2011年 04月 05日
Mahler: Des Knaben Wunderhorn & Sym#10(Adagio)@Boulez/Cleveland O. |
久しぶりの音楽日記となる。もうかなり古いユーロ輸入盤で、半年以上前のリリース、既に高齢に達していて今後の音楽活動は殆ど期待できないブーレーズ翁の新譜を取り上げる。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/3871350
Mahler:
Des Knaben Wunderhorn (12 songs, complete) (*)
Symphony No. 10 in F sharp major - Adagio
(*)Magdalena Kožená (mezzo-soprano) & Christian Gerhaher (baritone)
Cleveland Orchestra, Pierre Boulez
・マーラー:歌曲集『子供の不思議な角笛』全曲
番兵の夜の歌/無駄な骨折り/不幸なときの慰め/
この歌を作ったのは誰だろう?/この世の生活/死んだ鼓手/
魚に説教するパドヴァの聖アントニウス/ラインの伝説/塔の中の囚人の歌/
美しいトランペットが鳴り響くところ/高い知性への賛美/少年鼓手
・マーラー:交響曲第10番~第1楽章アダージョ
マグダレーナ・コジェナー(Ms)
クリスティアン・ゲルハーヘル(Bar)
クリーヴランド管弦楽団/ピエール・ブーレーズ(指揮)
マーラーが生涯拘った旋律である、いわゆる「角笛」シリーズの原曲版12曲のみを飾らず収めた前半と、遺作となってしまった未完の10番のアダージオのカップリング。詩集の方の「不思議な角笛」をモチーフに書かれた「若き日の歌(Lieder und Gesänge aus der Jugendzeit)」が一般的な録音演目なのだろうが、このアルバムは原点版の角笛をそのまま素朴に連ねているのがブーレーズらしい選択。この二つを並べたこのアルバムだが、ブーレーズのマーラー・チクルスを締めくくるに相応しい鄙びたプログラムといえよう。
あにはからんや、演奏は濃厚で重層感溢れるゴージャスなもので、老師のキャリアの深さとオケ/ソリストたちからの信任の厚さを慮るに十分な出来映えだ。こうして敬愛され惜しまれつつ迎える音楽家としての幕引きはしみじみ良いものだと思う(勿論、もうちょっとは録音するかも知れないけれど・・)。
色気のある渋いコジェナーと、はかとない陰をちらちらと見せるゲルハーヘルの独唱はプロフェッショナルの仕業と言わざるを得ないほど技巧的だ。しかし、それだけではない、心通った訥々としたリートが得も言われない情感をそそるし、その歌い方は本当に感動的だ。また、クリーヴランドの面々、特に弦楽4部が奏でるバックの寂しげな調べが印象的な名演なのだ。
Sym#10のアダージオは様々な演奏/録音がある中で、これはブーレーズの演奏だとすぐに分かる明晰な解釈である。メランコリーが主体的に支配する謎の多い旋律と和声だが、今となっては全体像を知り得ない事が更なる謎を呼んで興味深いパートなのである。クリーヴランドのストリング隊の実力は素晴らしく、手許にある#10アダージオの中でも出色の部類に入ることは間違いない。
ブーレーズの手になるマーラー作品は完結し、その殆どで出色のパフォーマンスを見せつけてきたわけであるが、このアルバムも素晴らしい出来映えであってなかなかこういった音楽の粋を聴かせる録音は今後ともあまり出て来ないと思われる。それだけに、聴く側も慈しみながらゆっくりと、そして深長に鑑賞したいもの。
(録音評)
DG 477 9060、通常CD。録音は2010年2月12~13日、場所は彼らの本拠、セヴェランスホールである。トーンマイスターはTeldex StudioのTobias Lehmannとクレジットされている。音質は中庸を行くDGサウンド。前半の角笛は空間感漂う中でゲルハーヘル/コジェナーがぽっかりと空いたステージ前方で気持ちよく歌い、そしてオケは終始抑え気味に寄り添うような歌わせ方をしていて秀逸だ。この連作の見通し感は終始良好。そしてSym#10だが、こちらはちょっと残念な出来で、ちょっと混濁が認められて少しサチっている感じが否めない。ブーレーズの最終期を飾る録音だけにもうちょっとなんとかしてあげれば良かったのに・・。と思う。
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http://www.hmv.co.jp/product/detail/3871350
Mahler:
Des Knaben Wunderhorn (12 songs, complete) (*)
Symphony No. 10 in F sharp major - Adagio
(*)Magdalena Kožená (mezzo-soprano) & Christian Gerhaher (baritone)
Cleveland Orchestra, Pierre Boulez
・マーラー:歌曲集『子供の不思議な角笛』全曲
番兵の夜の歌/無駄な骨折り/不幸なときの慰め/
この歌を作ったのは誰だろう?/この世の生活/死んだ鼓手/
魚に説教するパドヴァの聖アントニウス/ラインの伝説/塔の中の囚人の歌/
美しいトランペットが鳴り響くところ/高い知性への賛美/少年鼓手
・マーラー:交響曲第10番~第1楽章アダージョ
マグダレーナ・コジェナー(Ms)
クリスティアン・ゲルハーヘル(Bar)
クリーヴランド管弦楽団/ピエール・ブーレーズ(指揮)
マーラーが生涯拘った旋律である、いわゆる「角笛」シリーズの原曲版12曲のみを飾らず収めた前半と、遺作となってしまった未完の10番のアダージオのカップリング。詩集の方の「不思議な角笛」をモチーフに書かれた「若き日の歌(Lieder und Gesänge aus der Jugendzeit)」が一般的な録音演目なのだろうが、このアルバムは原点版の角笛をそのまま素朴に連ねているのがブーレーズらしい選択。この二つを並べたこのアルバムだが、ブーレーズのマーラー・チクルスを締めくくるに相応しい鄙びたプログラムといえよう。
あにはからんや、演奏は濃厚で重層感溢れるゴージャスなもので、老師のキャリアの深さとオケ/ソリストたちからの信任の厚さを慮るに十分な出来映えだ。こうして敬愛され惜しまれつつ迎える音楽家としての幕引きはしみじみ良いものだと思う(勿論、もうちょっとは録音するかも知れないけれど・・)。
色気のある渋いコジェナーと、はかとない陰をちらちらと見せるゲルハーヘルの独唱はプロフェッショナルの仕業と言わざるを得ないほど技巧的だ。しかし、それだけではない、心通った訥々としたリートが得も言われない情感をそそるし、その歌い方は本当に感動的だ。また、クリーヴランドの面々、特に弦楽4部が奏でるバックの寂しげな調べが印象的な名演なのだ。
Sym#10のアダージオは様々な演奏/録音がある中で、これはブーレーズの演奏だとすぐに分かる明晰な解釈である。メランコリーが主体的に支配する謎の多い旋律と和声だが、今となっては全体像を知り得ない事が更なる謎を呼んで興味深いパートなのである。クリーヴランドのストリング隊の実力は素晴らしく、手許にある#10アダージオの中でも出色の部類に入ることは間違いない。
ブーレーズの手になるマーラー作品は完結し、その殆どで出色のパフォーマンスを見せつけてきたわけであるが、このアルバムも素晴らしい出来映えであってなかなかこういった音楽の粋を聴かせる録音は今後ともあまり出て来ないと思われる。それだけに、聴く側も慈しみながらゆっくりと、そして深長に鑑賞したいもの。
(録音評)
DG 477 9060、通常CD。録音は2010年2月12~13日、場所は彼らの本拠、セヴェランスホールである。トーンマイスターはTeldex StudioのTobias Lehmannとクレジットされている。音質は中庸を行くDGサウンド。前半の角笛は空間感漂う中でゲルハーヘル/コジェナーがぽっかりと空いたステージ前方で気持ちよく歌い、そしてオケは終始抑え気味に寄り添うような歌わせ方をしていて秀逸だ。この連作の見通し感は終始良好。そしてSym#10だが、こちらはちょっと残念な出来で、ちょっと混濁が認められて少しサチっている感じが否めない。ブーレーズの最終期を飾る録音だけにもうちょっとなんとかしてあげれば良かったのに・・。と思う。
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by primex64
| 2011-04-05 00:23
| Orchestral
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