Szymanowski: Vn-Con#1, Sym#3@Boulez/VPO |

http://www.hmv.co.jp/product/detail/3886138
Szymanowski:
Violin Concerto No.1 Op.35 (*1)
Symphony No.3 'The Song of the Night' Op.27 (*2)
Christian Tetzlaff (violin) (*1)
Steve Davislim(Tenor) (*2)
Wiener Philharmoniker, Pierre Boulez
シマノフスキ:
・ヴァイオリン協奏曲第1番Op.35
・交響曲第3番Op.27『夜の歌』
クリスティアン・テツラフ(ヴァイオリン Op.35)
スティーヴ・ダヴィスリム(テノール Op.27)
フォルクハルト・シュトイデ(ヴァイオリン Op.27)
ウィーン楽友協会合唱団
ヨハネス・プリンツ(合唱指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ピエール・ブーレーズ(指揮)
ブーレーズがシマノフスキを録音したのはこれが初めてと言うからちょっと意外だ。しかし、言われてみれば記憶にはない。
Vnコン#1の方はドラマティックでありながら、どことなく郷愁をそそられるような東洋風の旋律も感じられ、その辺はバルトークの一連の管弦楽作品群に似た風情かも知れない。テツラフのVnは屹然としている部分と浮遊する空気を漂わせる部分とが巧く同居していて、全体としてはバランスの取れたメロディアスな独奏だ。規模的には4管編成のフルオケにピアノを配した大規模なものだが聴いているぶんにはそれほど大仰な感じはしない。
3番夜の歌は、ジャラール・ウッディーン・ルーミー(1207/9/30~1273/12/17、ルーム・セルジューク朝ペルシャの詩人、イスラム神学者)の詩である「夜の歌」のテキストに基づく歌詞が付けられている。この詩は”夜の神”の神秘性を様々な手法で解き明かしたという超自然的な内容となっており、なかなかに難解なテキストだ。これらはテノール独唱と混声4部合唱により歌われる。和声は非常に夢心地であり、旋律の不安定さ、不安さ、そして儚い夢のようなリズムの繰り返しはちょっと癖になりそうな、まさに神秘的な音楽なのだ。和声と旋律進行はフランス印象楽派、特にドビュッシー的なエレメントが端々に感じられる。この盤では5管構成くらいであろうか、大規模なオーケストレーションにさざめく合唱と独唱はラヴェルのダフクロに通じる幽玄な世界を描き出していて効果絶大だ。
ブーレーズは、自身も現代作品の作曲家でもあることからこの手の作品への造詣は深く、また、引き締まっていて微塵の弛緩もないタイトな解釈とバトン捌きが光る優秀演奏だ。
(録音評)
DG、4778771、通常CD。ブーレーズが三ヶ国語で答えているインタビューシーンを収めたボーナスCDが付属する。録音は2009年6月13-15日(Op.35)、2010年3月19-21日(Op.27)、場所はVPOの本拠、ウィーン・ムジークフェラインザール。収録/編集はオーストリア放送協会(Österreichischer Rundfunk=ORF)が担当しており、DGのいつものサウンド(エミール・ベルリーナ・スタジオ製)とは趣が異なる。華美な装飾、調音は施されておらず、また、音場空間の再構築に不自然さはない。しかし、サウンドステージの奥行きは思ったほど深くはなく、左右へのスプレッドもそれほど大きくない傾向。どちらかというと薄っぺらい描写と言える。だが、古い建物であるムジークフェラインのステージは元々が狭く、サウンドステージも広大に拡がる場所ではないので、この録り方が実は正解なのかも知れない。音色自体はクリアで美しいが、VPOの特徴であるベルベットのような肌触り、金箔を貼ったかのようなブリリアンスは感じられない。
