2011年 06月 25日
Mozart: Bassoon Con K.191 Etc.@K.Geoghegan, G.Noseda/BBC PO. |
シャンドスが専属契約するファゴットの妖精=ジョーヒガンが吹く、モーツァルト、ロッシーニ、クロイツァー、クルーセルのコンチェルトや小曲をフィーチャーした楽しく浮き浮きするアルバムだ。昨秋リリースされ欧州では高く評価され、そして以前から着目されていたジョーヒガンはその名声を一気に高めることとなった記念碑的な録音だ。因みに今回、これが停滞していたMusicArena 2010年リリースにおける最後の評となる。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/3908491
Karen Geoghegan: Works for Bassoon and Orchestra
Wolfgang Amadeus Mozart: Bassoon Concerto in B flat K.191
I Allegro
II Andante ma adagio
III Rondo: Tempo di Menuetto
Gioachino Rossini: Bassoon Concerto
I (Allegro)
II Largo
III (Rondo)
Conradin Kreutzer: Fantasie for Bassoon and Orchestra
Introduction, Theme, Variations I and II
Variation III
Polacca
Bernhard Henrik Crusell: Bassoon Concertino in B flat
I Allegro brillante - Poco adagio
II Allegro moderato [Theme and Variations]
III Polacca
Karen Geoghegan(bassoon)
BBC Philharmonic
Gianandrea Noseda(Cond.)
Recorded in:
Studio 7, New Broadcasting House, Manchester
4 November 2009 (Mozart and Kreutzer), 20 January 2010 (Rossini and Crusell)
Producer(s)
Brian Pidgeon
Mike George
Sound Engineer(s)
Stephen Rinker
Chris Hardman (Assistant: 4 November 2009)
Denise Else (Assistant: 20 January 2010)
Format: Digital CD 16Bit 44.1Khz
・モーツァルト:ファゴット協奏曲変ロ長調K.191
・ロッシーニ:ファゴット協奏曲
・クロイツァー:変奏曲変ロ長調
・クルーセル:ファゴット小協奏曲
カレン・ジョーヒガン(ファゴット)
BBCフィルハーモニック
ジャナンドレア・ノセダ(指揮)
冒頭にあるモーツァルト/Fg協奏曲の出来映えは非常に素晴らしい。これにはのっけからやられてしまうのだ。彼が書いた三楽章形式の中小規模協奏曲としては代表的な形態であり、三部形式をシンプルに並べた分かり易い構造のこの曲が現在のところ唯一残されているのだが、他にもファゴット協奏曲は3曲を書いたとされている。
しかし今までこれらは見つかってはいない。普段からソロ楽器としてのFg(Bassoon)を意識することはないのであるが、このジョーヒガンの演奏を聴くと、それはもっともっと露出機会が多くてもよいと感じるのだ。しかしながら独奏をとる楽曲が少なすぎて、例えばVnやPfのコンチェルトは掃いて捨てるほど世に存在するのにFgのそれは数えるほどしかなくて、ここに収録されているものが世間的にはポピュラーな曲たちなんだろう。モーツァルトのこの作品におけるFgのフィーチャーは、どちらかというとVnやVcといった独奏弦楽器に要求されるものと殆ど同じと感じる。つまり、かなり細かなスケールや広域分散和音、トリル、ダブルストップ気味の素早さが要求される和声展開など、かなり高難度なソロとなるのだ。しかしジョーヒガンは実に鷹揚に楽しく、しかも楽々とこれらをドライブして行くのだ。甘く幼い容貌とは裏腹にかなりの使い手なのである。
ロッシーニの協奏曲は、彼らしい安定的かつ調和の取れたなかにも陽性の旋律及び開放的な和声がぎっしりと詰まった佳作であり実に楽しめて落ち着ける一曲。ここに諧謔的なジョーヒガンのFgが乗ってくると陽光が燦々と降り注ぐ初夏を思わせる爽やかな演奏となるのである。クロイツァーの変奏曲はちょっとダイナミックで影も感じられるがまずまずの佳作であり、Fgの存在感と言うよりは全体への溶け込みを重視したフィーチャーだ。
圧巻は最後のクルーセルのコンチェルティーノだ。これは抜群の作風と超絶・完璧な演奏が相俟った素晴らしいパフォーマンスと言える。クルーセルは、元々はスウェーデン=フィンランド生まれのクラリネット奏者であり、その経験からかFgの運指と旋律展開に無理がなく、自然でありながらも楽器の長所をうまく生かした力強い作風に仕上げているのがよく分かる。ここでのジョーヒガンの躍動ぶりは目を瞠るものがある。白眉は最終楽章で、どこかで聴いたことのあるメロディーが軽妙に鳴らされる中、ジョーヒガンが浮き浮きと楽しそうにFgと戯れるのだ。最後に付け加えておくが、ノセダという指揮者は大胆にバッサリとスコアを切開したような潔い解釈が特徴で、これが奏功して、ややもすればダルとなるモーツァルトやロッシーニの作品に薫風を吹き込んでいるのだ。
(録音評)
Chandosレーベル、CHAN10613、通常CD。録音は2009年11月4日&2010年1月20日、場所はマンチェスター新放送センター・スタジオ7とある。音質は悪くはないが、シャンドスの普段の高音質とはちょっと違って薄くベールが掛かったような漠としたもの。高域の伸びは問題ないし低域の支えも力強くて問題はないのだが、中域から上で独特の靄が感じられてしまう。これは録音のせいというよりは会場のスタジオがそういったアンビエント特性だったのかも知れない。ジョーヒガンのFgの捉え方はオンでもなくオフでもなく中庸位置からとなっておりこれは好バランスと言える。演奏が楽しいだけにもうちょっとなんとかなればよかったのであるが。
<2010年リリース盤の最終評>
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http://www.hmv.co.jp/product/detail/3908491
Karen Geoghegan: Works for Bassoon and Orchestra
Wolfgang Amadeus Mozart: Bassoon Concerto in B flat K.191
I Allegro
II Andante ma adagio
III Rondo: Tempo di Menuetto
Gioachino Rossini: Bassoon Concerto
I (Allegro)
II Largo
III (Rondo)
Conradin Kreutzer: Fantasie for Bassoon and Orchestra
Introduction, Theme, Variations I and II
Variation III
Polacca
Bernhard Henrik Crusell: Bassoon Concertino in B flat
I Allegro brillante - Poco adagio
II Allegro moderato [Theme and Variations]
III Polacca
Karen Geoghegan(bassoon)
BBC Philharmonic
Gianandrea Noseda(Cond.)
Recorded in:
Studio 7, New Broadcasting House, Manchester
4 November 2009 (Mozart and Kreutzer), 20 January 2010 (Rossini and Crusell)
Producer(s)
Brian Pidgeon
Mike George
Sound Engineer(s)
Stephen Rinker
Chris Hardman (Assistant: 4 November 2009)
Denise Else (Assistant: 20 January 2010)
Format: Digital CD 16Bit 44.1Khz
・モーツァルト:ファゴット協奏曲変ロ長調K.191
・ロッシーニ:ファゴット協奏曲
・クロイツァー:変奏曲変ロ長調
・クルーセル:ファゴット小協奏曲
カレン・ジョーヒガン(ファゴット)
BBCフィルハーモニック
ジャナンドレア・ノセダ(指揮)
冒頭にあるモーツァルト/Fg協奏曲の出来映えは非常に素晴らしい。これにはのっけからやられてしまうのだ。彼が書いた三楽章形式の中小規模協奏曲としては代表的な形態であり、三部形式をシンプルに並べた分かり易い構造のこの曲が現在のところ唯一残されているのだが、他にもファゴット協奏曲は3曲を書いたとされている。
しかし今までこれらは見つかってはいない。普段からソロ楽器としてのFg(Bassoon)を意識することはないのであるが、このジョーヒガンの演奏を聴くと、それはもっともっと露出機会が多くてもよいと感じるのだ。しかしながら独奏をとる楽曲が少なすぎて、例えばVnやPfのコンチェルトは掃いて捨てるほど世に存在するのにFgのそれは数えるほどしかなくて、ここに収録されているものが世間的にはポピュラーな曲たちなんだろう。モーツァルトのこの作品におけるFgのフィーチャーは、どちらかというとVnやVcといった独奏弦楽器に要求されるものと殆ど同じと感じる。つまり、かなり細かなスケールや広域分散和音、トリル、ダブルストップ気味の素早さが要求される和声展開など、かなり高難度なソロとなるのだ。しかしジョーヒガンは実に鷹揚に楽しく、しかも楽々とこれらをドライブして行くのだ。甘く幼い容貌とは裏腹にかなりの使い手なのである。
ロッシーニの協奏曲は、彼らしい安定的かつ調和の取れたなかにも陽性の旋律及び開放的な和声がぎっしりと詰まった佳作であり実に楽しめて落ち着ける一曲。ここに諧謔的なジョーヒガンのFgが乗ってくると陽光が燦々と降り注ぐ初夏を思わせる爽やかな演奏となるのである。クロイツァーの変奏曲はちょっとダイナミックで影も感じられるがまずまずの佳作であり、Fgの存在感と言うよりは全体への溶け込みを重視したフィーチャーだ。
圧巻は最後のクルーセルのコンチェルティーノだ。これは抜群の作風と超絶・完璧な演奏が相俟った素晴らしいパフォーマンスと言える。クルーセルは、元々はスウェーデン=フィンランド生まれのクラリネット奏者であり、その経験からかFgの運指と旋律展開に無理がなく、自然でありながらも楽器の長所をうまく生かした力強い作風に仕上げているのがよく分かる。ここでのジョーヒガンの躍動ぶりは目を瞠るものがある。白眉は最終楽章で、どこかで聴いたことのあるメロディーが軽妙に鳴らされる中、ジョーヒガンが浮き浮きと楽しそうにFgと戯れるのだ。最後に付け加えておくが、ノセダという指揮者は大胆にバッサリとスコアを切開したような潔い解釈が特徴で、これが奏功して、ややもすればダルとなるモーツァルトやロッシーニの作品に薫風を吹き込んでいるのだ。
(録音評)
Chandosレーベル、CHAN10613、通常CD。録音は2009年11月4日&2010年1月20日、場所はマンチェスター新放送センター・スタジオ7とある。音質は悪くはないが、シャンドスの普段の高音質とはちょっと違って薄くベールが掛かったような漠としたもの。高域の伸びは問題ないし低域の支えも力強くて問題はないのだが、中域から上で独特の靄が感じられてしまう。これは録音のせいというよりは会場のスタジオがそういったアンビエント特性だったのかも知れない。ジョーヒガンのFgの捉え方はオンでもなくオフでもなく中庸位置からとなっておりこれは好バランスと言える。演奏が楽しいだけにもうちょっとなんとかなればよかったのであるが。
<2010年リリース盤の最終評>

by primex64
| 2011-06-25 22:04
| Concerto - others
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Comments(2)