MusicArena Awards 2010 |
3月末を目指していたMusicArena Awards 2010の選考であるが、やはり震災の影響を免れることは出来なかった。本日、3ヶ月遅れで各賞を発表することとする。なお、選考基準は例年度に準ずるものとする。
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MusicArena Awards 選考基準
・2010年中に国内リリースされたCD/SACD(国内盤・輸入盤を問わず)
・演奏面/音質面ともに優れたもの
・前衛的な取り組みであると認められるもの
・以上を考慮して以下の各賞を選考する
MusicArena Grand Prix - 最優秀作品を1点選出
MusicArena Semi-Grand Prix - 優秀作品を2点選出
MusicArena Performance of the year - 演奏に特に秀でた作品を数点選出
MusicArena Sound of the year - 録音品質に特に秀でた作品を数点選出
MusicArena Special Encouraging Prize - 将来を嘱望する奏者の作品を数点選出
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MusicArena
Grand Prix
2010
Chopin: Ballades,P-Con#2@Lise de la Salle,Fabio Luisi/SKD
ショパン:
・バラード第1番ト短調 op.23 他
・ピアノ協奏曲第2番ヘ短調 op.21
リーズ・ドゥ・ラ・サール(ピアノ)
シュターツカペレ・ドレスデン
ファビオ・ルイージ(指揮)
レーベル:naïve
http://musicarena.exblog.jp/15418204/
このところのリーズの成長と躍進ぶりには驚かされる。それと同時に、なんとも柔軟でふくよか、それでいて剛健なところが交錯するダイナミックなピアニズムを手中に収め、いまや敵なしの構えである。このアルバムはショパン・イヤーに因んだ一枚だが、この硬軟の出し入れ、深く研ぎ澄まされたアゴーギクには溜息が出る。今後も目が離せない成長株の筆頭格である。
MusicArena
Semi-Grand Prix
2010
J.S.Bach: Sonatas & Partitas BWV1004-6@Isabelle Faust
J.S.バッハ:無伴奏ソナタ&パルティータ
・パルティータ第2番ニ短調 BWV1004
・ソナタ第3番ハ長調 BWV1005
・パルティータ第3番ホ長調 BWV1006
イザベル・ファウスト(Vn)
レーベル:Harmonia Mundi
http://musicarena.exblog.jp/15378696/
ファウストのバッハ無伴奏には誰のバッハにもない毅然としたフレーバーが備わっている。勿論、ムローヴァやハチャトリアンのバッハ無伴奏もよいが、ファウストのこれは別格の響き、およびストイックなまでの求道者として立場が貫かれているのだ。
MusicArena
Semi-Grand Prix
2010
J.S.Bach: 6 Partitas@Vladimir Ashkenazy
ヨハン・セバスティアン・バッハ:
・パルティータ第1番変ロ長調 BWV825
・パルティータ第2番ハ短調 BWV826
・パルティータ第3番イ短調 BWV827
・パルティータ第4番ニ長調 BWV828
・パルティータ第5番ト長調 BWV829
・パルティータ第6番ホ短調 BWV830
ヴラディーミル・アシュケナージ(ピアノ)
レーベル:DECCA
http://musicarena.exblog.jp/14829074/
アシュケナージのバッハとしては恐らくこれが集大成となろう。今までのピアニスト人生、そして指揮者人生を通じて経験してきたことは数多いと思われるが、この作品は音楽家として後世へ何ものかを引き継ごうとしているメッセージが含まれる気がしてならない。
MusicArena
Performance of the year
2010
Anne Queffelec plays Chopin@Anne Queffelec
ショパン:
・ポロネーズ 変ロ長調KK.IV/1(1817)
・マズルカ 変イ長調Op.7-4(1824)
・ノクターン 嬰ハ短調 遺作(1830)
・幻想即興曲 嬰ハ短調Op.66(1834)
・スケルツォ第4番 ホ長調Op.54(1842) 他
アンヌ・ケフェレック(ピアノ)
レーベル:MIRARE
http://musicarena.exblog.jp/14921767/
ショパン・イヤーということで数多くの奏者が数多くのテーマ盤をリリースした。その中にあって、本物のショパン演奏として屹立している作品は数少ないのだ。このケフェレックのアルバムはその数少ない中でも特段の色彩を帯びたチャーミングな出来映えである。
MusicArena
Performance of the year
2010
Chopin: Vc Sonata Op.65@Ophélie Gaillard, Edna Stern
ショパン:
・チェロ・ソナタ ト短調 op.65
・前奏曲イ短調 op.28-2
・ノクターン ト長調 op.37-2
・前奏曲ホ短調 op.28-4 他
オフェリー・ガイヤール(チェロ)
エドナ・スターン(ピアノ)
レーベル:Aparte
http://musicarena.exblog.jp/14935127/
ガイヤールとスターンが紡ぎ出すこの世界は、通常に見られるショパンの世界ではない。誰もが考えつかなかったようなアプローチでショパン・イヤーを飾った唯一無二の一枚として永く記憶に残るであろう佳作である。軽々に「音楽性」云々とは言いたくはないが、ことこのアルバムに関してはこの禁断のタームを使用することは許容されるであろう。
MusicArena
Sound of the year
2010
Rihm: Vigilia@Rupert Huber/ChorWerk Ruhr, Ensemble Modern
ヴォルフガング・リーム(b.1952):
ヴィジリア(徹夜祷) (2006)~6人の声とアンサンブルのための
コールヴェルク・ルール(混声6重唱)
アンサンブル・モデルン
ルペルト・フーバー(指揮)
レーベル:NEOS Music
http://musicarena.exblog.jp/15271719/
理解が難しい音楽領域だろうが、それほど苦痛を伴わずに移入できる範囲の前衛的な祈祷曲だ。特筆すべきはこの音質である。SACDを使ってハイビットPCMの特徴を伝えている典型的な超高性能録音。DSDだとちょっと腰砕けが気になるという人には打って付けの実像系サウンドが炸裂する。
MusicArena
Sound of the year
2010
The Cherry Tree@Anonymous 4
The Cherry Tree
14th & 15th Century English Christmas Carols & Early Americana
Prophetarum Presignata
Nowel Syng We Bothe Al And Som
Alma Redemptoris Mater Etc.
Anonymous 4(Chor)
レーベル:Harmonia Mundi USA
http://musicarena.exblog.jp/16018563/
このレーベルにコーラスを録らせたら絶品である。喉の奥の微細な振動がそのまま空間に放たれて一気に拡散していく様まで克明に捉える技術は健在。naïveが録るアクセンタスも霞棚引くお洒落なセンスがなかなかだが、それとはまた違う実在的な路線からのアプローチは孤高の価値を持つ。
MusicArena
Special Encouraging Prize
2010
Debussy: L'Isle joyeuse Etc@Hiroyo Imagawa
ドビュッシー:
・映像第1集
・2つのアラベスク
・バラード
・映像第2集
・喜びの島 他
今川裕代(Pf)
レーベル:Classical Line
http://musicarena.exblog.jp/15757082/
パワフルで曇りのない、そしてなによりも真摯なドビュッシーだ。賛否もあろうかと思うが、これはこれで認めてあげたいアプローチであるし、このパワフルさは他の作家や作風への応用が無限に利くと思わされる、大いなる可能性を秘めているのだ。是非とも頑張って新境地にチャレンジしていって欲しいもの。
最終選考まで残った秀作たち:
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