Mahler: Sym#4@Gergiev/LSO, Laura Claycomb |
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↓ 国内盤(キング)
・マーラー: 交響曲第4番ト長調
ラウラ・クレイコム(ソプラノ)
ロンドン交響楽団
ワレリー・ゲルギエフ(指揮)
数年前にセンセーショナルに始まったこのチクルスは、ちょっと休んでいたがここに来て再開されたようで、続くならばいよいよ後半戦ということとなる。マーラーのチクルスはどの指揮者/楽団にとっても労力を要する録音セッションとなり、なかなかの長丁場。そのぶん誰しもが史上に名を残したいと思うのは常であり、しかしそうそう名演は生まれないのである。
さて、これは、どう言った趣向なのであろうが・・。鈴のシャンシャンシャン・・で始まる一楽章、そしてこれがずっとモチーフとなって最終楽章まで断片的に引っ張られる伏線テーマなのであるが、これが何度聴いて耳には馴染まないダルな遅さ、そして間抜けなテンポ取りなのだ。実際のテンポは遅くても間抜けな感じはしないシノーポリの様な解釈も十分にあり得るのだが、これはマッチョで颯爽としたゲルの芸風からはおよそ想像もつかない離散的な刻み方だ。
どの楽章も入りは遅いが、例によって中半から後半に畳み掛けるようなアチェレランドで加速してくるのはいつものやり方だ。特にこのマラ4はそういった傾向が強く、トゥッティ~コーダにかけての疾駆感は急峻でありちょっと荒っぽい鳴らし方になっているのは従前通り。
2楽章は珍しく落ち着き払った冷静沈着な着想を基にリードしており、意外なことに個人的にはもっとも好印象を抱いたパートだ。3楽章は単調でそれほどの盛り上がりがないと思いきや後半の転調部からのアチェレランドとクレッシェンド・デクレッシェンドの出し入れの目まぐるしさは殆ど壊滅的なテンポとなり、しかし、全体としてみれば演奏時間は長い方だ。4楽章は例によってシャンシャン鈴のリフレインがあのテンポで再登場すると完全にしらけてしまい残りを聴く意欲すら削がれてしまうほどの違和感を感じる。繋がりという部分、及び起承転結の「転」に込められたマーラーの思うギアチェンジが巧く為されていないのはどうしたことか・・。こういった解釈もありなのだろうとは自身には言い聞かせるがどうも納得感は低い。
(録音評)
LSO Liveレーベル、LSO0662、SACDハイブリッド。録音は2008年1月12日、お馴染みのバービカンホール、担当もお馴染みジェイムズ・マリンソンとニール・ハッチンソン&ジョナサン・ストークスのコンビ。音質は極めて優秀で、しかも以前のチクルスよりも更に透明度と音場の深さを増してきている。
しかし、LSOのブラスセクションの混濁度合いとクリップした僅かなノイズを殊更抉り出す結果となっているのは技術的向上と裏腹にある皮肉的な結末と言わざるを得ない。あまりディテールの解像度を上げない方がこの楽団の良さをフンワリと出せて良いような気がする。そういった点を除けばほぼ完璧なSACDであり、一方のCDレイヤーの透明度、仕上がりも一級レベルである。
これまた問題作の一枚と言えようか・・?
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