J.S.Bach: Sonatas & Partitas BWV1001-1006@Sergey Khachatryan |
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Bach, J S: Sonatas & Partitas for solo violin, BWV1001-1006
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
CD1
・ソナタ第1番ト短調 BWV 1001
・パルティータ第1番ロ短調 BWV 1002
・ソナタ第2番イ短調 BWV 1003
CD2
・パルティータ第2番ニ短調 BWV 1004
・ソナタ第3番ハ短調 BWV 1005
・ソナタ第3番ホ長調 BWV 1006
セルゲイ・ハチャトリャン(ヴァイオリン)
セルゲイ・ハチャトリアンは今やナイーヴの看板若手ソリストの一人となっている。以前の録音だとフランクのVnソナタが出色であった。これは姉ルシーネの好サポートも奏功し、MusicArena Awards のSpecial Encouraging Prize 2008を獲得した。その演奏は瑞々しく感性に富んだもので、実にアーティスティックな内容であった。
ハチャトリアンは現在25歳で、アルメニア出身の若きVnソリストだ。彼は2000年の第8回ジーン・シベリウス国際ヴァイオリン・コンクールで優勝している(5年ごとの開催と言うことで今年の12月に開催される予定)。そしてここへ来ていきなりの大作、バッハの無伴奏を録音した。
奇を衒う様な斬新さも、そしてテクニックをひけらかす様なアクロバティック要素も皆無であり、非常に生真面目かつ正攻法で取り組まれたソナタ&パルティータである。
1番のソナタ、そしてパルティータはどっしりと落ち着いた、そして深々とした旋律運びが印象的な好演で、25歳の若者の解釈とは思われない枯れた境地が聴き取れる。白眉は2番パルティータで、喜怒哀楽の襞の深さ、そして静謐極まりない弓運びと精妙な弦捌きによりもたらされる無伴奏での対位法表現の完成度は特筆に値する。連続するスムーズなダブルストップにより紡ぎ出される二つの旋律はあたかも2挺の楽器がアンサンブルするが如きの調和を見せ、そして無音の空白を自在に操って有音部のコントラストを増強させるバーチャルなシンコペーションは一定水準をクリアしたVnソリストのみが成し得る技巧だ。このハチャトリアンの演奏は、バッハ無伴奏パルティータの中では出色の出来映えであり、これを凌駕する演奏はそうそう現れないことであろう。
但し、この演奏とは決して比べてはならない。もしこれを行うなら、比較対象がこの盤のような素晴らしい名演奏であったとしてもなお、たちまちに色褪せてしまうのだ。
(録音評)
naive V5181、通常CD 2枚組。録音は2008年12月、2009年2月、場所は L'heure bleue, Salle ede musique, La Chaux-de-Fonds(スイス)。マイク:Meumann TLM50S、DPA 4003,4053、プリアンプ:Millennia HV-3D、コンバータ:DAD AX-24、レコーダー:Pyramixとある。サンプリングは現在流行の88.2kHz/24bitであり、深く稠密で腰の据わった楽器の音を再現している。ちょっと前まで主流だった192kHzや384kHzサンプリングでは、この様な独奏曲の場合にはその軽さが弱点となるケースが多く、これくらいのサンプリング・レートでベストと思われる。また、CDDAの44.1kHzの整数倍である88.2kHzは96kHzとクォリティ的には大差がない様に思われるのであるが、実は聴感上の歪感が減少して心地の良い透明な空間表現となるのである。
音質はこのレーベル伝統の骨格がしっかりとしたベースに香しいアンビエントが少々載るという典型的naiveサウンドである。素晴らしい出来映えだ。
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