音量が小さいのもあるけれどもそれは自信のない現れであって抗弁しようのない出来映えなのだ。LSOの弦楽隊が弱音を苦手としていて、そしてこの曲の場合にはブラス/パーカッションが活躍する場面も皆無と言ってよいので、曲と楽団の相性/条件としては最も不利な演奏だったかも知れない。
「交響詩 海」はずっと改善して、ゲルのゲルならではの長所が出ている。たゆたう波と、その波間に漂う水生生物たち、そして海面に乱反射しつつなかなか全貌を見せない船とその乗組員たち・・。そんな表情をゲルが生真面目に紡いでいくのだ。大波もあれば小波もあって、波面が見せるダイナミックなきらきらとした光の変化(へんげ)は、ドビュッシー流に音に変換すればこうなるのだという確信的な和声で奏でられるのだ。打ち寄せる波の飛沫と、ぐわんと盛り上がる海面の対比を音表現するという希少な標題音楽は大きな盛り上がり、そして静かな調和とともに閉じる。これは良い出来だ。
遊戯の方だが、これはこのアルバムで最も良くできた演奏である。躍動的でありながら微細表現にも長け、冒頭の牧神での演奏が嘘のような変貌を遂げていて驚くのである。もともとゲルはオペラやオペレッタの指揮をバックグラウンドに伸してきた指揮者であることがこのトラックを聴くと納得させられるのであった。現在でもマリインスキー系統の録音では出色の作品を出し続けている裏返しがこのLSOライブから期せずして読み取れるのである。
(録音評)
LSO Liveレーベル、LSO0692、SACDハイブリッド。録音は2009年9月20,24日(牧神)、2009年12月13,18日(海)、2010年5月12,19日(遊戯)とある。場所はLSOの本拠地、ロンドンのバービカンホール。いつものようにプロデューサー:ジェイムズ・マリンソン、エンジニア:ジョナサン・ストークス、ニール・ハッチンソンの面々だ。冒頭の牧神は演奏自体の音圧レベルが低いのであるが、流石にDSD録音だけあって微細なディテールを一切逃すことなく完璧に収録されている。次の曲以降の出来映えは非常に素晴らしく、これほどのダイナミックレンジ、Fレンジを享受できるとは嬉しいこと。つまり、演奏面には必ずしも完璧さに拘らないという向きには、音質面での愉悦感が強く得られるディスクゆえ推奨したい一枚。LSO Liveの歴代ラインナップの中では非常に優れた録音なのだ。
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Debussy: La Mer, Jeux & Prélude à l’après-midi d’un faune
Debussy:
Prélude à l'après-midi d'un faune
La Mer
Jeux - Poème dansé
London Symphony Orchestra, Valery Gergiev
ドビュッシー:
牧神の午後への前奏曲
交響詩「海」~3つの交響的スケッチ
バレエ音楽「遊戯」
ロンドン交響楽団
ワレリー・ゲルギエフ(指揮)
とても残念な始まりだ。牧神の午後への前奏曲は名曲であって他に類を見ない「霞棚引く」系統の音楽だ。ゲルの指揮は我が耳を疑う弱音にしてしかも味わいも盛り上がりも、そして心も入っていないロー・テンションな演奏だ。全体の音量が小さいのもあるけれどもそれは自信のない現れであって抗弁しようのない出来映えなのだ。LSOの弦楽隊が弱音を苦手としていて、そしてこの曲の場合にはブラス/パーカッションが活躍する場面も皆無と言ってよいので、曲と楽団の相性/条件としては最も不利な演奏だったかも知れない。
「交響詩 海」はずっと改善して、ゲルのゲルならではの長所が出ている。たゆたう波と、その波間に漂う水生生物たち、そして海面に乱反射しつつなかなか全貌を見せない船とその乗組員たち・・。そんな表情をゲルが生真面目に紡いでいくのだ。大波もあれば小波もあって、波面が見せるダイナミックなきらきらとした光の変化(へんげ)は、ドビュッシー流に音に変換すればこうなるのだという確信的な和声で奏でられるのだ。打ち寄せる波の飛沫と、ぐわんと盛り上がる海面の対比を音表現するという希少な標題音楽は大きな盛り上がり、そして静かな調和とともに閉じる。これは良い出来だ。
遊戯の方だが、これはこのアルバムで最も良くできた演奏である。躍動的でありながら微細表現にも長け、冒頭の牧神での演奏が嘘のような変貌を遂げていて驚くのである。もともとゲルはオペラやオペレッタの指揮をバックグラウンドに伸してきた指揮者であることがこのトラックを聴くと納得させられるのであった。現在でもマリインスキー系統の録音では出色の作品を出し続けている裏返しがこのLSOライブから期せずして読み取れるのである。
(録音評)
LSO Liveレーベル、LSO0692、SACDハイブリッド。録音は2009年9月20,24日(牧神)、2009年12月13,18日(海)、2010年5月12,19日(遊戯)とある。場所はLSOの本拠地、ロンドンのバービカンホール。いつものようにプロデューサー:ジェイムズ・マリンソン、エンジニア:ジョナサン・ストークス、ニール・ハッチンソンの面々だ。冒頭の牧神は演奏自体の音圧レベルが低いのであるが、流石にDSD録音だけあって微細なディテールを一切逃すことなく完璧に収録されている。次の曲以降の出来映えは非常に素晴らしく、これほどのダイナミックレンジ、Fレンジを享受できるとは嬉しいこと。つまり、演奏面には必ずしも完璧さに拘らないという向きには、音質面での愉悦感が強く得られるディスクゆえ推奨したい一枚。LSO Liveの歴代ラインナップの中では非常に優れた録音なのだ。

by primex64
| 2011-07-07 23:14
| Orchestral
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