Buxtehude: Membra Jesu nostri@Veldhoven/Netherlands Bach Society |
グラミー賞が発表され、いよいよMusicArenaも昨年分の総括をしなければならない時期となっている。しかしまだまだバックログが残っていてそう容易くは行かないようだ。因みにグラミーには内田光子がソリストとして入り、まぁ、この作品ならばなるほど、という結果だったのではあるが、同じ日本人としては嬉しい限りだ。上原ひろみに関してもまた喜ばしいことなのだが、如何せんCDは買ったことがないのでこれを機に数枚買ってみようかとも思っている。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3891963
Buxtehude:
Membra Jesu nostri, BuxWV75
Fried- und Freudenreiche Hinfahrth, BuxWV 76
Anne Grimm (soprano 1), Johannette Zomer (soprano 2),
Peter de Groot (alto), Andrew Tortise (tenor) & Bas Ramselaar (bass)
The Netherlands Bach Society
Jos van Veldhoven(Cond)
ブクステフーデ:
・7つの連作カンタータ『われらがイエスの四肢』BuxWV.75
・カンタータ『安らぎと喜びもてわれは逝く』BuxWV.76
アンネ・グリム(ソプラノ)
ヨハネッテ・ゾマー(ソプラノ)
ペーター・デ・フロート(アルト)
バス・ラムセラール(バス)
アンドルー・トータス(テノール)
オランダ・バッハ協会 ヨス・ファン・フェルトホーフェン(指揮)
さて、この盤は昨年の秋にリリースされたチャンネル・クラシックス創立20周年を祝う記念盤20枚のうちの1枚で、演奏/音質共にこのレーベル自薦の力作だといい、当然にSACDハイブリッドだ。この盤は日本国内向けとして東京エムプラスから発売になったもので、CHANNEL2011と番号が付されているが、実際に開梱して確認したところ、CCSSA24006というChannel Classicsのオリジナル番号が振られていた。つまり、これは2006年3月にリリースされた初版の盤そのものということ。つまり今回手にしたのはオランダ直輸入盤ということになり、それ以外にEU盤、そして日本盤が存在するということなのか・・。
前置きが長くなった。さて、その自薦の優秀盤とはどの程度の出来映えなのか興味をもって針を降ろした。そしてあっさりと脱帽し、素直に呆気にとられ、微に入り細を穿って聴き込もうなどという下世話な下心は簡単に破砕された。
Membra Jesu nostri=われらがイエスの四肢 は、十字架上で受難したキリストの身体の7つの部位に悲しい思いを巡らせて書かれた連作カンタータである。その7つとは、Ad pedes(足)、Ad genua(膝)、Ad manus(手)、Ad latus(脇腹)、Ad pectus(胸)、Ad cor(心)、Ad faciem(顔)ということ。曲としての構造はバロックアンサンブル(&コンソレット・オルガン)+五部独唱という形態をとるごくシンプルなものだが、メロディー・ラインの素直さ、和声の純粋さ、そしてなにより当時のドイツでは珍しかったであろうラテン語テキストの明解さが特徴となる大曲であり、力作だ。あまり詳細な解説を労しても詮ないので更に詳しくはWeb検索等で見て欲しい。
この長大な曲はどの楽章も趣が深く、荘厳であり、悲しくもあり、そして前を向き直そうという精神的リカバリーへの意思も強く感じられる理想的なキリスト教音楽だが、白眉は第2曲、第5曲だ。どちらも極めて美しくて儚げな旋律が、バロック初期の簡素な対位法を用いて切々と謳い上げられる。背景を支える和声の多様性も特筆すべき美しさで、ある意味、超始祖的なバッハを想像すれば遠くはないだろう。
ソリスト達の内省的で求道的な歌い方、そしてオランダ・バッハ協会の奏でる妙なる調べ、小型オルガンの控えめでそこはかとないテオルボに似た哀愁漂う下支え・・。非常に満足できる作品と演奏だ。優秀レーベルであるチャンネル・クラシックスが創立20周年にあたって自らが20枚を選んだ中の1枚として、さすがに納得できる出来映えだった。
(録音評)
Channel Classics、CCSSA24006、SACDハイブリッド。音質はびっくりするくらいの超優秀録音で、度肝を抜かれる超ハイファイ感だ。CDレイヤーに比してSACDレイヤーの空気感は際立っていて、まさにサウンドステージを丸々切り取ってスピーカーからそのままのフレッシュ状態で放散しているという表現が妥当であろうか。但し、装置およびそのコンディションを選ぶ盤であると思われる。そこかしこに奏者/楽器の発する間接ノイズが含まれていて、これがヒステリックに響くととてもざわついた雰囲気となることであろう。自信のある人はチャレンジしてみる価値はある。ダメでも落胆しないように・・。
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